たけじいの気まぐれブログ

記憶力減退爺さんの日記風備忘雑記録&フォト

葉室麟著 「草笛物語」

2024年05月18日 08時37分07秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「草笛物語」(祥伝社)を読み終えた。
本書は、著者創作の架空の小藩、九州豊後の「羽根藩(うねはん)」を題材にして描かれた長編時代小説「羽根藩シリーズ」の第5弾の作品である。
すでに、第1弾「蜩ノ記」、第2弾「潮鳴り」、第3弾「春雷」、第4弾「秋霜」は、読んでいるが、この第5弾「草笛物語」で、「羽根藩シリーズ」は、終わりのようだ。
毎度のこと、著者の筆致に引き込まれてしまい、あっと言う間に最後まで読んでしまったが、まだまだ続編が有ってもおかしくない内容で終っており、残念な感じすらしてしまう。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている


▢目次
(一)~(二十六)

▢主な登場人物
赤座颯太(主人公、あかざそうた、羽根藩藩士赤座兵庫・鶴の息子、鍋千代・藩主三浦吉通の小姓)、
水上岳堂(みずかみがくどう、赤座颯太の伯父
戸田順右衛門(中老、鵙、戸田秋谷の息子、幼名郁太郎)・美雪(順右衛門の娘)、
佳代、
檀野庄三郎・薫・桃、
源吉・お春、
三浦吉通(羽根藩藩主、幼名鍋千代)、三浦吉房(前藩主)、三浦左近(三浦御一門、月の輪様
吉田忠兵衛(羽根藩家老)、原市之進(羽根藩勘定奉行)、赤座九郎兵衛(羽根藩馬廻役)、
藤村平吾(鍋千代・藩主三浦吉通の小姓)、小林哲丸(鍋千代・藩主三浦吉通の小姓)、
寅吉、権助、三太、

▢あらまし等
読み進める内に、本書は、「羽根藩シリーズ」第1弾「蜩ノ記(ひぐらしのき)」ゆかりの人物が登場し、「蜩ノ記」の16年後の羽根藩を描いた作品であることに、気付かされる。
「蜩ノ記」は、羽根藩の要職にあった、主人公の戸田秋谷が、ある事件で蟄居の身となり、山深い村で家族と過ごし、三浦家家譜編纂を仕上げ、10年後、決められた通り切腹して果たした物語だったが、藩から見張り役として派遣され、秋谷を師と仰いだ若き檀野庄三郎がいた。
その庄三郎が、秋谷の娘薫(かおる)を娶り、娘桃と親子3人、すでに、藩の要職を離れ、相原村にある薬草園の番人をしている。さらに、秋谷の息子郁太郎(戸田順右衛門と名乗り)、中老となり、鵙殿(もずどの)等と呼ばれ、羽根藩藩政を動かす立場に上っているという時代背景、羽根藩の藩主家督相続騒動を縦軸にした物語になっている。

本書の主人公は・赤座颯太。颯太は、羽根藩江戸屋敷で生まれ育った13歳の少年で、羽根藩世子鍋千代の小姓だったが、両親が相次ぎ他界したため、伯父水上岳堂に身を寄せることになり、江戸から、豊後羽根藩へ。
そこに待ち受けていたものは・・・・。

国許では、家督相続を巡り、世子鍋千代を推す中老戸田順右衛門と、三浦家御一門の三浦左近を推す派が対立。鍋千代が新藩主三浦吉通となりお国入り、颯太は、再び藩主の小姓となり出仕することになるが、城内は陰謀策謀が渦巻き、月の輪様(三浦左近)が動き出し・・・・。
美雪が、お春が・・・、

どうする?、颯太、岳堂、壇野庄三郎、順右衛門、藩主吉通・・・、

  「颯太はいずれ殿の側近として、うるさい重役であるおぬしを倒しにくるであろう」
  庄三郎は順右衛門の横顔に目を遣りながら、何やら心楽しげにそう口にした。
  「その日が楽しみです」
  青く澄みわたった空を見上げるようにした順右衛門は、
  ふっと笑みを浮かべてそう応えてから、庄三郎に呼びかけるように続けた。

  「・・・・義兄上(あにうえ)」
  蜩の鳴く声が空から降るように聞こえる。

で、終っている。
「ぴぃーーっ」・・・、表題「草笛物語」の「草笛」は、村の童たちがお互いの居場所を知らせるために吹く笛として、友を呼ぶ証しとして、随所で効果的に使われている。
本書は、「泣き虫颯太」と呼ばれていた少年赤座颯太が、次第に武士として成長してゆく姿が描かれており、若い藩主吉通と村の童達が連携して、月の輪様の暴挙を阻止しようとする場面等、陰湿陰謀の家督相続騒動が本筋ながらも、カラッと爽やか、「少年少女小説」のような要素も織り込まれた物語だった。

コメント (2)

葉室麟著 「蛍草」

2024年05月13日 20時39分06秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「蛍草(ほたるぐさ)」(双葉文庫)を、読み終えた。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(二十七)
解説 細谷正充(文芸評論家)

