映画と本の『たんぽぽ館』

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春を背負って

2014年06月19日 | 映画(は行)
「逃げ」でもアリだ!



* * * * * * * * * *

木村大作監督による、「剣岳点の記」に次ぐ山岳映画。
立山連峰にある山小屋を営む家族と、
そこに集う人々の人生や交流を描きます。



亨(松山ケンイチ)は、外資系投資銀行のトレーダーとして勤務をしていますが、
父の訃報を受け、郷里に帰省します。
彼の実家は母が民宿を営み、父は山小屋を運営。
しかしその父が亡くなり、山小屋は手放さなければならないだろうということになるのですが、
そこで亨は大きな決断をします。
会社をやめて、自分が山小屋を継ぐというのです。


ストーリーの流れを見る限り、
どうもこれは彼の「逃げ」であるようにも見受けられるのです。
大金を動かす仕事に虚しさを覚えていたのは事実。
そのような「逃げ」の姿勢で大丈夫なのかな? 
見る側にも一抹の不安がよぎりますが・・・。



子供の頃から父に鍛えられて、もちろん山登りの経験はあるのですが、
何しろ長い都会暮らしで、始めのうちは荷物の運搬も危なっかしい。
彼一人だったら、すぐに挫けていたかもしれません。
けれどもそこには彼を支えてくれる人がいました。
亡き父の友人、悟郎(豊川悦司)と、
山中遭難しかけたところを父に救われたという天真爛漫な女性・愛(蒼井優)。
山の広大で美しい自然を背景に、
彼らの手を借りて少しづつ山の生活に馴染み、
新しい人生に立ち向かって行く亨が描かれていきます。

 

「人はみな何かを背負って生きていかなくてはならない。」

「一歩、一歩、確実に。」

山の上ではこういう言葉の数々も、実感を持って迫ってきますねえ。
結局は、「逃げ」でもいいじゃないか。
「逃げ」た先で、新たな自分が発見できて、新しい道がひらけるなら、
大いに「逃げ」もありだな・・・と思う次第。
そういえば、こんなセリフ「銀の匙」の中でも
エゾノーの校長先生が言っていましたねえ。



立山の室堂までは観光で行ったことがあります。
あのあたりだけでも十分素晴らしかったですが、
その先にまた、あのような絶景が広がっているのでしょうね・・・。
山の鮮烈な空気感が感じられる、素敵な作品でした。


イヤそれにしても、トヨエツさんを背負って山を歩くなんて、
すご~く大変そう・・・。
ご苦労様でした!! 松山ケンイチさん!
池松壮亮くんも出演しているのですが、これが関西弁のオニーサン。
しかし、亨に自分の仕事の「責任」自覚させる、大事な役どころでもありました。



「春を背負って」
2014年/日本/116分
監督:木村大作
原作:笹本稜平
出演:松山ケンイチ、豊川悦司、蒼井優、檀ふみ、小林薫、池松壮亮
山の空気感★★★★★
満足度★★★★☆


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