だいぶ間が空きましたが、三重旅行記はまだ終わっていません! 細々と更新していきます。(前回の旅行記はこちら)
今回は三重のバスについて。
三重県内一円でバス事業を行うのが、「三重交通」(本社津市)。
愛知・和歌山・奈良各県の一部にも路線を持ち、名古屋市内にも営業所があり、名古屋市交通局のバス(名古屋市営バス)の一部を受託運行するなど広範囲。
かつては近畿日本鉄道(近鉄)、名古屋鉄道(名鉄)という大手私鉄両方の傘下にあったようだが、現在は近鉄系列。
【19日追記】かつては鉄道も運行していたが、現在は鉄道路線はない。
「三交(さんこう)」の略称で呼ばれ、静岡・愛知県内にも展開するビジネスホテル「三交イン」や旅行代理店・自動車学校・不動産業・ゴルフ場、さらに名古屋市内の東急ハンズの経営など、手広くやっている。
今回、暑くて歩きたくなかったこともあり、津市内と四日市市内で何度か“三交”のバスに乗ってみた。
津駅近く
津市内の路線バスは三重交通の一社独占のようだ。四日市市も三重交通が多かったが、一部「三岐鉄道」のバスも走っていた。なお、両都市とも、バスのほかに公共交通としては、近鉄の鉄道がある。
三重交通の路線バス(津駅前にて)
白に濃い緑のやや複雑なラインが入るデザイン。屋根上にもラインが入っている。
ちょっと古めかしい雰囲気がするが、それよりも白い部分が多くて汚れやすそう。
【2015年1月24日追記】1970年の映画「男はつらいよ フーテンの寅」(寅さんシリーズ通算3作目で、珍しく山田洋次監督でない)で、三重県四日市市近くの湯の山温泉が舞台となり、アクセス(近鉄湯の山温泉駅-温泉の路線と思われる)として三重交通の路線バス(女性車掌乗務)が登場する。その車は、これと同じ塗装だった。
地方都市で一般的な「中乗り・前降り」の「整理券方式・運賃後払い」。磁気式のバスカードがあるようだ。
こちらでも触れた通り、初乗りは200円と高めで、初乗り範囲が広い。市街地中心部が均一運賃ととらえてもいいかもしれないが、暑い日や雨の日、1キロ内外の近場の移動にちょっと乗りたいといった時、敷居が高い。100円とは言わなくとも、せめて170円くらいだと、また印象も変わりそうだが…
津や四日市では大型バスと一部中型バスが走っていたが、亀山駅には小型バス(シャープ亀山工場行きという表示だった)もいた。
車両のメーカーはいすゞ自動車製が圧倒的に多い感じ(他の3メーカーとも取引はあるとのこと)。
いすゞが多いのは、販売会社「三重いすゞ自動車」が三重交通グループであるためのようだ。そういえば、「いすゞ」は、三重県内の伊勢神宮を流れる「五十鈴川」が由来だ。
これは日野ブランド(近鉄四日市駅前にて)
上の写真の四日市のバスは日野ブランドだが、いすゞと日野の合弁会社が製造したという名目で、実際にはいすゞ製のバスに「HINO」と書いただけの「ブルーリボンⅡ」という車種。実質的にはいすゞの「エルガ」(ヘッドライトだけ違う)。
この車種を導入している会社にしてみれば、日野との付き合いも大事だが、運転や保守上、車種を統一したい意向があるだろう。
さて、上の2枚の津と四日市のバスの写真でいくつかネタを。
・新旧ロゴマーク
津のバスの方が古いが、正面に「SANCO」とロゴマークが付いている。
一方、四日市の新しいバスは「ミ」をモチーフにした社章。昔の車両はこのマークで、一時「SANCO」マークに変わったが、最近また復活しているらしい。
・LEDの違い
バスのLED式行き先表示器にはいくつかのメーカーがあり、書体や文字配置、見え方などが異なる。同じバス会社内では統一していることが多いが、三重交通は違うようだ。
津のバスは、経由地の文字が小さく、系統番号を囲む□の角が丸くなっている。
四日市のバスは、経由地の文字が大きく、系統番号は真四角。英字がない。
側面の表示器にある矢印も異なり、津のタイプはあまり見たことがないが、四日市のものは、西武バス・弘南バス・秋北バス・羽後交通なども採用している「レシップ」社製だと思われる。
三重交通では、どうも営業所毎に機器のメーカーを変えているようだ。車両を配置転換する際や、代走する際、面倒そうな気もするが、それだけ大規模な会社ということだろうか。
津の表示。かなり細かい
・笹川ジャブ
写真の四日市のバスの行き先は「笹川ジャブ」。
ボクシングなどの「ジャブ」を連想して、攻撃されそうな気がしてしまったが、四日市市内の「笹川」地区の近くにある、温泉施設「天然温泉ジャブ」のこと。
理由が分かれば納得だが、秋田市の「ザ・ブーン」(温泉・屋内プール)みたいなもんか…
ほかにもいろいろ。
●後ろの広告
津のバスの後部
現地では気付かなかったが、津市に本社のある井村屋の「あずきバー」のラッピング広告バスだった!