▢主な登場人物
菜々(主人公、元鏑木藩藩士安坂長七郎と五月の娘)、
風早市之進・佐知・正助、とよ、甚兵衛、
田所与六・滝、
秀平・お勝・宗太郎、
轟平九郎、桂木仙之助、
壇浦五兵衛(だんのうらごへい、だんご兵衛)、お舟(おふね、おほねさん)、
椎上節斎(しいがみせっさい、死神先生)、涌田の権蔵(わくたのごんぞう、駱駝の親分)
鏑木勝重(鏑木藩前藩主、大殿)、鏑木勝豊(鏑木藩藩主)
柚木弥左衛門(鏑木藩江戸藩邸用人)
卜部作左衛門(鏑木藩国家老)、宮田笙兵衛(鏑木藩勘定奉行)、榊佐十郎(鏑木藩目付)

▢あらすじ等
城中で刃傷沙汰を起こして切腹した鏑木藩藩士だった父親安坂長七郎の無念を晴らしたいという悲願を胸に秘め、武家の娘であることを隠し、16歳の春、城下の風早家の女中となった菜々が主人公の長編時代小説である。
奉公先の風早家で、菜々は、当主の市之進、奥方の佐知に、温かく迎えられ、教えられ、導かれ、幼い子供正助(4歳)、とよ(3歳)からも慕われ、平穏な日々を過ごしていたのだが、佐知が労咳で亡くなり、亡き父親と同様に、前藩主鏑木勝重に繋がる勘定方の不正を糺し、藩の改革を目指していた派の中心人物だった市之進は、轟平九郎の暗躍により、捕らわれの身になり、さらに流罪となり、風早家は存亡の危機に陥った。
菜々は、女中でありながら、残された風早家の幼い子供たちの面倒を見る立場となり、孤軍奮闘、借家に住み、野菜、草鞋の行商をし、一心不乱に暮らしていたが、またもや、平九郎に追い詰められる・・・。
そんな菜々の純真で、一途な心に打たれる、なんともユニークなキャラクターの味方が現れるのも、小説の面白さ。
菜々が、名前の呼び間違い、その受け答えで、随所で笑いを誘われる等、ユーモア要素が織り込まれた作品でもある。
だんご兵衛?、おほねさん?、死神先生(しにがみせんせい)?、駱駝(らくだ)の親分?
菜々は、藩主鏑木勝豊のお国入りにともなって行われる御前試合で、亡き父親のため、風早家のため、生死をかけて大勝負に打って出るが、果たして、悲願が叶うのかどうか・・・・・。
  幸せはやってきた時に、つかまえなければ、逃げていく・・・・。
  涙がとめどなくあふれて、市之進の姿がはっきり見えない。
  だが、しっかり前を向いて菜々は、大八車を力強く引いた。
最後は、感動的シーンで、終っている。


(蛇足)

表題の「蛍草(ほたるぐさ)」とは、
「露草(つゆくさ)」のことで、
俳諧の世界では、秋の季語。
また、古くは「月草(つきくさ)」とも呼ばれ、
万葉集にも出てくると、
本書の中で、紹介されている。

月草の仮(かり)なる命にある人をいかに知りてか後も逢はむと言ふ
(詠み人知らず)

爺さんの備忘録的花図鑑・「ツユクサ(露草)」
👇️
こちら


藤原緋沙子著 「花の闇」

2024年05月12日 15時28分21秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「花の闇」(廣済堂文庫)を、読み終えた。本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第2弾。
「第一話 虎落笛」「第二話 かがり火」「第三話 春萌」「第四話 名残の雪」の連作短編4篇が、収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。

「第一話 虎落笛(もがりぶえ)」
▢登場人物
杢助(もくすけ)・おこう、岡野左源太、加納喜平次、近江屋清太郎、
▢あらまし
評判の大福餅を振り売りする醜男の杢助と美貌のおこうは、仲睦まじい夫婦と聞かされていたが、そのおこうが、橘屋に駆け込んできた。何故?。行方不明だった杢助の弟、岡野左源太が見つかり、顔を合わす内、惹かれてしまったというのだが?、単なる夫婦のもつれではなさそう?、お登勢、十四郎等が調査開始するが、杢助が殺害される。
元築山藩で十四郎と同輩だった加納喜平次と近江屋が浮上してくる。
不義の罪を着て、逝ったおこう、

  「なんてことを・・・・」、お登勢は襦袢の袖を引き出して、
  おこうの顔についた泥を払った。
  俄に冬の風が立ち、おこうの白い顔をなでた。
  虎楽笛が・・・、十四郎の耳には聞こえた。

「第二話 かがり火」
▢登場人物
鉄心、日照、伝七(元霞の伝蔵)、波江、華枝、柳庵、相模屋徳兵衛、竹次郎、
▢あらまし
光臨院の若い僧鉄心が、橘屋に駆け込んだが、男は受け入れられないと 断わられる。その鉄心が水死体となって発見された。鉄心は、何かの薬を飲まされて死んだ後に川に投げ込まれた疑いがあり、お登勢、十四郎、藤七達が、探索開始、真相究明に取り掛かる。さらに、独身の金吾が乗り気になった縁談の相手、華枝が、懐剣で自害。何故?、光臨院は、将軍側室お多摩の方ゆかりの寺、扱いが難しく、十四郎は、楽翁に相談、暗示させるアドバイスを受ける。
  「日照は、今宵、神隠しに遭った。よいな」
  十四郎が念をおす。
  「十四郎、今夜は華枝のために飲みたい。付き合ってくれるか」
  遠くのかがり火を見詰めて金吾の声には張りがあった。

