モダンジャズを代表するレーベルであるプレスティッジですが、その最大のスターと言えば誰でしょうか?同レーベルにはマイルス、ロリンズ、コルトレーンらのビッグネームが名盤を残していますが、彼らは専属ではなく他のレーベルの印象も強いですね。プレスティッジ限定と言うことで言えば、やはりピアノのレッド・ガーランドとテナーのジーン・アモンズではないでしょうか?特にアモンズは同レーベルに40枚を超すリーダー作を残しており、ミュージシャン仲間から"ザ・ボス"の愛称で親しまれたまさにプレスティッジの”顔”です。
ただし、その割に日本のジャズファンの認知度は低めなのが残念なところです。国内盤のCDもごく一部しかリリースされていませんし、評論家達のジャズ名盤特集に名前が上がることも少ないです。どうやらアモンズのようにブリブリ吹くスタイルは芸術性が低い、として昔から忌避される傾向があるようです。プレスティッジには他にもエディ・ロックジョー・デイヴィスやウィリス・ジャクソンと言ったR&B色の強いテナー吹きがいますが、同様に日本のジャズ界ではほぼ完全無視状態です。私も正直上記のロックジョーやウィリス・ジャクソンあたりはド派手なブロウが野暮ったく感じるところはありますが、アモンズに関してはそこまでヘビーでもないですし、わりと正統派の範疇に入ると思うんですけどね。特にバラードの上手さは絶品です。残念ながらCDは一部を除いてほぼ入手できないのですが、ネットでお気に入りの曲をダウンロードして愛聴しています。
本作「ジャミン・ウィズ・ジーン」は1956年7月13日に録音された作品です。アモンズはこの頃若手のハードバッパー達を集めたジャムセッション形式の作品を大量に残しており、本作もそのうちの1枚です。他にも「ハッピー・ブルース」「ジャミン・イン・ハイファイ」「ファンキー」「ブルー・ジーン」「ザ・ビッグ・サウンド」と言った作品を残していますが、どれも大体同じような感じで、収録曲は3~4曲、長さは1曲10分前後で参加ミュージシャン達が順番にソロを回す、と言う感じです。内容は後になればなるほどマンネリ気味になってきて、クオリティ的に正直どうかな?と思うものもありますが、本作は一連のジャムセッションの中でも出来の良い方だと思います。
メンバーはドナルド・バード&アート・ファーマー(トランペット)、ジャッキー・マクリーン(アルト)、マル・ウォルドロン(ピアノ)、ダグ・ワトキンス(ベース)、アート・テイラー(ドラム)と言った顔ぶれ。全員が後にジャズ・ジャイアントと呼ばれる大物ばかりですが、この時点では30歳のマル・ウォルドロンが最年長で後は全員20代。そんなイキのいい若手達をボスのアモンズ(と言っても彼もまだ31歳でしたが)がまとめるという構成です。
収録曲は3曲のみですが、どれも10分超の長尺なので全部で40分超のボリュームです。オープニングはアモンズ作の"Jammin' With Gene"。いかにもアモンズらしいどっしりとしたブルースで、冒頭からアモンズ御大が4分間にわたって貫録たっぷりのソロを取り、その後トランペットが登場しますが先発はドナルド・バード、次がアート・ファーマーの順でしょう。その後マクリーン→マル・ウォルドロンとソロを取ってテーマに戻っておしまい。14分超の大曲ですが、その分各人のソロがたっぷり聴けてなかなか良いです。2曲目は唯一のスタンダード"We'll Be Together Again"。冒頭からアモンズがマルのピアノをバックに2分半にわたってテーマメロディを吹きますが、個人的には若干くどいかな。その後はテンポアップしてアモンズ→ファーマー→マクリーン→バード→マルとソロを取り、最後はアモンズが再びテーマを吹いて締めます。
3曲目の"Not Really The Blues"はアレンジャーのジョニー・マンデルがウディ・ハーマン楽団のために書いた曲。実はアモンズは40年代後半にハーマンに才能を見出され、スタン・ゲッツの後任として同楽団に所属していました。白人主体のハーマン楽団とアモンズの組み合わせは意外ですが、おそらくその時代からの愛奏曲なのでしょう。ホーンアンサンブルによるテーマ演奏の後、最初に飛び出すのはドナルド・バード。当時売り出し中だった彼がブリリアントなトランペットを響かせます。マクリーン→ファーマーも負けじとエネルギッシュなソロを取り、満を持してアモンズが登場。ボスらしい豪快なブロウを披露した後、マルのピアノソロ→トランペットのチェイス→アルトとテナーのチェイス→4管のチェイスと終盤に向けて怒涛の盛り上がりを見せます。ひたすら煽り続けるアート・テイラーのドラミングもグッジョブ!ですね。16分もある大曲ですが盛り沢山の内容で最後まで飽きさせません。以上、ハードバップスタイルのジャムセッションが好きな人にはたまらない1枚です。
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