そして後部のLEDも文字が細かい。秋田のバスも見習ってほしい…(表示器のメーカーが異なるので難しいけど)
屋根の上に、2つの広告が設置されている。
津でも四日市でもほとんどのバスに付いていた。左右でスポンサーが異なるものと、同じものがあった。
これは左右まったく同じ(同じスポンサーでも左右で内容が異なるものもあった)
枠に広告板を差し込んで、交換できるようになっているようだ。
この屋根上広告を見て、かつての秋田市営バス(秋田市交通局)を思い出した。同じようなものがあったなー
秋田銘菓「金萬」の広告
秋田のものは横長の一枚物の金属板。板を直接、車体に溶接していたようで、差し込み式でなく、直接ペイントしたかシールを貼っていたのだろう。
出始めの頃「秋田朝日放送10月開局」という広告が出ていた記憶があるから、秋田市では1992年頃には始めていたはず。
その後、交通局の段階的縮小・民間移管に伴い、屋根上広告を設置した車両もそのまま民間会社に譲渡されたが、民間会社では使っていない。
車体と同じ色に塗りつぶしただけ(中央下にバックモニタのカメラが付いている)
撤去するのが難しいのだろうが、せっかく場所があるんだから、使えばいいのに。
●再会?
もう1つ、秋田市営バスを思い出せるものが三重交通のバスにあった。
それは車内放送の声。
バスの車内放送は、専門の制作会社があり、プロのナレーターがいる。だから、離れた土地のバス(や鉄道)でも、同じ声の放送を聞くことがある。
ただ、昔はテープにそのまま録音していたが、現在はフレーズ毎などに録音した音声をつなぎ合わせて放送する「音声合成」が使われている。秋田市営バスは最後までテープを使っていたので、その声はもう聞かれないと思っていた。
だが、秋田市営バスを担当していたナレーターのお1人が、三重交通の音声合成も担当(津・四日市とも)していた!
金融機関などの窓口の呼び出し装置(「○番のカードをお持ちのお客様、×番窓口までおいでください」)でも聞く声の方だが、久しぶりにバスの放送で活躍しているのを聞くことができ、懐かしかった。
●停車中に聞こえる…
三重交通のバスに乗っていると、どこからともなく(って天井のスピーカーからですが)音楽が聞こえてくることがあった。
歌詞はなく、聞いたことがあるような、ないようなメロディ。
何度か経験すると、「バスが停車していて、かつエンジンが停止している時」だけ音楽が鳴ることに気付いた。
つまり、アイドリングストップ中に音楽が鳴っているようだ。
アイドリングストップ機能と連動しているらしく、エンジンが止まると直ちに鳴り始め(車内放送が流れている場合は終わってから)、再始動すると直ちに鳴り止む。
調べてみると、浜松市の「遠鉄(遠州鉄道)バス」が始めた取り組みで、同社サイト(http://bus.entetsu.co.jp/work/environment/index.html)には、
「(運行中にエンジンが停止すると)お客様より「故障したのではないか!」という不安の声、「エンジン停止中の静寂に耐えられない」というご意見が多数寄せられました。また、乗務員からも旅客同士の会話がエンジン停止と同時に途切れ、車内の雰囲気がぎこちないと指摘を受けました。」
そこで、
「平成10年7月より、アイドリングストップ時に小鳥のさえずりを流し、現在は【音楽】を流しています。おかげさまで大変好評です。」
とのこと。12月にはクリスマスソングを流すようだ。
Wikipediaによれば、名古屋市交通局や静岡のしずてつジャストラインでも導入しているとのことなので、三重交通も追随しているのだろう。
いろいろ調べたところ、上記の車内放送制作会社が関わっていて、曲目は著作権フリーの音楽素材みたいなのを使っているようだ。
たしかに、僕も初めてアイドリングストップに遭遇した時は、その静けさに驚くとともに、何ともいえない気まずい雰囲気を感じたものだった。
だけど、停車中に音楽がかかるのにもびっくりしました…
お金をかけてそんなことをするより、ラジオ(例えばコミュニティFM)やクラシックのCDなんかを、走行中も適度な音量で流したりした方が、よさそうな気もするけど。
●暑い!