「第三話 春萌」
▢登場人物
お秋、小太郎、お艶、兵吉、長次郎、向井達之進、亀屋鶴蔵、
▢あらまし
お秋は、3年前に古着屋を営むお艶所有の裏店に入り、お艶の店で働き出し、同じ裏店に住む下駄職人兵吉と所帯を持ったが、兵吉が博奕、女、喧嘩をするようになり、夫婦別れをしたいと橘屋に駆け込んできた。お秋は、8年前には、花屋敷の水茶屋にいて錦絵にもなった看板娘だといい、無役の旗本向井達之進が甲府勤番を申し付けられたのについて、甲府へ行ったはずだという。
何故、江戸に?、なにか裏が有る?、十四郎達が、探索開始、真相究明に乗り出す。
向井達之進が江戸に舞い戻り、美人局(つつもたせ)?
  「つまりだ。お前たちは、長屋の連中やまる留の親方まで巻き込んで芝居を
  打ったという訳だ」、十四郎は、柳原の土手で川風に当たりながら、厳しい眼を
  お艶に向けた。
 
「第四話 名残の雪」
▢登場人物 
美濃屋治兵衛・お静、増吉、吉蔵、笹子屋房五郎、赤沢左内、小田切伝八・雪乃、
▢あらまし、
橘屋の主お登勢の代役で酒問屋の聞き酒に出掛けた十四郎、藤七が心配するほど、高価な酒をがぶ飲みし、ふらつきながらの帰途、咳込んで斬られようとしていた浪人を救ったが、その浪人の名は、亀山藩士小田切伝八、父親の仇、元藩士赤沢佐内を討つため藩を出て江戸に出てきた人物だった。十四郎のかつての許婚雪乃の夫であったことが分かった。
一方で、橘屋に、美濃屋の内儀お静が駆け込んできて、夫治兵衛を激しく非難、お登勢、十四郎が調査を開始するが、予想もつかなかった方向に展開していく。
伝八が、十四郎のかつての許婚雪乃の夫であったことが分かり、失望、落胆、怒り、嫉妬、やけ酒でダウン。感のいいお登勢には見透かされ、言葉を荒げてしまい・・・。
しかし、生活苦から身を落とし、労咳を装っている伝八、敵討ちを成就させ、息子小太郎のために、お家を再興させたい一心で身を売る雪乃を、放置すること等出来ない十四郎。伝八のためではなく、かっての許婚雪乃のために、助太刀をしようと心に決めるのだったが・・・・。
  「ヤーッ!」、
  居合い一閃、一本の太い竹を斬り下げた。十四郎の怒りの一刀、
  こらえにこらえた白刃が、今放たれて月光にきらりと光った。
  何かが終わった。終ったが、胸に空いた穴は埋めようもない。

(つづく)


畠山健二著 「本所おけら長屋・外伝」

2024年05月05日 21時23分20秒 | 読書記

昨年末に、図書館に予約していた、畠山健二著「本所おけら長屋・外伝」(PHP文芸文庫)が、やっと順番が回ってきて、先日借り、読み終えた。
本書には、「その壱 馬鹿と外道は紙一重」「その弐 家督は寝て待て」「その参 金太が街にやってくる」「その四 みちのくさとり旅」の短編4篇が収録されているが、2013年7月にスタートし、二十巻、九十三話で完了した、大人気の「本所おけら長屋シリーズ」の主な登場人物、万造、松吉、黒石藩藩主津軽甲斐守高宗、金太、島田鉄斎等が、おけら長屋の住人になったり、おけら長屋と関わったりする前の経歴やプロフィール等を描いだ形の作品になっている。シリーズ中では、明らかにされておらず、謎めいていた部分も多々有って、「そういうことだったのか」・・、
より、人物像が鮮明になり、話が繋がったような気がする。


「本所おけら長屋シリーズ」は、江戸本所亀沢町の貧乏長屋「おけら長屋」の店子、万造松吉の「万松コンビ」を筆頭に、左官の八五郎お里夫婦、粋な後家女お染、浪人の島田鉄斎、等々、貧しいくせにお節介焼きで人情に厚い、個性豊かな面々が、次々巻き起こる問題、事件、騒動を笑いと涙で体当たりし、まーるく収めていくという時代小説で、とにかく愉快、面白い。
演芸の台本執筆や演出等の経歴を持たれる著者畠山健二特有の小気味よい文体、まるで江戸落語、漫才を聞いているようなテンポ良さに引き込まれてしまい、随所で、笑いを堪らえ切れなくなったり、思わず泣かされてしまったりする。
「本所おけら長屋シリーズ」のテーマについて、著者は、「品行が悪くても品性が良い」ことだと述べておられるようだが、「いつも馬鹿やっていながら、決して人を裏切ったり騙したりしない」全ての登場人物達に、読者も気持ちよくなり、人の優しさがジーンと心に沁みてくる時代小説になっている。


「その壱 馬鹿と外道は紙一重
 ▢主な登場人物 
  万造、松吉、徳兵衛、八五郎・お里、佐平、お蝶、小一郎、お久留、
 ▢あらまし等
  万造と松吉は偶然、同じ日におけら長屋に引っ越してくる。意気投合した二人は、
  長屋の髪結いの女の家で、小遣いをもらって暮らしている小一郎という優男に
  憧れるが、・・、


