映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

九十歳。何がめでたい

2024年07月09日 | 映画(か行)

辛口で生き抜こう

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作家、佐藤愛子さんによるベストセラーエッセイを映画化したもの。
その佐藤愛子さん役を、御年90歳の草笛光子さんが演じるという、ナイスな作品です。

 

数々の文学賞を受賞してきた作家・佐藤愛子(草笛光子)。
90歳を過ぎた今、断筆宣言をして書くことをやめ、人付き合いもすっかり減っています。
しかしそうなるとなんともやる気が出ず、鬱々と過ごす日々・・・。

そんなところへ、中年のさえない編集者・吉川(唐沢寿明)が、
エッセイの執筆依頼を持ち込んできます。
生きづらい世の中への怒りや歯に衣着せぬ物言いで、エッセイ本は思いがけず大反響。
愛子さんも気力を取り戻していきます。

 

年齢を理由に仕事を引退。
忙しく働いているときに、それはほとんど夢ではあるのですが、
いざ、それが実現すると他にすることがないことに気づく。
・・・まあ、そんなものでしょう。
そして、そうなると次第に人とも会わなくなる。

まさに、長生きはめでたいと人は言うけれど、何がめでたいのか・・・。

健康で生きるためには、何かすべきことが必要なんですね。
それと人とのふれあいが。

分ってはいるけれど、実際90歳にもなったら知人はすでにいなくなってしまっているかも知れないし、
いたとしても会いに行ったり来たりするのも大変になってくる・・・。
それで言うとやっぱりこの佐藤愛子さんは、ラッキーなのかも知れません。

ところで、佐藤愛子さんは現在100歳とのこと。
今時、そうめずらしい話ではありませんが、
元気で100歳を迎えるためのロールモデルではありますね。

歯に衣着せぬ物言い。
私もそんな、ちょっと口の悪い辛口婆さんになりたい!
(すでにそうだったりして・・・)

編集者の吉川は、編集者の中でも昭和の香りを多分に引きずっていて、
仕事一筋なので家族には見放され、
会社ではパワハラで閑職に回されるというさえない男。
けれどベテランなのは間違いなく、小説家の心を動かす術をよく知っていらっしゃる。
まあ、そんな彼も、愛子さんと長くタックを組む内に、
人間として成長していくようです。

良きかな。

 

<シネマフロンティアにて>

「九十歳。何がめでたい」

2024念/日本/99分

監督:前田哲

原作:佐藤愛子

脚本:大島里美

出演:草笛光子、唐沢寿明、藤間爽子、片岡千之助、宮野真守、三谷幸喜、オダギリジョー

 

ユーモア度★★★★☆

満足度★★★★☆