ところで、アイドリングストップ装置は、シフトレバーとクラッチペダルの操作に連動して作動(エンジン停止/再始動)する。
停車すれば必ずエンジンが止まるわけではなく、クラッチペダルを踏み続ければ、エンジンが回り続ける。
我が秋田のバス会社では、その辺の判断が運転士個々に任せられているらしく、(アイドリングストップ機能搭載車なのに)まったくエンジンが止まらないこともあれば、ちょっと前がつかえて数秒停止しただけなのにエンジンを止める人もいて、逆に排出ガスが増えたり、機器(バッテリーやセルモーター?)に負担がかからないか心配になるほど。
前者はメインスイッチをOFFにしているのかもしれないし、後者はクセでこまめにクラッチから足を離してしまうのだろう。
そして、暑さが苦手な秋田人にとっては、夏場はもっとつらい。アイドリングストップ中は冷房の動作に影響があるから。
秋田のバスでは経験上、エンジン停止直後はしばらく冷風が流れるが、一定時間(メーカーで異なるようだが30秒から1分ほど)が過ぎると止まってしまう。
環境やバス会社の燃料費節減のためとはいえ、長時間停車する始発バス停や長い信号待ちでは、暑くてかなわない。
一方、三重交通では、どの運転士もほぼ同じ基準でアイドリングストップを作動させているように感じた。つまり、長めの信号待ちなど一定の停車時間になりそうな場合だけエンジンを止めるようだ。赤信号がすぐ青になりそうな時は、エンジンをかけたままだった。
なお、前出の遠鉄バスでは、「1停車が20秒以上になると乗務員が判断した場合にこの機能を使用」としている。
ただ、三重交通のいすゞのバスでは、エンジン停止後、すぐに冷房が止まっていた気がした。だから、暑くてしょうがなかった。
秋田のいすゞのバスは、風が段階的に弱まって、1分近くは持つのだけど。何か仕様や設定が違うのか?【2014年2月27日追記】同じ車両メーカーでも、冷房機器のメーカーが違うことがあり、その差かもしれない。
音楽なんかより、冷房をかけてほしかったです…
●信号よし・横断歩道よし
最後に、三重交通のバスで好感が持てたこと。
まず、始発停留所から乗ったのは1回しかなかったが、発車する際、運転士が「ご乗車ありがとうございます。担当運転士は四日市営業所の○○です。安全運転に努めますので…」といった感じで、あいさつをした。
高速バスではよく行われるようだが、市街地の一般路線バスでは珍しいと思う。
また、交差点を通過する際には「信号よし」、さらに右左折で横断歩道を横切る際は「横断歩道よし」と、声に出して確認を行っているのが、マイクを通して聞こえていた。
定められたマニュアルに従っているだけ、といえばそれまでだが、僕としては信頼感を持って乗車することができた。
秋田のバスでは、こうしたマニュアルはないようだが、この程度のことなら、秋田のバス会社にもできるはずだし、乗客の印象もよくなるのだと思うのだが。
(もちろん、秋田のバスも、横断歩道通過時は大きく首を動かして左右を確認するなど、安全には充分配慮してはいる)
ネットで見てもあまり情報がなかったので、おそらく、三重の皆さんはそれが当たり前だと思っておられるのだろうが、僕としては、アイドリングストップ中の音楽と、「信号よし」「横断歩道よし」は、かなりのカルチャーショックだった。
旅行記続編はまた後日。
今回は三重のバスについて。
三重県内一円でバス事業を行うのが、「三重交通」(本社津市)。
愛知・和歌山・奈良各県の一部にも路線を持ち、名古屋市内にも営業所があり、名古屋市交通局のバス(名古屋市営バス)の一部を受託運行するなど広範囲。
かつては近畿日本鉄道(近鉄)、名古屋鉄道(名鉄)という大手私鉄両方の傘下にあったようだが、現在は近鉄系列。
【19日追記】かつては鉄道も運行していたが、現在は鉄道路線はない。
「三交(さんこう)」の略称で呼ばれ、静岡・愛知県内にも展開するビジネスホテル「三交イン」や旅行代理店・自動車学校・不動産業・ゴルフ場、さらに名古屋市内の東急ハンズの経営など、手広くやっている。