「その弐 家督は寝て待て」
 ▢主な登場人物
  黒石藩津軽甲斐守高宗(上総久留田藩藩主黒田豊前守直行の四男、黒田三十郎)、お芳、
  重子、黒田直秀、お鯉、黒田直親、お虎、黒田直広、
  お玉(黒石藩津軽甲斐守典高の嫡女・玉姫)、工藤惣二郎、前田兼吾、
  徳兵衛、東州屋善次郎

 ▢あらまし等
  上総久留田藩藩主の四男だった高宗は、いかにして津軽黒石藩藩主になったのか? 
  十五歳の高宗と五歳の玉姫の出会いを描く。


「その参 金太が街にやってくる」
 ▢主な登場人物
  金太、お助、文志郎、徳兵衛、万造、松吉、八五郎・お里、佐平・お咲、晋助、お栄、
  六甲屋円蔵、

 ▢あらまし等
  おけら長屋は、実は、事故物件だった?、住民らに立て続けに災いが起きる中、
  長屋立ち退きの話まで持ち上がる。なんとか阻止したい住民たちが考えた案とは?


「その四 みちのくさとり旅」
 ▢主な登場人物 
  島田鉄斎、結衣(ゆい)、島田官兵衛、木村重心、黒石藩藩主津軽甲斐守高宗、近藤房之介、
  米吉、権助、村田華祥(かしょう)、愁丸(しゅうまる)、小林吟平、荒又義右衛門、

 ▢あらまし等
  妻を亡くし、黒石藩の剣術指南役を辞した鉄斎は、剣術とは何かという答えが見いだせない
  まま、江戸に向かっていた。旅の途中、仙台に立ち寄った鉄斎は、宿屋で盗難騒動に
  巻き込まれる。


「特別付録・これだけははずせない!、第二幕を楽しむための名場面ガイド」
「本所おけら長屋シリーズ」第一幕(第1巻~第20巻)の名場面ガイドが収録されている。
 第二巻 その参 「まよいご」、第四巻 その四 「よいよい」、
 第五巻 その参 「はるこい」、第六巻 その五 「だきざる」、
 第七巻 その四 「おしろい」、第八巻 その五 「こしまき」、
 第十巻 その壱 「さかいめ」、第二十巻 その壱 「しにがみ」、
 第十三巻 その四 「ゆうぐれ」、第十六巻」 その四 「あいぞめ」、
 第十七巻 その四 「みなのこ」、第二十巻 その弐 「ひきだし」 


いずれも、笑いと涙の「おけら長屋」ワールド?
「ハハハハハー」「ウル、ウル」、記憶が蘇ってくる。


著者の畠山健二氏は、「本所おけら長屋(一)~(二十)」を「第一幕」と称し、物語にいったん区切りをつける決心をしたようで、巻を追うごとに成長する登場人物達を、より大きな舞台で活躍させたいと考え、「第二幕」を、目下構想中なのだという。
個性豊かな登場人物達が、今後どのような人生を歩むのか?、今後どんな展開になっていくのか?、是非、続編を期待したいところだ。


参照
👇
PHP研究所(PHP文庫)「本所おけら長屋シリーズ」


 

コメント (1)

葉室麟著 「秋霜」

2024年04月30日 22時14分27秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「秋霜(しゅうそう)」(祥伝社)を 読み終えた。本書は、著者創作の架空の小藩、九州豊後の「羽根藩(うねはん)」を題材にして描かれた長編時代小説「羽根藩シリーズ」の第4弾の作品である。先日、すでに、第1作「蜩ノ記」、第2作「潮鳴り」、第3作「春雷」を読んでいるが、さらに、第5弾「草笛物語」が有り、引き続き読んでみたいと思っているところだ。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(三十)

▢主な登場人物
草薙小平太(くさなぎこへいた
千々岩臥雲、玄鬼坊、
楓、おりう、善太、幸(こう)、勘太、助松、おみつ、弥々、
三浦兼清(羽根藩前藩主、長闇)、三浦兼光(羽藩藩主
児島兵衛(羽根藩筆頭家老)、墨谷佐十郎、
播磨屋弥右衛門、
鶴見姜斎(つるみきょうさい)、

▢あらまし等
読み始めてすぐに気が付いたことだが、「羽根藩シリーズ」の、第1作「蜩ノ記」、第2作「潮鳴り」、第3作「春雷」は、舞台は、同じ羽根藩であっても、それぞれ、時代がずれていて、登場人物も異なっていたが、第4作の「秋霜」は、第3作「春雷」の続編の形になっている。
「春雷」の最後で、主人公の多聞隼人が本懐を遂げるが、「秋霜」は、その隼人の死後3年が経過した時期から始まっている。「春雷」を読んでいなくても、独立した作品として読むことも出来るが、当然、登場人物も重なっており、「春雷」を読んでから読んだ方が、よりストーリーの繋がり、味わい、奥行きが広がるように思われる。
隼人の本懐が元で、隠居させられた羽根藩前藩主三浦兼清(長闇)の恨みつらみ、羽根藩取り潰しを図る幕府の巡見使が羽根藩に入る前に、過去の事件の全てを葬りたい筆頭家老児島兵衛の陰謀。欅屋敷に残った、隼人の関係者、楓(かえでおりう千々岩臥雲善太勘太助松等の子供達、隼人に心服した修験者玄鬼坊に襲いかかる危機・・・。

