作家の聖地
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中島佳加代子(のん)は、とある出版社の新人賞を受賞したものの、
大物作家・東十条(滝藤賢一)から酷評を受けてしまいます。
そのために、デビュー作も出せず、小説を発表する場すら得られなくなってしまいました。
そんなある日、加代子は憧れの「山の上ホテル」に宿泊し、
一人前の作家気分を味わうことに。
その時、あの憎き東十条が上階に宿泊していることを知ります。
東十条は明日が締め切りの小説を仕上げるために宿泊しているのです。
加代子は、策を巡らして東十条の執筆を邪魔し、
文芸誌の原稿を落とさせることに成功しますが・・・。
文壇への返り咲きを狙う加代子と、
彼女に原稿を落とされたことを恨む東十条の、因縁の対決が始まります。
えーと、まずこの「山の上ホテル」のこと。
東京都千代田区神田駿河台に実在します(現在は休業中)。
本館は1937年ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計により、
佐藤振興生活館として建てられ、1954年にホテルが開業。
神田という出版社の多い地域に近いため、
作家の滞在やカンヅメによく使われたとのこと。
川端康成、三島由紀夫、池波正太郎・・・等々。
つまり、作家にとっては聖地なんですね。
それはともかく、文壇の権威である大物作家の一言で、
将来を踏みにじられたと感じている加代子の復讐劇。
・・・と言うと何やらドロドロしていますが、
本作はユーモアたっぷり、コミカルに進行していくのでご安心を。
そこはやはり、茫洋としながらも芯の強い感じ、のんさんにぴったりの役です。
加代子担当の編集者は、加代子の大学時代の先輩でもある遠藤(田中圭)。
東十条担当でもあるので、冷静中立のようでいて、
ちょっぴり加代子に加担しているのがステキ。
とぼけているようで、さすが業界の権威で百戦錬磨、
したたかでもある大物作家・東十条も滝藤賢一さんも、はまり役。
また、橋本愛さんが書店員役で、のんさんとのツーショットは、やはり感慨深い。
楽しめて余韻が残る、ステキな作品です。
<シネマフロンティアにて>
「私にふさわしいホテル」
2024年/日本/98分
監督:堤幸彦
原作:柚木麻子
脚本:川尻恵太
出演:のん、田中圭、滝藤賢一、田中みな実、橋本愛
文壇の闇度★★★☆☆
バイタリティー度★★★★★
満足度★★★★☆
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