東京大空襲を生き抜け!
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不死鳥少年 アンディ・タケシの東京大空襲 |
石田 衣良 | |
毎日新聞出版 |
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父の国の大空襲から母を守り、炎の夜を生き延びろ!
“アンダイング=不死身”とあだ名をつけられた日系二世の少年・時田武14歳。
母・君代と家族を率いて、炎そのものとなった街を駆ける。
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石田衣良さんの東京大空襲を描く力作。
といってもそこが石田衣良氏なので、普通の戦争物とはひと味違う。
多少SF的展開ではあるのですが、だからといって東京大空襲の記述が絵空事ではなく、
震えが来るほどのリアリティを持って迫ってきます。
主人公タケシは、1945年を生きる中学生14歳。
日本人母とアメリカ人父の間に生まれたハーフです。
タケシと母はアメリカのシアトルで、父・姉も含めて4人で暮らしていたのですが
日米間の関係悪化につれて、日本人に対する差別がひどくなったため、
ひとまず母と、見た目が日本人に近いタケシが日本に来ていたのでした。
しかし、アメリカとのハーフであることでやはりここでも、
タケシに対しての偏見と蔑視があったのでした。
それでもタケシはよき友人に囲まれ、いとこの登美子とも心を通わせ、
「日本男児」としてけなげに生きています。
そんな3月10日未明。
焼夷弾等を積んだ米軍機B29の大群が東京に押し寄せます。
タケシはともに暮らす女性4人、老人1人、子供一人を引き連れ、
燃えさかる炎の町を決死の覚悟で安全な場所を求めて突き進みます・・・。
雨のようにバラバラと降ってくる焼夷弾。
町は濡らした防空頭巾がすぐにカラカラになってしまうくらい熱気に満ちています。
逃げ惑う人々。
行く手を塞ぐ炎の壁。
ときおり襲う火の竜巻。
命を奪う黒い煙・・・。
読みながらも恐れおののいてしまいました。
絶対に家族を守り抜くと誓ったタケシは、壮絶な体験をすることになるのです・・・。
著者は、以前著者のお母さんから聞いた東京大空襲の体験談を、
いつか小説にまとめたいと思っていたそうで、それを実現した本となっています。
後書きでは
「願わくば、この作品が主人公と同じ14歳の少年少女に広く読まれますように。」
と書いています。
本当に、少年少女にはとっつきやすいストーリーでもありますので、
私も、そう願ってやみません。
図書館蔵書にて
「不死鳥少年 アンディ・タケシの東京大空襲」石田衣良 毎日新聞出版
満足度★★★★★