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つばさ・こまち料金改定

2021-11-18 23:03:40 | 旅行記
2021年11月16日、JR東日本から「山形新幹線の全車指定席化と山形・秋田新幹線の特急料金の改定について」が発表された。2022年春から適用。
※以下、秋田新幹線沿線住民の視点での中身です。山形新幹線側では受け取りかたが違う点もあるかと思います。利用の際は公式な情報を確認願います。

内容は大きく2点。
まずは、自由席もあった山形新幹線「つばさ」が、全車指定席になる。福島~山形~新庄のミニ新幹線区間では、空席に自由席料金相当で乗車できる「特定特急券」制度を導入。
2002年の秋田新幹線「こまち」と同じ動きであり、秋田ではすでに行われていることなので、この件は関係なし(横手・湯沢などから新庄で乗り継ぐ場合は関係しますが)。


もう1点が、分かりにくいけれど、秋田新幹線にも関わる。
ミニ新幹線区間における特急料金が、全面的に変更される。 といっても、購入方法は変わらず、金額も激変ではないので、以下、読み飛ばしてください。
「従来よりもわかりやすく、ご利用しやすい特急料金体系に見直します。」として、「新幹線と在来線の区間をまたがってご利用の場合または在来線区間のみをご利用の場合」「指定席特急料金の価格見直しにより、わかりやすくお求めやすい料金体系とします。」。
※ここでの「新幹線」とはフル規格である東京~福島/盛岡、「在来線」とはミニ新幹線規格の福島~山形~新庄、盛岡~秋田のこと。以下、フル、ミニと表記します。

こういう場合、料金改定を口実に、実質値上げしてしまうことがあるが、本件はそうでもないと思う。ただ、つばさで現行の自由席と比べれば、当然値上げにはなる。また、こまちも含めてグリーン車を使う場合は230~280円値上がりするらしい。さらに末尾の通り、つばさ/こまちの進行方向と逆方向へ乗り継ぐ(V字)場合も値上がり。
少なくとも「わかりやすく」なるのは事実だと思う、のだけど説明が難しい。

NHK秋田放送局のローカルニュースでは、18日に「来年春 秋田新幹線の特急料金見直し 最大280円値下げへ」として報道。プレスリリースを元にそつなくまとめている。いい意味でさすがNHK。
NHK NEWS WEB より
ところで、NHKの報道の背景に映った資料映像。ミニ区間複数箇所で撮影したこまちの走行シーンなのだが、最後の↑シーン。秋田駅からいちばん近い「館の越踏切」付近だ。画面奥が秋田駅で、右フレーム外が踏切。速度が遅いことから、車両基地へ引き上げる回送列車だと思われる。
また、画面のすぐ奥で、左方向に線路が分岐していて、それが羽越本線。1961年の運行開始当初の特急「白鳥」と「つばさ」は、秋田駅を同時刻発車だったそうで、この場所(もっと奥の分岐点ギリギリ)で撮影された、左右に分かれていく両列車の写真をネットなどで見ることができる。しかし、現在、分岐点内側はJR東日本の保線関係の倉庫みたいのや民家などがあって、立ち入って撮影などできなくなっている。館の越踏切に続く道路が、いちばん分岐点に近いが、分岐点は見通せない。でもNHKは、その道路より分岐点寄りで、しかも高い位置から撮影している。民家の2階に上がりこませてもらうか、倉庫か何かの駐車スペースに高所作業車でも入れさせてもらって撮らないと、↑このアングルにはならないはず。

一方、17日付 秋田魁新報。第3社会面で小さな配信記事「秋田新幹線 来春、料金見直し/山形新幹線、自由席廃止へ」を載せ、こまちに関しては具体的な金額すら挙げていない。仙台支社のコメントとして増収を狙った改定ではないことには触れている。魁の記者たちは本件を理解できていないのかもしれない。
実際、乗車するにしても、今はえきねっとなど大幅な割引や、宿泊込みのパックを使う人が多いだろうから、今回の改定での影響は軽微になるだろう。秋田新幹線「こまち」の場合は、さほど気にすることでない(ととらえる人が多い)だろう。