本書は、「どこまでも澄みきった秋空が広がっている」という一文、一見武士風だが帯刀無し、赤樫の木刀だけ腰に差した小柄な若者草薙小平太が、大坂からの船で豊後羽根藩の下ノ江の湊に降り立つシーンで始まっている。小平太は、大坂の白金屋太吉(おりうの夫)の紹介状を持参しており、欅屋敷に住み付くことになるのだが・・・。
実は、小平太は、ある使命を帯びており・・・。
欅屋敷の住人達と心が通い合い、過去の事件の真相を知り、小平太の意識の転換とその行動を描いた作品だと言えるのではないかと思う。
さらに、手段を選ばない非情な筆頭家老児島兵衛にも見事な信念と生き様が有ったのに対し、「春雷」で、隼人が失望した前藩主三浦兼清は、徹底的に愚弄な前藩主、羽根藩の厄介者、癌的存在として描かれている。
危機が迫った欅屋敷の住人、楓、おりう、善太、幸、勘太、助松、おみつ、弥々、それに、鶴見姜斎、玄鬼坊を、領外脱出させるために、千々岩臥雲は?、小平太は?

  「楓様・・・・・」
  小平太は、楓の目を見つめた。
  「ともに生きて参りましょう。そうすれば、やがて心の内にも春がめぐって参りましょう。
   草薙様ならば、わたしのもとから去っていた春を呼び戻してくださると信じております」
  楓の言葉を聞いて、小平太は慟哭した。
  自分は報われようとしている。
  「山霞が、早春の風に吹き流されていく」
 
本書は、秋空の表現で始まって、早春の表現で、終っている。


藤原緋沙子著 「雁の宿」

2024年04月26日 16時54分18秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「雁(かり)の宿」(廣済堂文庫)を、読み終えた。数年前まで、読書の習慣などまるで無かった爺さん、作家藤原緋沙子についても、その作品についても、ほとんそ知らず分からずだったが、最近になって、相互フォロワー登録している方のブログで知り、読んでみたい気分になり、今回初めて手を伸ばした書だ。
読み進める内に、本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」の第1作目であること、現在、18巻まで発刊されていることも分かった。
なんでも、2002年、著者の小説家デビューの作品でもあるようだ。
「雁の宿」を読んだ限りではあるが、なんとなく、以前読み終えた、平岩弓枝著、「御宿かわせみシリーズ」前半の、神林東吾、るい、畝源三郎の活躍、展開、雰囲気にも似たところ有りで、引き込まれてしまった。引き続き、第2作目以降も読んで見たい気になっているところだ。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


隅田川御用帳シリーズ(一)
「雁の宿」

「隅田川御用帳シリーズ」は、江戸時代、第十一代将軍徳川家斉の時代、松平定信が隠居後、楽翁と呼ばれ、尚も幕政に影響力を残していた時代を背景とした長編時代小説のようだ。
主人公は、「塙(はなわ)十四郎」。築山藩定府勘定組頭の息子だったが、藩が取り潰しになったことから浪人となり、長屋暮らしで生計を立てるのに苦労していたが、ある日、浪人数人に襲撃された元幕閣の大物(実は、楽翁だったが)を助けたことがきっかけで、深川に有る、縁切り寺「慶光寺」の門前の御用宿「橘屋」に雇われることになり、「橘屋」の女将・お登勢藤七、「慶光寺」の寺役人でかって道場仲間だった近藤金吾、北町奉行所与力松波孫一郎等と共に、さまざまな悩みや問題を抱えて駆けこんでくる哀しい女たちを救い守るため、彼女たちにまつわる事件を解決していくという物語である。連作短編構成になっており、読み進め易い気がする。

第一話 裁きの宿
▢登場人物
おたえ・大黒屋儀兵衛、おちか、伝兵衛、おくみ、向井作左衛門、清吉、捨蔵、万寿院(慶光寺の主、禅尼、十代将軍徳川家治の側室お万の方、「橘屋」の女将お登勢は、元お万の方に仕えた者の娘)
▢あらまし
夫の暴力に苛まれて離縁を望むおたえ、おたえを大黒屋儀兵衛に売った父母伝兵衛・おくみの深い事情とは?、儀兵衛の裏の顔とは?、楽翁から呼び出され初対面した十四郎、恐れず解決に当たれ!と、指図されるが・・・。

第二話 鬼の棲家
▢登場人物
お久、おかよ、与兵衛(大工)、波川虎之進(一千石旗本)・兼世、富蔵、熊一、彦三、八兵衛(裏店大家)、
▢あらまし
慶光寺での修行を終え、下げ渡しとなったお久が、三ツ屋から娘おかよに会うため押上村の実家に帰ったが、戻って来ず、お久、おかよ共、行方不明となった。藤七が探索、離縁したはずの大工の棟梁与兵衛は?、与兵衛に関わりの有る旗本波川虎之進の妻女兼世とは?、十四郎が尾行。押し込み事件頻発と与兵衛の関わりは?、十四郎、金吾、北町奉行所が、連携して、与兵衛、おかよ救出と、押し込み一網打尽にする日がきた。


第三話 蝉しぐれ
▢登場人物
お夏、お千代、おあき、清七、末広屋松五郎、佐太郎、柳庵、栗田徳之進(寺社奉行松平周防守家臣、徒目付)、柴田九郎左衛門(御納戸頭)、鬼頭数馬、春月尼(万寿院に使える尼、槍の名手)
▢あらまし

