都会に生じた、“絶海の孤島”
* * * * * * * * *
先にこの著者の「千年の黙 異本源氏物語」を読みました。
古典物を書く方かな?と思っていましたが、これはしっかり現代モノです。
ある大学のおんぼろ研究棟が舞台。
夏の午後、急な嵐が到来し、停電が起きてしまいます。
そのためエレベーターは使えなくなり、
非常階段からの出口の扉が、なぜか開かなくなってしまっています。
なんと、都会の真ん中で、
「雪の山荘」や「絶海の孤島」のような、閉鎖空間が出来上がってしまったのです。
となれば、当然そこで起こるのです・・・殺人事件が。
夏休み中のことなので、棟にいたのは僅かな人々。
誰も出入りができないとなれば、当然この中の誰かが犯人。
ミステリ好きの矢上教授(実は非常勤講師)が、この事件の謎を解きます。
夏休み中、閑散としているのだけれど、
レポートの締め切りが迫り焦っている院生とか、
あくまでに研究にいそしむ人、
外部からの来客など、構成員は雑多。
埃っぽくてかび臭くて薄暗そうな雰囲気が、実にうまく現されています。
この研究棟は主に生物総合学部で占められており、
生物に関わる話が出てくるのも興味深いところ。
屋上の温室にはバナナが実り、
廊下にはフェレットのケージが置いてあったりする。
何があっても変ではないのが学校というところなのかも。
また、何故かここを訪ねてきた男性の後をつけてきた青年は、
停電のエレベーターに閉じ込められてしまい、
その彼の取る行動がとても面白い。
ユーモアめいたその語り口の下で、なかなかシビアな推理が繰り広げられます。
楽しい一作でした。
「矢上教授の午後」森谷明子 祥伝社文庫
満足度★★★☆☆
![]() | 矢上教授の午後 (祥伝社文庫) |
森谷 明子 | |
祥伝社 |
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先にこの著者の「千年の黙 異本源氏物語」を読みました。
古典物を書く方かな?と思っていましたが、これはしっかり現代モノです。
ある大学のおんぼろ研究棟が舞台。
夏の午後、急な嵐が到来し、停電が起きてしまいます。
そのためエレベーターは使えなくなり、
非常階段からの出口の扉が、なぜか開かなくなってしまっています。
なんと、都会の真ん中で、
「雪の山荘」や「絶海の孤島」のような、閉鎖空間が出来上がってしまったのです。
となれば、当然そこで起こるのです・・・殺人事件が。
夏休み中のことなので、棟にいたのは僅かな人々。
誰も出入りができないとなれば、当然この中の誰かが犯人。
ミステリ好きの矢上教授(実は非常勤講師)が、この事件の謎を解きます。
夏休み中、閑散としているのだけれど、
レポートの締め切りが迫り焦っている院生とか、
あくまでに研究にいそしむ人、
外部からの来客など、構成員は雑多。
埃っぽくてかび臭くて薄暗そうな雰囲気が、実にうまく現されています。
この研究棟は主に生物総合学部で占められており、
生物に関わる話が出てくるのも興味深いところ。
屋上の温室にはバナナが実り、
廊下にはフェレットのケージが置いてあったりする。
何があっても変ではないのが学校というところなのかも。
また、何故かここを訪ねてきた男性の後をつけてきた青年は、
停電のエレベーターに閉じ込められてしまい、
その彼の取る行動がとても面白い。
ユーモアめいたその語り口の下で、なかなかシビアな推理が繰り広げられます。
楽しい一作でした。
「矢上教授の午後」森谷明子 祥伝社文庫
満足度★★★☆☆