足腰大丈夫な内に、出来る限り不要雑物整理をしようと決心してから久しいが、正直あまり捗っていない。書棚や天袋、押入れ等に詰め込まれていた古い書籍や辞書、百科事典等の類も、ここ数年間で大胆に整理処分してきたつもりだが、中には、「これ、面白そう?」等と目に止まり、残してしまったものも結構有る。その中のひとつに、多分、長男か次男かが、学生時代に使っていたものに違いない、小町谷照彦著 文英堂の「小倉百人一首」(解説本・参考書)が有る。パラパラとページを捲ってみたところ、なかなか詳しく、分かりやすく、決して、「今更 向学心?」なーんてものではなく、子供の頃、作者や歌意も分からないまま、「けふ、けふ、けふ・・」「なほ、なほ、なほ・・・」等と、正月になると必ず家族でやっていた「百人一首かるた取り」を思い出して懐かしくなってしまったからで、今更になって、「へー!、そういう歌だったのか・・」、目から鱗・・になっているところだ。
「小倉百人一首」は、奈良時代から鎌倉時代初期までの百人の歌人の歌を、藤原定家の美意識により選び抜かれた秀歌であるが、時代が変わっても、日本人の心情が呼び起こされるような気がしてくる。
ブログネタに?、頭の体操に?、いいかも知れない等と思い込んでしまい、2~3年前、「春」、「夏」、「秋」、「冬」、季節を詠んだ歌を取り上げて、ブログ・カテゴリー 「懐かしい小倉百人一首」に書き留めたが、続いて、最も数の多い、「恋」を詠んだ歌を取り上げて、順不同、ボツボツ、書き留めてみることにしている。
しばらく中断していたが、秋も深まりつつある季節、再開することにした。
百人一首で「恋」を詠んだ歌 その35
風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ
くだけて物を 思ふころかな
出典
詞花集(巻七)
歌番号
48
作者
源重之
歌意
風があまりにも激しいので、
岩に打ち当たる波が自分ばかり砕けて散るように
(岩のように冷淡で平気でいるあの人に)
私一人だけが身も心もくだいて(さまざまに思い乱れて)
恋の物思いに悩んでいるこのごろなんですよ
注釈
「風をいたみ」の「・・を・・み」は、「・・が・・なので」と訳す。
「いた」は、激しいこと。「風が激しいので」と訳す。
「岩うつ波の」の「岩」は、相手の平気な様子を想像させる。
「おのれのみ」は、「自分だけ」の意。
「くだけて」の「くだけ」には、波が砕け散ることと、
思い乱れることの両意を込めている。
「物を思ふ」は、恋の悩みの表現として頻繁に使われた。
男一人恋に悩む、片想いのせつなさを歌った作品。
源重之(みなもとのしげゆき)
第56代天皇清和天皇の曾孫。
従五位三河守兼信の子で、伯父参議兼忠の養子となった。
平安中期の歌人。三十六歌仙の一人。
家集に「重之集」が有る。
(蛇足)
川柳
くだけても割れても定家百に入れ
上記源重之の作品と崇徳院の作品を引用し、
砕けたり、割れたりしたものでも、藤原定家は
遠慮することなく、百人一首に入れたという、句意
参照・引用
小町谷照彦著「小倉百人一首」(文英堂)
(つづく)
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