女性の自立に向けて
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インド、ムンバイ。
農村出身のラトナは、ファッションデザイナーを夢見ながら、メイドとして働いています。
建設会社御曹司・アシュヴィンの新婚家庭で、住み込みのメイドとして働く予定だったのです。
ところが、婚約者の浮気が発覚して、破談。
傷心のアシュヴィンを気遣いながら、身の回りの世話をすることになったラトナ。
ラトナは日中の空いた時間に、仕立屋に行って裁縫を習うことの許可をアシュヴィンに願い出ます。
ラトナは結婚まもなく夫を亡くし、若くして未亡人になってしまったのです。
しかしインドの田舎では未亡人は厄介者扱い。
まるで口減らしのように、嫁ぎ先を追われて都会に出てきたのです。
しかし彼女はこれをチャンスととらえ、
なんとかファッションデザイナーへの道を開こうとしているわけです。
でも女性が自立しようとするのは、特に、彼女のような身分では非常に特異なことなのですね。
さて一方、アシュヴィンはアメリカで生活していた期間があるのです。
アメリカの自由な風潮を知っていたし、インドの外からインドを客観視もしていた。
だから、ラトナを応援する気持ちが芽生えたのですね。
それでなくとも、一つの家に年頃の男女が同居していたら、身分の差なんて言っていられません。
何かが起こる可能性は大きい・・・。
でも、二人の気持ちが通い合うようになってからも、
ラトナはアシュヴィンを「旦那様」としか呼べません。
名前を呼ぶなどと畏れ多い・・・そんな気持ちを拭い去れないのです。
そして、周りの人々の反応を思えば決して二人の気持ちをあからさまにすることはできない・・・。
都会の人々の暮らしはかなり近代化されているわけですが、
人々の気持ちはまだまだ古い習慣にとらわれたままですね。
そんな中ではラトナは恋の成就よりもまず、自分の生活の自立を優先させなければなりません。
でもそういう彼女の心意気が実に爽やかに胸に響くのでした。
ラトナがアシュヴィンを名前で呼ぶとき、
初めて二人が対等な関係になれると言うことですね。
<シアターキノにて>
「あなたの名前を呼べたなら」
2018年/インド・フランス/99分
出演:ティロタマ・ショーム、ビベーク・ゴーンバル、ギータンジャリ・クルカルニ、ラウル・ボラ
インドの前近代化度★★★★☆
満足度★★★★☆