映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

パピヨン

2019年07月04日 | 映画(は行)

そして男は、断崖絶壁から眼下の大海原へ飛び込んだ

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1973年「パピヨン」のリメイク。
実話に基づく物語で、当時の主演はスティーブ・マックウィーンにダスティン・ホフマン。
・・・残念ながら見ていません。面目ない。
今度機会があれば・・・。

 

1931年パリ。
胸元に蝶の刺青があることからパピヨンと呼ばれている金庫破りの男(チャーリー・ハナム)。
彼は、身に覚えのない殺人の罪で終身刑を言い渡され、
当時仏領である南米ギアナの絶海の孤島にある刑務所へ送られてしまいます。
過酷な強制労働や横暴な看守たち。
生と死が紙一重の世界です。
パピヨンは脱獄を決意。
紙幣偽造の罪を犯したドガ(ラミ・マレック)を守ることと引き換えに、
逃亡の費用を稼ごうとします。

 

なんといってもこの、パピヨンの飽くなき自由への希求。
その意志の強さとそれを支える強靭な肉体、
総てが心を打ちます。



よくぞ乗り切ったと思うのが、独房での年月。
彼は脱獄を試みるもことごとく失敗してしまうのです。
その罰則として、独房に入れられる。
はじめは2年。その次には5年。
狭い独房に押し込められ、誰と話すこともできなくて、粗末な食事・・・。
ここで気がおかしくならないほうがおかしいと思うのですが、
彼はそれを耐え抜きます。
責任者が思わず訪ねてしまいます。
「何を希望にして、生き延びたのか」と。
本作中ではパピヨンはそれを語りません。
彼は何を希望と信じて、気の遠くなるような一人きりの毎日を耐えていたのか。


もともと彼は負わされた罪については無実だったのですよね。
こんな理不尽な仕打ちに耐えられないという自負。
生き延びてこんな監獄から抜け出し、自由になることこそが復讐であり、
自らの生きる意義と思ったのかもしれません。



また、彼とドガとははじめは単にギブアンドテイクの金銭上のつながりだったわけです。
(監獄の中でお金のやり取りがあるというのがそもそも信じがたいですけれど・・・)
けれどドガはいかにもひ弱そうで、ほおっておけばすぐに荒くれどもの餌食になってしまいそうだと、
パピヨンにはわかります。
しかしまた、頭は良さそうで、作戦を練るには悪くない相手だとも。
そんな二人の関係が次第に強い友情に変わっていきます。
ついにドガを売ることのなかったパピヨンもすごい・・・。
結局脱獄成功までには13年を要したという・・・。
物語の中以上に実際の人間は強いのかもしれない。
ただしやはり、誰もがそうではないですね。

チャーリー・ハナムが筋肉を保ちながらも次第に痩せこけていく様が見事。
役者さんは大変だなあ・・・。
そして歌わない(歌うフリのない?)ラミ・マレックもステキでした。

<シアターキノにて>
2017年/アメリカ・セルビア・モンテネグロ・マルタ/133分
監督:マイケル・ノアー
出演:チャーリー・ハナム、ラミ・マレック、イブ・ヒューソン、ローラン・モラー、トミー・フラナガン

過酷度★★★★★
友情度★★★★★
満足度★★★★☆