映画と本の『たんぽぽ館』

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岬のマヨイガ

2022年10月08日 | 映画(ま行)

訪れる人を「おもてなし」するマヨイガ

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柏葉幸子さんの同名小説をアニメ化したものです。

岩手県の海沿いの町。
ある事情から家を出た17歳ユイ。
両親を事故で亡くしたショックで声を失った8歳ひより。
この行き場のない二人が、震災の避難所で出会います。
そして、そこへ現れた不思議なおばあちゃん・キワさんと出会い、
岬に建つ古民家「マヨイガ」で暮らすことに。

「マヨイガ」とは、 “訪れた人をもてなす”という岩手県に伝わる伝説の家。
マヨイガとキワさんの温もりに触れて、二人の傷ついた心は解きほぐされていきます。
そんな頃に、「ふしぎっと」と呼ばれる奇妙な妖怪達がキワさんを訪ねてやって来ます。
なにか、大きな災いがこの町に迫っているらしい・・・。

 

海を見おろす断崖の上に立つこの古民家。
見かけはいかにも古めかしいけれど、中はおしゃれで使いやすいようにリノベされています。
眠くなるとすでに部屋には布団が敷いてあったり、
水が飲みたいと思えばコップに水が用意されていたり。
できすぎでは?と思うほどに気の利く、おもてなし精神にあふれた家。
なんだかこちらの精神が堕落してしまいそうですが、
おそらくそういう人にはこの家は見えないのかも。
真面目で一生懸命で、それなのに報われずつらい目にあっている、
そういう人にこそ出現する癒やしの家なのかも知れません。

このようなことに熟知し、古来の妖怪達とも親しく行き来するキワさんは、
和製の「魔女」とでも言うべき存在なのでしょう。
その声が大竹しのぶさんというのも、雰囲気ピッタリです。

彼女の語る「言い伝え」のパーツのアニメが、
迫力に満ちていて素晴らしかった!!

さて、そんな伝承の中で語られていた恐ろしい怪物が、
今、蘇ろうとしていることが分かってきます。
その怪物は、人々の不安や哀しみ、苦しみを飲み込んで成長していくという。
この大震災直後の岩手で、怪物のエサとなるものはいくらでもある・・・。
この筋立てには大いに納得させられます。

また本作が遠野のある岩手県を舞台としていることにも意味があって、
とても奥深い物語になっています。

ユイはこんなマヨイガの楽ちん生活に埋没せず、すぐにバイトを探して働き始めるし、
言葉を発することができないひよりちゃんをいじめる子どもたちも登場しない。
こうしたいわば定石を外したストーリーが、私には実に心地よく感じました。

一見の価値ありのアニメです。

<WOWOW視聴にて>

「岬のマヨイガ」

2021年/日本/105分

監督:川面真也

原作:柏葉幸子

出演(声):芦田愛菜、粟野咲莉、伊達みきお、宮澤たけし、大竹しのぶ

 

伝承の日本度★★★★★

満足度★★★★★

 



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