慶光寺の寺役人近藤金吾が、寺に押し入った、殺人剣トンボと遣う賊に斬られ重傷を追い、橘屋で看護される。慶光寺で修行中の、つね、おその、おみの、お夏の誰かを狙った犯行に違いなく、探索開始、元末広屋に奉公してお夏の乳母のような存在だったおあきから、「あれもこれも罠にはまったような気がする」から、末広屋松五郎の裏の顔、周辺を洗い出ししていると、互いに慕い合っていて、お夏を庇って島送りになっていた清吉が島抜けしてきて・・・
  「そうか・・・・それならば、きっと二人も浮かばれる」、
  十四郎は瞑目して手を合わせた。俄かに寺の木々の間から、蝉しぐれが立った。
  それはまるで、葬列を送る涙声のようだと思った。


第四話 不義の花始末
▢登場人物 
土屋伝八郎(田代藩定府お側衆)・綾乃・新一郎、
秋元弦之丞(田代藩江戸勘定方出納掛)、藤堂内蔵助(田代藩江戸家老)、佐々木勘兵衛(田代藩留守居役)
おのぶ、弥助(丸子屋手代)、おたか(橘屋仲居頭)
▢あらまし、
不義密通の疑いを掛けられ命を絶とうとした綾乃、田代藩内の不正横領の真相は?、不義密通をでっち上げ、伝八郎が果たし合いせざるを得ない状況に追い込んだのはいったい誰?
十四郎、金吾、お登勢が、事件の真相解明に乗り出す。
十四郎が金吾に言う。「お登勢殿はいったい、幾つなんだ」、「おぬし、そんな事も知らぬのか。確か二十五になった筈だ」・・・、二人の会話はそこで切れた。
  「おいそこのお二人さん、あの方とか、そのお方とか言わないで、
   俺にも分かるような話をしろ・・・」

  「どうも、申し訳ありませんでした」、
  お登勢はそう言うと、白い細い手を口に当てて、くすりと笑った。
和気藹々のこの3人、これから先、いったいどうなっていくのだろうか。

(つづく)


葉室麟著 「春雷」

2024年04月22日 11時34分00秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「春雷(しゅんらい)」(祥伝社文庫)を、読み終えた。
本書は、著者創作の架空の小藩、九州豊後の「羽根藩(うねはん)」を題材にして描かれた長編時代小説「羽根藩シリーズ」第3弾の作品である。先日、すでに、第1弾「蜩ノ記」、第2弾「潮鳴り」を読んでいるが、さらに、第4弾「秋霜」、第5弾「草笛物語」が有り、引き続き読んでみたいと思っているところだ。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
(一)~(三十)
解説 「”鬼”の生きざまを通して”正義”を問う快作 作家 澤田瞳子

▢主な登場人物
多聞隼人(たもんはやと、鬼隼人)、吉村庄助、半平、
佐野七右衛門(さのしちえもん、人食い七右衛門)、
千々岩臥雲(ちぢいわがうん、大蛇(おろち))、
楓(かえで)、弥々、
太吉・おりう、善太、幸(こう
玄鬼坊(げんきぼう)、鉄五郎、
三浦兼清(みうらかねきよ、羽根藩藩主)、飯沢長左衛門(羽根藩元筆頭家老)、

塩谷勘右衛門(羽根藩筆頭家老)、石田弥五郎(羽根藩郡奉行)、飯沢清右衛門(羽根藩次席家老)、
白木立斎(しらきりっさい
播磨屋弥右衛門(博多の豪商)


▢あらすじ等
本書は、著者創造の架空の小藩豊後羽根藩を舞台にした長編時代小説「羽根藩シリーズ」の第3弾の作品ではあるが、第1弾、第2弾の作品とは、時代も登場人物も異なり、継続性は薄く、単独の小説として読める作品だと思われる。
本書の主人公は、浪人の身から、莫大な借金の返済が出来ていない羽根藩に召し抱えられ、藩の家老にまで出世した多聞隼人。
秘めた大願成就?を果たすために、藩政を壟断(ろうだん)する新参者隼人は、鬼隼人と呼ばれ、藩の旧態勢力にとっては邪魔者であり、これを陥れ、排除しようと、断行する黒菱沼干拓工事の妨害したり、刺客を放ったり、百姓一揆を煽ったり・・・、二重三重に謀略の糸が張りめぐらせる。
一方で、欅屋敷に住む佳人楓(かえで)と隼人との関係は?
白金屋太吉が女房おりうを隼人の屋敷に送り込んだ理由とは?
15年前、浪人隼人が、羽根藩に召し抱えられた出来事の真相は?
謎が絡まって、圧倒的なサスペンスが満喫出来る。
常識的な手段では、成し遂げることが出来ないことを成すために、鬼隼人、人食い七右衛門、大蛇臥雲の三悪人は、覚悟を決め、壮絶なクライマックスを迎える。
隼人が言う。
   「わたしは、悪人とはおのれで何ひとつなさず、何も作らず、ひとの悪しきを謗り、
   自らを正しいとする者のことだと思っている」