以下、細かい話で、具体例。間違っているかもしれません。
現在、通常期の正規料金で、秋田~東京間でこまちの普通車指定席を利用すると、乗車券10010円+指定席特急券8110円=計18120円。乗車券は今回関係ないので、特急券8110円のほう。

JRの新幹線・特急列車に乗り慣れている人ならば、「自由席料金は、通常期の指定席特急料金の530円引き」は半ば常識。グリーン車などの料金も、自由席と同額をベースに加算される。
裏を返せば、「座席指定料金は1列車につき530円」と取れる。

では、全席指定なのであり得ないが、仮にこまちに自由席が存在した場合、秋田~東京の料金は8110円-530円=7580円となるかと思いきや、そうならない。
7200円。つまり座席指定料金として910円も取られている。
910円に内訳があり、フル規格区間で530円+ミニ区間で380円。すなわち込みだとフル6430円+ミニ1680円=8110円。
つまり、フル・ミニそれぞれで指定料金を取られ、ミニ区間のほうは530円の約3割引という感じ。

そんな内訳を知ってしまうと、同じ席に座り続けるのに、他列車の1.7倍も取られるのは、不公平じゃないでしょうか。
「いなほ」や昔の「たざわ」など在来線特急との乗り継ぎでは、実際に2つの席を使うことになるし、基本的に乗継割引制度があったから在来線側は半額になっていたのだから、ミニ新幹線化による値上げの一因だった。

また、指定相当額に限らず特急料金全体で見ても、同じことだった。
在来線の特急料金は、50キロ刻みで決まっていて、在来線特急時代の「たざわ」や「つばさ」は、安い「B特急料金」が適用された。速度や設備で劣るからだと思う。ミニ新幹線化で、「A特急料金」に変わって、ここでも値上げとなった。

ミニ区間のみを利用する時は、A特急料金そのまま。秋田~盛岡だと、指定席2390円、特定特急券1860円。
フル区間へまたがって利用する時は、専用の別の料金体系が存在し、それはA特急料金の約3割引の値段。今回のリリースでは「幹在特」と表記してある。たしかに券面にもそう表示される。秋田~盛岡(指定席)だと1680円。

安い高い、不公平感は別としても、この“二重の料金体系”がとても分かりづらかった。
料金案内サイトでも明確には出てこないし、旅行業務取扱管理者とかの資格試験でも難問とされるらしい。
趣味で旅行計画するにしても、閑散期・繁忙期、特定特急券、さらにグリーン車やえきねっと割引(旧)も絡んでくると、何がなんだか…
たしか、繁忙期にフル区間に少しだけまたがってグリーン車に利用(秋田~新花巻【19日訂正】雫石~新花巻とか?)すると、同区間の普通車指定席より安い料金になってしまうような、おかしなこともあったはず。


2022年春からは、ミニ区間の二重体系を一本化。A特急料金とも幹在特とも異なる「新特急料金(正式な呼称かは不明)」が設定される。そして、フル区間へ乗り通す場合は、指定席料金相当額が含まれない(重複徴収されない)額になる。50キロ刻み。
秋田~盛岡など100~150キロ区間の場合。
 現行 A指定席2390円、A特定1860円、幹在特指定1680円
  新 ミニ区間のみ指定2110円(-280円)、ミニ区間のみ特定1580円(-280円)、フル区間へ乗り通し1580円(-100円)
フル区間に行くかに関わらず、指定席を取るか/取らない(特定特急券)かどうかで530円違うという、他の特急料金と同じ感覚の体系。
秋田~東京ではミニ1580円+フル6430円=8010円(-100円)。絶妙な価格設定といったところか。大差ないけれど、適正な料金体系になったととらえて、歓迎するべきだと思う。



