こんなの、アリ?
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小説家を志して実家を飛び出し、生駒山麓のアパートに籠もっていた「私」は
寺の参道で謎めいた女性に出会う。
その女性は万巻の書物に囲まれて暮らしていたが、厳しい読み手でもあった。
私は彼女に認められたい一心で小説を書き続けるが……(表題作)。
斑鳩の里に現れたひとりの青年、ベトナム戦争からの帰還兵ランボーは、
己を戦場へ押しやった蘇我氏への復讐を胸に秘めていた(「ランボー怒りの改新」)。
奈良を舞台に繰り広げられるロマンと奇想に満ちた4篇。
本書を発表したのち沈黙を続ける鬼才の唯一の著作。
仁木英之による解説、森見登美彦との対談を収録。
(『ランボー怒りの改新』改題)
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なんとも奇異な本であります。
紹介文で「本書を発表したのち沈黙を続ける鬼才の唯一の著作」とありますので、
実に、この著者の本が読めるのはこの本だけ。
4篇の短編からなります。
はじめの「佐伯さんと男子たち1933」は、3人の少年達が、
憧れの少女「佐伯さん」に告白をして撃沈すると言う話。
舞台が奈良で、その文体も、知る人なら必ず気づくと思われる「森見登美彦」調なのであります。
3人のアホっぽい少年たちと、どこか周囲から超越した感じのある美少女
という取り合わせも、やはりそれっぽい。
絶対この著者は森見登美彦さんに影響を受けたのだろうなあと思わせます。
ところが次の「ランボー怒りの改新」で、ビックリ。
なんと舞台は大化の改新。
そこへ、ベトナム帰りの「ランボー」が乱入するという、
時代考証もあったものではないハチャメチャな展開。
しかしそうでありながら、大化の改新の筋立ては歴史通りで、
ランボーもいかにもあのランボーでしかあり得ない行動を取るという・・・。
こんなのアリ・・・??と、驚きあきれてしまうのです。
つまりはユニークこの上なくて、
これを読んで悔しく思う小説家さんも多いのではないかと思いました。
そして次の「ナラビアン・ナイト」。
奈良を舞台として、あの「アラビアン・ナイト」が繰り広げられます。
でもまあ、先のストーリーを読んだあとなら、さほどの驚きはありません。
そしてラスト「満月と近鉄」。
小説家になりたいと思う畳屋の息子の青年が、
小説を紡ぐのに悪戦苦闘するストーリー。
ここでもまたうならされてしまうのは、
つまり前3作が本作の布石であったというところで・・・。
やられた~と思います。
この文庫では巻末で森見登美彦氏との対談も収録されていて、
実に貴重な本となっています。
実際に畳屋さんを継いだという著者、前野ひろみちさんですが、
ぜひまた、新たな物語に挑戦していただきたいです。
「満月と近鉄」前野ひろみち 角川文庫
満足度★★★★☆
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