美辞麗句を並べながら、具体的な政策を示さない旧態勢力と、金も名誉も求めず、真意を理解されることも求めず、ひたすら己の信じる正義を貫こうとした隼人の生き様、
著者は、本書で、真の悪とは何かを問い掛けているのではないかとも思う。
   「世のひとのためにーーーーー、その思いで多聞様は生きられた方なのです」
   楓もまた目に涙を浮かべてうなずいた。そのとき、遠い雷鳴が聞こえた。
   おりうの目から涙があふれた。

   蒼穹を、春雷がふるわせている。
で終っている。

 


上田秀人著 「武士の職分」

2024年04月14日 11時53分17秒 | 読書記

図書館から借りていた、上田秀人著 江戸役人物語「武士の職分」(角川文庫)を、読み終えた。数年前まで、読書の習慣などまるで無かった爺さん、作家上田秀人についても、その作品についても、ほとんど無知だったが、最近になって、相互フォロワー登録している方のブログで知り、読んでみたい気分になり、先日、初めて、「峠道・鷹の見た風景」を読んだばかりだった。今回も、内容等、事前情報ゼロで、ふっと手を伸ばして借りてきた書だったが、短編、4篇からなる構成で、時代小説というより、江戸時代の幕府の役職で、あまりよく知られていないような役職について、具体的な事例で解説している風な作品だった。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
 変わった役職についてのまえがき
 第一章 表御番医師の章、あとがき
 第二章 奥右筆の章、あとがき
 第三章 目付の章、あとがき
 第四章 小納戸の章、あとがき

◯「表御番医師」とは、
 江戸城内で発生する傷害事故等に携わる町医者。
 世襲を旨とする幕府が、唯一実力主義を徹底した医師のこと。
 矢切良衛、お城坊主、土井縫殿助利意、吉佐鶏庵、 
◯「奥右筆」とは、
 大名、旗本等の届け出や陳情等を、裁量出来る役職で、
 大名、旗本は、敵に回すことを最も恐れた役職。
 江田参左衛門、
◯「目付」とは、
 大名、旗本の非違観察や、江戸城中の安穏を守る役職。旗本の俊英が選ばれる。
 公正厳粛、清廉潔白、親兄弟であろうと罪を暴き、なりふりかまわぬ手柄を求めた役職。
 多田朔馬、美保、左兵衛、
◯「小納戸」とは、
 「若年寄」の支配下で、将軍の身の回りの世話をする役職。
 身分は低いが、出世する可能性が大で、人が羨む役職だが、
 将軍に嫌われて、
お手討ちもありえた。
 柳沢保明、堀田筑前守正俊、徳川綱吉、桂昌院、亮賢、稲葉石見守正休、大久保加賀守忠朝、

これまで読んできた時代小説にも、随所に登場している江戸時代の役職名であり、なんとなくその職分について、分かっているような気がしていたが、著者が、新たな観点と筆致で、その職分の在り方、武士、役人達の熾烈な競争、闘い、宮仕えの真髄を描いている。





    



葉室麟著 「風かおる」

2024年04月09日 17時02分39秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「風かおる」(幻冬舎)を、読み終えた。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


               

▢目次
(一)~(二十六)

▢主な登場人物
佐久良亮(さくらりょう)・菜摘(なつみ、佐久良亮の妻、23歳、渡辺半兵衛の三女
千沙(ちさ、稲葉照庵の次女、16歳、男装の美少女
渡辺誠之助(渡辺半兵衛の次男、菜摘の弟、18歳
嘉村吉衛(かむらきちえ)・多佳(たか)、
竹内佐十郎・松江、河合源五郎、
峰次郎右衛門(勘定奉行)、佐竹陣内(郡奉行)、高瀬孫大夫(側用人)、
間部暁斎(まなべぎょうさい
田代助兵衛(横目付)、井上庄助(郡方)、
関根寛斎・英太郎、
平田武兵衛(対馬藩長崎聞役最古参

▢あらすじ等
筑前国黒田藩郡方五十石、渡辺半兵衛の三女菜摘は、幼くして、同じ藩の竹内佐十郎松江夫婦のもとに養女に出され育ったが、佐十郎が、「妻敵(めがたき)討ち」のため致仕したことから、離縁され実家に戻され、16歳のときに、鍼灸医の佐久良亮に嫁していた。その養父だった佐十郎が帰藩、10年振りに再会するが、すでに死病に侵され、かつての優しい面影はなく、ひたすら「妻敵討ち」を唆した者との果し合いを望んでいる。養父佐十郎が討たれること明白、治療を施しながら葛藤を覚えた菜摘は、弟誠之助、男装の美少女千沙等と共に、果し合いをやめさせるべく、相手とは誰なのかを探索するが・・・。その佐十郎の元に、果し状が届き、差出し人は、楊梅(やまもも)楊梅とは、いったい何者?、
かって、佐十郎と出世を競った、峰次郎右衛門?、佐竹陣内?、高瀬孫大夫?、なのか?
なぜ、養父佐十郎が、「妻敵討ち」に出なければならなかったのか?。養父の知られざる過去とは?、
嘉村吉衛の無念の死の真相とは?、田代助兵衛を刺殺したのは誰?、多佳の覚悟とは?
なかなか解けない謎、やがて哀しい真実に突き当たる。一連の事件には大きな仕掛けがあり、推理の謎解きも面白く、推理小説のような一面もあるが、
組織の不条理、人間の業と欲、嫉妬、憎しみ、恨み、そして人を信じることの忍耐と苦悩、おのれの背負った罪を知らず生きていく人間が描かれている。
その結末は・・・。哀歓溢れる作品である。
   菜摘は亮を見て怪訝そうに訊いた。
   「どうしたのですか」
   亮はしみじみと言った。
   「いや、皆が長崎に来ると聞いて、なんだかよい風が吹くような気がしたのだ。
   長崎での悲しい出来事を、わたしたちが吹き飛ばしたほうがいいと思う。」