今回のリリースでは、あまり分からないこと2点。
1.閑散期・繁忙期の増減額
カレンダーで定められた時期は、指定席特急料金が増減する。普通は繁忙期+200円、閑散期-200円。
ところが、これでもミニ新幹線直通では重複適用されている。ミニ区間分の200円は3割引(140円)で加減され、繁忙期+340円、閑散期-340円【19日補足・上記繁忙期グリーン車での、普通車との料金逆転現象の一因がこれ】。来春からは明示されていない。

2022年4月には、JRグループ全体でこの制度が変更される。
新型コロナウイルス対策として利用を平均化すべく、再繁忙期・繁忙期・通常期・閑散期の4区分になり、期間も現行と変わる。当然、重複適用はなくなって、他列車と同額になるはず。


2.直通運転でない方向への乗り継ぎ(V字乗り継ぎ)
ここまでは、つばさやこまちが走るルート(方向)での、ミニ~フルのまたがり。
では、つばさ・こまちと反対方向のフル区間へまたぐ場合。つまり、福島で白石蔵王・仙台方向、盛岡でいわて沼宮内・新青森方向と、つばさ・こまちとの乗り継ぐ場合。

現行でも、JR東日本公式サイトではこの点があいまいで、運賃検索サイトでは通しでない別々の料金で計算されてしまうのだが、実際には幹在特が適用される。遠方の駅窓口では発券に手間取ることもあるらしいが、秋田新幹線沿線では指定席券売機でも購入できる。

今回のリリースに、「今後は直通方向のご利用に限り、新幹線区間のみの料金(通常期の場合530 円)とします。」とあるし、そもそも幹在特が廃止されるので、今後は別々の料金になり、ここは値上げになる。

秋田~盛岡~八戸の場合。指定席どうしの場合と、特定特急券どうしで比較。
・現行 指定席 ミニ(幹在特)1680+フル2400=4080円
・現行 特定特急券 ミニ(幹在特)1300+フル1870=3170円

・新 指定席 ミニ2110(新料金)+フル2400=4510円(+430円)
・新 特定特急券 ミニ1580(新料金)+フル1870=3450円(+280円)

なお、V字でなく秋田から盛岡や仙台で乗り換えて福島や郡山に行く時のような、フル区間各駅で、こまち/つばさと他の新幹線(はやぶさ、やまびこ等)を乗り継ぐ場合でも幹在特は適用されるが、その場合は改正後も新料金が適用されるのだろう。「直通『方向』のご利用」だから。
このケースの現行では、ミニ区間は特定特急券にしておけばその分380円安くなる。改定後は、フル区間が自由席であっても、ミニ区間の料金は固定になるようなので、指定を取らなきゃ損ということになるのか。


2016年に、秋田駅の指定席券売機で、八戸→盛岡→秋田の特定特急券を買っていた。
きっぷは3枚出てくる。発券番号順に
新幹線特定特急特急券(立席)八戸→盛岡 当時の特定特急券料金1840円

特定特急券(立席)盛岡→秋田「幹在特」表示あり 当時の幹在特料金1280円

指定券(立席)盛岡→秋田 値段なし
盛岡を境にはっきりと分かれていて、盛岡駅で改札の外へ出ることも可能だった。
3枚目が、指定券なのに指定されていない無意味な券片だけど、2枚目と同時使用の必要あり。例外的な料金体系の、さらに例外的な利用ならではの変わったきっぷなのだろう。
来春以降は、盛岡を境にした普通の2枚の特定特急券(当然盛岡で下車可能)になるはず。


山形、秋田に続くミニ新幹線は、全国各地に構想はあるようだが実現はしていないものの、両新幹線はすっかり定着している。整備新幹線構想もなかなか進まないし。
JR東日本では、山形新幹線への新車両E8系電車導入、福島駅でのアプローチ線の改良(大がかりになりそう)を行うことになっている。秋田新幹線でも、岩手秋田県境・仙岩峠に新たなトンネルを掘って、安定運行と時間短縮する計画が出ている(発案はJR東日本側。費用負担は両県もすることになりそうだけど)。そんなわけだから、2つのミニ新幹線は、この先も当分走り続けるだろう。
コメント (8)
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