今回、暑くて歩きたくなかったこともあり、津市内と四日市市内で何度か“三交”のバスに乗ってみた。
津駅近く
津市内の路線バスは三重交通の一社独占のようだ。四日市市も三重交通が多かったが、一部「三岐鉄道」のバスも走っていた。なお、両都市とも、バスのほかに公共交通としては、近鉄の鉄道がある。
三重交通の路線バス(津駅前にて)
白に濃い緑のやや複雑なラインが入るデザイン。屋根上にもラインが入っている。
ちょっと古めかしい雰囲気がするが、それよりも白い部分が多くて汚れやすそう。
【2015年1月24日追記】1970年の映画「男はつらいよ フーテンの寅」(寅さんシリーズ通算3作目で、珍しく山田洋次監督でない)で、三重県四日市市近くの湯の山温泉が舞台となり、アクセス(近鉄湯の山温泉駅-温泉の路線と思われる)として三重交通の路線バス(女性車掌乗務)が登場する。その車は、これと同じ塗装だった。
地方都市で一般的な「中乗り・前降り」の「整理券方式・運賃後払い」。磁気式のバスカードがあるようだ。
こちらでも触れた通り、初乗りは200円と高めで、初乗り範囲が広い。市街地中心部が均一運賃ととらえてもいいかもしれないが、暑い日や雨の日、1キロ内外の近場の移動にちょっと乗りたいといった時、敷居が高い。100円とは言わなくとも、せめて170円くらいだと、また印象も変わりそうだが…
津や四日市では大型バスと一部中型バスが走っていたが、亀山駅には小型バス(シャープ亀山工場行きという表示だった)もいた。
車両のメーカーはいすゞ自動車製が圧倒的に多い感じ(他の3メーカーとも取引はあるとのこと)。
いすゞが多いのは、販売会社「三重いすゞ自動車」が三重交通グループであるためのようだ。そういえば、「いすゞ」は、三重県内の伊勢神宮を流れる「五十鈴川」が由来だ。
これは日野ブランド(近鉄四日市駅前にて)
上の写真の四日市のバスは日野ブランドだが、いすゞと日野の合弁会社が製造したという名目で、実際にはいすゞ製のバスに「HINO」と書いただけの「ブルーリボンⅡ」という車種。実質的にはいすゞの「エルガ」(ヘッドライトだけ違う)。
この車種を導入している会社にしてみれば、日野との付き合いも大事だが、運転や保守上、車種を統一したい意向があるだろう。
さて、上の2枚の津と四日市のバスの写真でいくつかネタを。
・新旧ロゴマーク
津のバスの方が古いが、正面に「SANCO」とロゴマークが付いている。
一方、四日市の新しいバスは「ミ」をモチーフにした社章。昔の車両はこのマークで、一時「SANCO」マークに変わったが、最近また復活しているらしい。
・LEDの違い
バスのLED式行き先表示器にはいくつかのメーカーがあり、書体や文字配置、見え方などが異なる。同じバス会社内では統一していることが多いが、三重交通は違うようだ。
津のバスは、経由地の文字が小さく、系統番号を囲む□の角が丸くなっている。
四日市のバスは、経由地の文字が大きく、系統番号は真四角。英字がない。
側面の表示器にある矢印も異なり、津のタイプはあまり見たことがないが、四日市のものは、西武バス・弘南バス・秋北バス・羽後交通なども採用している「レシップ」社製だと思われる。
三重交通では、どうも営業所毎に機器のメーカーを変えているようだ。車両を配置転換する際や、代走する際、面倒そうな気もするが、それだけ大規模な会社ということだろうか。
津の表示。かなり細かい
・笹川ジャブ
写真の四日市のバスの行き先は「笹川ジャブ」。
ボクシングなどの「ジャブ」を連想して、攻撃されそうな気がしてしまったが、四日市市内の「笹川」地区の近くにある、温泉施設「天然温泉ジャブ」のこと。
理由が分かれば納得だが、秋田市の「ザ・ブーン」(温泉・屋内プール)みたいなもんか…
ほかにもいろいろ。
●後ろの広告
津のバスの後部
現地では気付かなかったが、津市に本社のある井村屋の「あずきバー」のラッピング広告バスだった!
