本日はボビー・ジャスパーのリヴァーサイド盤をご紹介します。ジャスパーについては以前にフランス・コロンビア盤を取り上げましたが、ベルギー出身のマルチリード奏者で1950年代後半にアメリカに渡ってハードバップシーンで活躍しました。本業はテナーだと思われますが、フルートもよく吹いていてそちらのイメージも強いですね。特に日本ではウィントン・ケリーの名盤「ケリー・ブルー」でフルートを吹いているせいか、フルート奏者の認識の方が強いかもしれません。
今日ご紹介するリヴァーサイド盤は1957年5月に吹き込まれた彼のアメリカ時代の代表作です。ジャケットがとんでもなくダサい(サヴォイにはこういうジャケットが多いですが、リヴァーサイドでは珍しい)ので不安になりますが、内容はとても充実しています。メンバーで注目はジョージ・ウォーリントンですね。本ブログでも過去に何度も取り上げていますが、白人ながらバップシーンで大活躍したピアニストで、本作でも準リーダー的な位置付けです。他ではビバップ期から活躍するトランペットのイドリース・スリーマンが7曲中3曲で参加しています。リズムセクションはウィルバー・リトル(ベース)とエルヴィン・ジョーンズ(ドラム)で、当時ジャスパーとともにJ・J・ジョンソンのクインテットに在籍していました。彼らが参加したJ・Jの名盤「ダイアル・J・J・5」は同じ月の録音です。
曲は全7曲、スタンダードが2曲、メンバーのオリジナルが5曲と言う構成です。1曲目”Seven Up"はジャスパーのオリジナル。典型的なパップチューンでややモンクっぽい出だしのイントロから、スリーマン→ジャスパーのテナー→ウォーリントン→リトルとソロをリレーします。ジャスパーの意外とソウルフルなテナーソロに認識を改める人も多いのでは?2曲目はスタンダードの”My Old Flame"で、こちらは一転してフルートによる美しいバラード演奏です。3曲目”All Of You"はご存じコール・ポーターの名曲。マイルス・デイヴィス「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」のバージョンが有名ですが、本作も負けず劣らず素晴らしい。イントロからジャスパーのテナーが絶好調で、後半にはエルヴィンのドラムとのスリリングな掛け合いも聴けます。
4曲目”Doublemint"はスリーマンのオリジナルで痛快なハードバップ。5曲目”Before Dawn"はウォーリントン作のバラードで、同年のウォーリントンのサヴォイ盤「ジャズ・アット・ホッチキス」にも収録されました。マイナーキーの曲でジャスパーの哀愁漂うテナーとスリーマンのトランペットが印象的です。続く"Sweet Blanche"もウォーリントンのオリジナルで、伝説の名盤「ライヴ・アット・カフェ・ボヘミア」で演奏されていた曲。ここではジャスパーが再びフルートを手にし、軽やかにソロを紡いで行きます。ラストの”The Fuzz"はジャスパー作。オリジナルLPには入っていないボーナストラックで、シンプルなバップナンバーです。以上、2曲あるフルート演奏ももちろん良いですが、全体としては、テナー奏者ボビー・ジャスパーの魅力にスポットライトを当てた1枚だと思います。