家族は長距離バスのバスステーション
ミッドナイト・バス (文春文庫) | |
伊吹 有喜 | |
文藝春秋 |
* * * * * * * * * *
故郷に戻り、深夜バスの運転手として働く利一。
子供たちも独立し、恋人との将来を考え始めた矢先、
バスに乗車してきたのは、16年前に別れた妻だった。
会社を辞めた長男、結婚と仕事で揺れる長女。
人生の岐路で、忘れていた傷と向き合う家族たち。
バスの乗客の人間模様を絡めながら、家族の再出発を描いた感動長篇。
* * * * * * * * * *
新潟で深夜バスの運転手として働く利一。
妻とは16年前に離婚し、長男、長女ともにすでに家を出ています。
そろそろ恋人との将来を考え始めた矢先に・・・
というところから始まるストーリー。
利一の視点から語られる家族の物語ではありますが、
ときに彼の運転するバスの乗客などにも視点を移しつつ、ストーリーは進行します。
それぞれの登場人物たちが、人生の岐路にたち、
紆余曲折を経ながらもその進むべき道を見出してゆく。
まさに家族は、それぞれの道をゆく長距離バスのバスステーションみたいなものかもしれません。
ほんのひととき、皆が集まった時、
そこでかわされる言葉がとても重要なのですね。
しかるに、私が思うにこの利一さん、あまりにも言葉を飲み込みすぎ。
もっと思ったことは口にしたほうがいい。
いくら思っていても、結局は言葉にしなければ思いは伝わらないのではないかな・・・
そう思って、私はちょっとイライラさせられてしまいました。
そして、別れた妻と恋人との間で揺れる心・・・というのも
ちょっと虫がいいんじゃないかな、と。
両女性の心が、なんだかあまりにも利一に都合よく描かれている気がして・・・。
終わり方については納得なのですが、
登場人物の心情になんとなく納得できない部分が残りました。
長女の現代的なビジネスの展開が、心地よい風を吹かせていました。
<図書館蔵書にて>(単行本)
「ミッドナイト・バス」伊吹有喜 文藝春秋
満足度★★.5