そして後部のLEDも文字が細かい。秋田のバスも見習ってほしい…(表示器のメーカーが異なるので難しいけど)
屋根の上に、2つの広告が設置されている。
津でも四日市でもほとんどのバスに付いていた。左右でスポンサーが異なるものと、同じものがあった。
これは左右まったく同じ(同じスポンサーでも左右で内容が異なるものもあった)
枠に広告板を差し込んで、交換できるようになっているようだ。
この屋根上広告を見て、かつての秋田市営バス(秋田市交通局)を思い出した。同じようなものがあったなー
秋田銘菓「金萬」の広告
秋田のものは横長の一枚物の金属板。板を直接、車体に溶接していたようで、差し込み式でなく、直接ペイントしたかシールを貼っていたのだろう。
出始めの頃「秋田朝日放送10月開局」という広告が出ていた記憶があるから、秋田市では1992年頃には始めていたはず。
その後、交通局の段階的縮小・民間移管に伴い、屋根上広告を設置した車両もそのまま民間会社に譲渡されたが、民間会社では使っていない。
車体と同じ色に塗りつぶしただけ(中央下にバックモニタのカメラが付いている)
撤去するのが難しいのだろうが、せっかく場所があるんだから、使えばいいのに。
●再会?
もう1つ、秋田市営バスを思い出せるものが三重交通のバスにあった。
それは車内放送の声。
バスの車内放送は、専門の制作会社があり、プロのナレーターがいる。だから、離れた土地のバス(や鉄道)でも、同じ声の放送を聞くことがある。
ただ、昔はテープにそのまま録音していたが、現在はフレーズ毎などに録音した音声をつなぎ合わせて放送する「音声合成」が使われている。秋田市営バスは最後までテープを使っていたので、その声はもう聞かれないと思っていた。
だが、秋田市営バスを担当していたナレーターのお1人が、三重交通の音声合成も担当(津・四日市とも)していた!
金融機関などの窓口の呼び出し装置(「○番のカードをお持ちのお客様、×番窓口までおいでください」)でも聞く声の方だが、久しぶりにバスの放送で活躍しているのを聞くことができ、懐かしかった。
●停車中に聞こえる…
三重交通のバスに乗っていると、どこからともなく(って天井のスピーカーからですが)音楽が聞こえてくることがあった。
歌詞はなく、聞いたことがあるような、ないようなメロディ。
何度か経験すると、「バスが停車していて、かつエンジンが停止している時」だけ音楽が鳴ることに気付いた。
つまり、アイドリングストップ中に音楽が鳴っているようだ。
アイドリングストップ機能と連動しているらしく、エンジンが止まると直ちに鳴り始め(車内放送が流れている場合は終わってから)、再始動すると直ちに鳴り止む。
調べてみると、浜松市の「遠鉄(遠州鉄道)バス」が始めた取り組みで、同社サイト(http://bus.entetsu.co.jp/work/environment/index.html)には、
「(運行中にエンジンが停止すると)お客様より「故障したのではないか!」という不安の声、「エンジン停止中の静寂に耐えられない」というご意見が多数寄せられました。また、乗務員からも旅客同士の会話がエンジン停止と同時に途切れ、車内の雰囲気がぎこちないと指摘を受けました。」
そこで、
「平成10年7月より、アイドリングストップ時に小鳥のさえずりを流し、現在は【音楽】を流しています。おかげさまで大変好評です。」
とのこと。12月にはクリスマスソングを流すようだ。
Wikipediaによれば、名古屋市交通局や静岡のしずてつジャストラインでも導入しているとのことなので、三重交通も追随しているのだろう。
いろいろ調べたところ、上記の車内放送制作会社が関わっていて、曲目は著作権フリーの音楽素材みたいなのを使っているようだ。
たしかに、僕も初めてアイドリングストップに遭遇した時は、その静けさに驚くとともに、何ともいえない気まずい雰囲気を感じたものだった。
だけど、停車中に音楽がかかるのにもびっくりしました…
お金をかけてそんなことをするより、ラジオ(例えばコミュニティFM)やクラシックのCDなんかを、走行中も適度な音量で流したりした方が、よさそうな気もするけど。
●暑い!
