本日は少し趣向を変えて英国ジャズを取り上げます。英国で"モリッシー"と来れば、80年代のカリスマ的ロックバンド、ザ・スミスのヴォーカルを真っ先に思い出しますが、今日ご紹介するディック・モリッシーは主に60年代に活躍したジャズテナー奏者です。と言っても私もこのアルバムぐらいしか持ってないので詳しいことは知りません。調べたところ、1940年生まれでデビュー作である本作の発表時点(1961年4月)でまだ20歳。60年代に数枚のアルバムを残した後、ロック畑に転身し、イフ(If)と言うバンドで活躍したとあります。ただ、私は洋楽にもかなり詳しい方ですが、イフと言うバンドのことは残念ながら聞いたことがないですね・・・
さて、本作「イッツ・モリッシー、マン!」はブリティッシュ・ジャズの名盤としてマニアの間ではそれなりに人気ですが、理由の一つはこのジャケットでしょうね。なぜか線路の上を闊歩するモリッシーとバンドメンバー達。ユニークなジャケットですがなかなかのインパクトです。先頭はもちろんモリッシーで、2番目がピアノのスタン・ジョーンズ、続いてドラムを右手に持ったコリン・バーンズ、そして重そうにベースを持つマルコム・セシルの順でしょう。
全12曲収録されていますが、3分前後の短い演奏が多いのでそこまでボリュームがあるわけではありません。おススメは何と言ってもオープニングトラックの”St. Thomas"でしょう。ご存じソニー・ロリンズ「サキソフォン・コロッサス」の名曲をモリッシーがエネルギッシュに吹き切ります。この曲は多くのジャズマンが取り上げていますが、その中でもかなり上位に位置するクオリティではないでしょうか?思わずやるじゃん!と拍手したくなりますね。2曲目はビル・ルサージュと言うよく知らない人(英国人ジャズピアニストらしい)が書いた”Cherry Blue"でこれもなかなか味わい深いハードバップです。3曲目から5曲目まではどれも急速調のバップナンバーが続き、モリッシーが相変わらず勢いのあるテナーソロを聴かせますが、やや一本調子なのは否めないかな?ただ、ジョニー・グリフィンのデビュー盤に収録されていた”Mildew”に果敢に挑戦するあたり、モリッシーの自信のほどが伺えます。6曲目と7曲目はピアノのスタン・ジョーンズの曲で中では"Puffing Billy"が魅力的なミディアムチューンです。
9曲目で初めてバラードが登場しますが、”Where Is Love?”と言う曲でロンドン発のミュージカル「オリヴァー!」の曲らしいです。モリッシーのバラード演奏は悪くはないですが、名手と呼ばれるテナーマン達に比べると少し深みがないかなと言う気もします。10曲目は歌モノスタンダード”Dancing In The Dark"でこちらもまあまあ。11曲目も歌モノで”Willow Weep For Me"ですが、ここではモリッシーが休みでスタン・ジョーンズによるピアノトリオ演奏です。ラストの”Jelly Roll"はチャールズ・ミンガス「ミンガス・アー・アム」の収録曲を軽快に演奏して終わり。以上、やや勢い任せのところもあり、全体的なクオリティはまずまずと言ったところですが、"St. Thomas"だけでも一聴の価値があると思います。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます