秋田弁ではないかと思われる言葉についてのお話。
「ほとりくさい」という言葉、ご存じですか?
「ほとりくせ」とか「ほどりくせ」と言う人もあるかもしれません。
うちの身内のある者が、たまに(主に夏場)使う。辞書にも出ていないので、秋田弁かなと思っていた。
今どきは、ネットで検索すれば、たいていの方言の単語なら「◯◯弁辞典」のようなホームページに出ているもの。しかし、「ほとりくさい」はほとんど出ていない。
Googleで「"ほとりくさい"」「"ほとりくせ"」「"ほとり臭い"」で検索すると、検索結果はいずれも10件前後。
ネット上で言葉として使っている人は、いるにはいるが、普通の日本語にしては少ない。
意味についてネット上にあったもの拾うと、
1.(場所は不明)「干したての布団のにおい。お日さまのにおい」
2.富山弁で「食品などが悪くなって出す臭い」
3.秋田弁で「ひなたくさい。リンゴの水分がなくなり、本来の風味がなくなったときの感触」
の3つ。
なお、3つ目の秋田弁は、ユーザーが投稿する形式の方言辞典(ジャストシステムの「ほべりぐ」。2009年で更新停止)から。
この投稿者は、「(共通語の)ひなたくさい」=「リンゴの水分が抜けた状態」と思っておられるようだが、それ自体間違っている。共通語の「ひなたくさい」にはそのような意味はない。
秋田や青森や信州では、リンゴの水分が抜けた状態は「ぼける」と言うはずだが。
ただ、「食品が正常の状態でなくなる」という意味では、富山弁とどことなく似ているような気もする。(でも、富山弁としての用例もこの1つしかないわけで、怪しいかも)
話がそれましたが、身内の使う「ほとりくさい」は、上記3つの中では1番目のに近いが、ニュアンスはやや違う。
「雨が降ったり、打ち水をした時の地面のにおい」とか「熱気や人の体温・体臭がこもった部屋のにおい」という意味で使っている。雨のにおいと部屋のにおいは違うにおいなわけで、既に2つのもの対して同じ言葉を使っていることになる。
ネット上でも、布団(の中)あるいは部屋が「ほとり臭い」という用例がわずかに見られた(秋田とは直接関係なさそうな方々)。これは上記後者の意味と同じだろう。
「ほとりくさい」とは、「熱り臭い」と漢字表記すると考えられる。「体がほてる」という時は「火照る」のほか「熱る」とも表記するそうなので、それが語源だろう。
要は「熱によって発せられたにおい」あるいは「体感する熱そのもの」を示すのだと思う。
「食品が正常の状態でなくなる」という意味よりは説得力があると思うけれど。
で、結局秋田弁なんだろうか? それ以前に日本語としてもよく分からないし…
皆さまの周りでは、「ほとりくさい」使いますか?
【2015年3月19日追記】夏目漱石の小説「三四郎」の最後近くの第105回・十二の六(東京朝日新聞にて明治41年12月27日掲載、朝日新聞にて2015年3月19日再掲載)で、三四郎がインフルエンザで寝込んで一夜が開けた部屋に「下女が来て、大分部屋が熱臭いといった。」というくだりがあった。「熱臭い」とは初めて聞いた言葉。
デジタル大辞泉に「ねつくさい【熱臭い】」の項目があり、「熱気がこもっている。高熱の病人の体熱が感じられる。「―・い寝具」」だそうだ。ほとりくさいと、重複するニュアンスがあるように感じた。
「熱臭い」の方言が「ほとりくさい」なのだろうか?
「ほとりくさい」という言葉、ご存じですか?
「ほとりくせ」とか「ほどりくせ」と言う人もあるかもしれません。
うちの身内のある者が、たまに(主に夏場)使う。辞書にも出ていないので、秋田弁かなと思っていた。
今どきは、ネットで検索すれば、たいていの方言の単語なら「◯◯弁辞典」のようなホームページに出ているもの。しかし、「ほとりくさい」はほとんど出ていない。
Googleで「"ほとりくさい"」「"ほとりくせ"」「"ほとり臭い"」で検索すると、検索結果はいずれも10件前後。
ネット上で言葉として使っている人は、いるにはいるが、普通の日本語にしては少ない。
意味についてネット上にあったもの拾うと、
1.(場所は不明)「干したての布団のにおい。お日さまのにおい」
2.富山弁で「食品などが悪くなって出す臭い」
3.秋田弁で「ひなたくさい。リンゴの水分がなくなり、本来の風味がなくなったときの感触」
の3つ。
なお、3つ目の秋田弁は、ユーザーが投稿する形式の方言辞典(ジャストシステムの「ほべりぐ」。2009年で更新停止)から。
この投稿者は、「(共通語の)ひなたくさい」=「リンゴの水分が抜けた状態」と思っておられるようだが、それ自体間違っている。共通語の「ひなたくさい」にはそのような意味はない。
秋田や青森や信州では、リンゴの水分が抜けた状態は「ぼける」と言うはずだが。
ただ、「食品が正常の状態でなくなる」という意味では、富山弁とどことなく似ているような気もする。(でも、富山弁としての用例もこの1つしかないわけで、怪しいかも)
話がそれましたが、身内の使う「ほとりくさい」は、上記3つの中では1番目のに近いが、ニュアンスはやや違う。
「雨が降ったり、打ち水をした時の地面のにおい」とか「熱気や人の体温・体臭がこもった部屋のにおい」という意味で使っている。雨のにおいと部屋のにおいは違うにおいなわけで、既に2つのもの対して同じ言葉を使っていることになる。
ネット上でも、布団(の中)あるいは部屋が「ほとり臭い」という用例がわずかに見られた(秋田とは直接関係なさそうな方々)。これは上記後者の意味と同じだろう。
「ほとりくさい」とは、「熱り臭い」と漢字表記すると考えられる。「体がほてる」という時は「火照る」のほか「熱る」とも表記するそうなので、それが語源だろう。
要は「熱によって発せられたにおい」あるいは「体感する熱そのもの」を示すのだと思う。
「食品が正常の状態でなくなる」という意味よりは説得力があると思うけれど。
で、結局秋田弁なんだろうか? それ以前に日本語としてもよく分からないし…
皆さまの周りでは、「ほとりくさい」使いますか?
【2015年3月19日追記】夏目漱石の小説「三四郎」の最後近くの第105回・十二の六(東京朝日新聞にて明治41年12月27日掲載、朝日新聞にて2015年3月19日再掲載)で、三四郎がインフルエンザで寝込んで一夜が開けた部屋に「下女が来て、大分部屋が熱臭いといった。」というくだりがあった。「熱臭い」とは初めて聞いた言葉。
デジタル大辞泉に「ねつくさい【熱臭い】」の項目があり、「熱気がこもっている。高熱の病人の体熱が感じられる。「―・い寝具」」だそうだ。ほとりくさいと、重複するニュアンスがあるように感じた。
「熱臭い」の方言が「ほとりくさい」なのだろうか?