ところで、アイドリングストップ装置は、シフトレバーとクラッチペダルの操作に連動して作動(エンジン停止/再始動)する。
停車すれば必ずエンジンが止まるわけではなく、クラッチペダルを踏み続ければ、エンジンが回り続ける。
我が秋田のバス会社では、その辺の判断が運転士個々に任せられているらしく、(アイドリングストップ機能搭載車なのに)まったくエンジンが止まらないこともあれば、ちょっと前がつかえて数秒停止しただけなのにエンジンを止める人もいて、逆に排出ガスが増えたり、機器(バッテリーやセルモーター?)に負担がかからないか心配になるほど。
前者はメインスイッチをOFFにしているのかもしれないし、後者はクセでこまめにクラッチから足を離してしまうのだろう。
そして、暑さが苦手な秋田人にとっては、夏場はもっとつらい。アイドリングストップ中は冷房の動作に影響があるから。
秋田のバスでは経験上、エンジン停止直後はしばらく冷風が流れるが、一定時間(メーカーで異なるようだが30秒から1分ほど)が過ぎると止まってしまう。
環境やバス会社の燃料費節減のためとはいえ、長時間停車する始発バス停や長い信号待ちでは、暑くてかなわない。
一方、三重交通では、どの運転士もほぼ同じ基準でアイドリングストップを作動させているように感じた。つまり、長めの信号待ちなど一定の停車時間になりそうな場合だけエンジンを止めるようだ。赤信号がすぐ青になりそうな時は、エンジンをかけたままだった。
なお、前出の遠鉄バスでは、「1停車が20秒以上になると乗務員が判断した場合にこの機能を使用」としている。
ただ、三重交通のいすゞのバスでは、エンジン停止後、すぐに冷房が止まっていた気がした。だから、暑くてしょうがなかった。
秋田のいすゞのバスは、風が段階的に弱まって、1分近くは持つのだけど。何か仕様や設定が違うのか?【2014年2月27日追記】同じ車両メーカーでも、冷房機器のメーカーが違うことがあり、その差かもしれない。
音楽なんかより、冷房をかけてほしかったです…
●信号よし・横断歩道よし
最後に、三重交通のバスで好感が持てたこと。
まず、始発停留所から乗ったのは1回しかなかったが、発車する際、運転士が「ご乗車ありがとうございます。担当運転士は四日市営業所の○○です。安全運転に努めますので…」といった感じで、あいさつをした。
高速バスではよく行われるようだが、市街地の一般路線バスでは珍しいと思う。
また、交差点を通過する際には「信号よし」、さらに右左折で横断歩道を横切る際は「横断歩道よし」と、声に出して確認を行っているのが、マイクを通して聞こえていた。
定められたマニュアルに従っているだけ、といえばそれまでだが、僕としては信頼感を持って乗車することができた。
秋田のバスでは、こうしたマニュアルはないようだが、この程度のことなら、秋田のバス会社にもできるはずだし、乗客の印象もよくなるのだと思うのだが。
(もちろん、秋田のバスも、横断歩道通過時は大きく首を動かして左右を確認するなど、安全には充分配慮してはいる)
ネットで見てもあまり情報がなかったので、おそらく、三重の皆さんはそれが当たり前だと思っておられるのだろうが、僕としては、アイドリングストップ中の音楽と、「信号よし」「横断歩道よし」は、かなりのカルチャーショックだった。
旅行記続編はまた後日。