ハードバピッシュ&アレグロな日々

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スタン・リーヴィ/ジス・タイム・ザ・ドラムズ・オン・ミー

2024-07-22 18:52:01 | ジャズ(ウェストコースト)

本日はウェストコースト3大ドラマーの1人、スタン・リーヴィを取り上げたいと思います。スタンについては先月にも「グランド・スタン」をご紹介しましたが、本日UPする「ジス・タイム・ザ・ドラムズ・オン・ミー」は同じベツレヘム・レコードに1955年9月に吹き込まれた作品です。この作品、CDでは「今こそドラムを叩く時」と言う邦題がついていますが、ちょっと直訳過ぎますよね。勘の良い方ならおわかりと思いますが、ハロルド・アーレンの有名スタンダード"This Time The Dream's On Me"にひっかけているのは明らかです。

この作品、メンバーに注目です。トランペットのコンテ・カンドリ、トロンボーンのフランク・ロソリーノの2人はスタン・ケントン楽団時代からの盟友で、「グランド・スタン」にも参加しているので順当なチョイスですが、テナーがデクスター・ゴードンというのが面白い。ジャズファンならご存じとは思いますが、50年代のゴードンは重度の麻薬中毒のため、ほとんどを塀の中で過ごします。1955年に一時的に出所し、ベツレヘム盤「ダディ・プレイズ・ザ・ホーン」、ドゥートーン盤「デクスター・ブロウズ・ホット・アンド・クール」、そして本作の3枚を録音するのですが、結局クスリを断ち切れず今度は1960年まで活動を停止します。本作にゴードンが参加した経緯はよくわかりませんが、久々にシャバに出てきた名テナーにスタンが声をかけたのでしょうか?なお、リズムセクションにはルー・レヴィ(ピアノ)、リロイ・ヴィネガー(ベース)が名を連ねています。

アルバムはジョージ・ハンディ作のバップ曲"Diggin' For Diz"で幕を開けます。チャーリー・パーカーの伝説のダイヤル・セッションの収録曲ですが、実はこのセッションでドラムを叩いていたのはスタンなんですよね。約10年ぶりの再演というわけです。演奏の方はコンテ・カンドリ→ゴードン→フランク・ロソリーノが各々実力十分のソロを披露します。続く”Ruby My Dear"はセロニアス・モンク作の名バラードで、コンテ・カンドリのトランペットが全面的にフィーチャーされます。3曲目”Tune Up"はご存じマイルス・デイヴィスの名曲。前半3曲の選曲を見ると当時の西海岸のジャズメン達が東海岸のバップシーンを熱心に追っていたことがよくわかります。4曲目"La Chaloupée"はオッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」の旋律をボブ・クーパーがアレンジしたものらしいです。この曲はいかにもウェストコーストジャズって感じの明るい曲です。

続いて後半(レコードだとB面)ですが、5曲目"Day In, Day Out"はビリー・ホリデイも「アラバマに星落ちて」で歌っていたスタンダード曲。ウェストコーストらしい軽妙なアレンジに乗ってメンバー全員が軽快にソロをリレーします。6曲目”Stanley The Steamer"はゴードンのオリジナル。曲名はリーダーのスタンに捧げられたものですが、ソロ自体は全編にわたってゴードンが担っており、彼のショウケースとでも言うべきナンバーです。ラストの"This Time The Drum's On Me"はオスカー・ペティフォードの"Max Is Making Wax"の焼き直しだそうです。各メンバーのソロの後、リーダーのスタンが”今こそドラムを叩く時!”とばかりに怒涛のドラムソロを聴かせます。

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