   菜摘は涙が出そうになった。そうなのだ、どのような悲しい思い出も乗り越えて
   いかねばならない。

   風がかおるように生きなければ。
   菜摘は、そう思いつつ中庭に、目を遣った。
   朝方の光があふれる中、風がさわやかに庭木の枝を揺らしている。
佐十郎多佳の死により、事件は一段落し、亮と菜摘の夫婦、菜摘の弟の誠之助、誠之助の恋人、千沙、4人がそろって長崎へ旅立とうというところで、物語は終っている。


上田秀人著 「峠道・鷹の見た風景」

2024年04月05日 21時07分04秒 | 読書記

図書館から借りていた、上田秀人著 「峠道(とうげみち)・鷹の見た風景」(徳間書店)を、読み終えた。数年前まで、読書の習慣などまるで無かった爺さん、作家上田秀人についても、その作品についても、無知だったが、最近になって、相互フォロワー登録している方のブログで知り、読んでみたい気分になり、内容等、事前知識情報ゼロで、今回初めて、手を伸ばした作品だ。読み進める内に、財政破綻寸前、存亡すら怪しかった出羽米沢藩上杉家の藩主となり、後世、名君と謳われた鷹山(ようざん)の生涯を描いた作品であることが分かり、以前読んだことのある、藤沢周平著の「漆の実のみのる国」や「幻にあらず」等の舞台、登場人物、あらすじが、部分的に重複しており、より深読み出来たような気がしている。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


▢目次
第一章 養子
第二章 家督
第三章 抗争
第四章 邁進
第五章 退身

▢主な登場人物
鷹山(ようざん、日向高鍋藩主秋月佐渡守種実の次男松三郎→直丸→米沢藩第九代藩主上杉治憲(はるのり)→中殿
豊の方(琴姫)・顕孝、寛之助、

上杉大炊頭重定(おおいのかみいげさだ、米沢藩第八代藩主→大殿)、延千代、保之助、幸(よし
上杉治広(保之助→喜平次治広→米沢藩第十代藩主→屋形)、
上杉斉定(上杉勝熙(延千代)の嫡男宮松→上杉定祥→米沢藩第十一代藩主)、
妙(たえ、藩士武藤小平太の娘)、
細井平州(儒学者
森平右衛門利真(としざね)、竹俣美作当綱(たけまたみまさかまさつな
千坂高敦、色部政長、芋川縫殿、須田伊豆満主、藁科立沢、
莅戸九郎兵衛義政(のぞきへいくろうよそまさ
第十代将軍徳川家治、第十一代将軍徳川家斉、御三家尾張徳川宗睦(むねちか)、
田沼主殿意次、松平越中守定信、
三谷三九郎、小川屋平四郎、

▢あらすじ等
幼少期に、日向の小藩鍋島藩から、財政破綻寸前、危機存亡に瀕する出羽米沢藩上杉家の養子に迎えられ、財政再建に、生涯、心血を注ぎ、後世、名君と謳われた上杉治憲(うえすぎはるのり・号=鷹山(ようざん))を描いた作品である。
聡明な頭脳と正義感をたぎらせて藩主についた青年期、寵臣の裏切り、相次ぐ災厄、宿老や領民の激しい反発、世継ぎ問題、藩内抗争、晩年までの困難極まる藩政の道だった。藩の金策が行き詰まり、幕府から押し付けられた「お手伝い普請」を回避するためには、どうする?、慣例?、藩主交代が条件?、鷹山の治世は、20年足らずだったが、倒れかけた米沢藩を立て直す端緒を作り、人を育て、大きな功績を残したが、その初志を貫けた背景には愛する者の存在があったのだった。

「なせば成る。為さねば成らぬ何事も。成らぬは人の為さぬなりけり」
鷹山の精神は、その後の米沢藩主に受け継がれたばかりでなく、後世、連合艦隊司令長官山本五十六、アメリカのケネディ大統領にも影響を与えたのだという。
名君が、いかにして名君たりえたか。知られざるその素顔と生涯に迫る感動の本格的歴史時代小説である。
これまで読んできた時代小説には、戦国時代物も多いが、同じような題材であっても、作者によって、捉え方、描き方がさまざまに異なるからまた面白い。越後の雄、上杉謙信の流れを踏む、米沢藩上杉家を描いた作品も何冊か読んでいるような気がする。
豊臣時代、五大老の一人でも有った上杉家、上杉景勝。徳川家康に反発したがため、敗軍側となり、徳川時代、所領を、120万石から30万石(四分の一)に減らされ、出羽米沢に移封されてしまった。にもかかわらず、家臣を大切にする家風を守ったこともあって、藩の財政は窮乏を極めるが、倹約、節約、殖産・・・、長い年月を掛けて、困難を克服し、財政再建を果たしていく筋書きが主で、感動的でもある。


振り返り記事
藤沢周平著 「漆の実のみのる国」
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振り返り記事
藤沢周平著 「幻にあらず」
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