映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ほろにがいカラダ 桜ハウス」 藤堂志津子

2012年06月29日 | 本(その他)
群れない女たちの“城”

ほろにがいカラダ 桜ハウス (桜ハウス) (集英社文庫)
藤堂 志津子
集英社


* * * * * * * * * 

藤堂志津子さん、"桜ハウス"シリーズの第3弾。
・・・あれ? 
第一弾は面白く読んだ覚えがあるのですが、
もしかすると第2弾は読み逃していたかも知れません。


かつて"桜ハウス"でルームシェアしていた女たちの、その後のストーリー。
一番初めのところからは15年ほど経っています。

市役所に勤める独身の蝶子50歳。

シングルマザーの遠望子45歳、

離婚ほやほやの綾音40歳、

独身生活を楽しむバツイチの真咲35歳。


性格も年齢もまちまちの彼女たちが、
お互いの生活を認めながら、時には集まってその時々の愚痴やらなにやらを語り合う。
巻末の解説で吉田伸子氏が述べていますが、
彼女たちが"群れない"のがいい。
女同士の付き合いは、親密過ぎて息苦しくなってしまうということもありがちです。
そんなところから仲間はずれができたり、
別れればそれっきりになったり・・・。
けれど彼女たちの付き合い具合は、付かず離れず。
お互いに踏み込むべきところとそうでないところの間合いが実にいい。
こんな人達とならルームシェアも悪くない。
以前私は、そうした女たちの城で老後を過ごせたらいいな・・・などと
ちょっぴり憧れていたものですが。
"老後"に限りなく近づいてきた今は、
それはそれでまた様々な問題がありそうで、
単純に憧れてもいられない心境・・・。
(いや、そもそも、それは未亡人になった時の話だし・・・。)


さて、今作はこの4人に順にスポットがあてられた4篇から成っています。
冒頭は、50歳蝶子の「しのぶ恋」。
あまり色恋沙汰には縁がないと思われている蝶子ですが、
実は7年前にわかれた恋人が・・・。
彼には妻子があり、その罪悪感から無理やり終わらせた恋でしたが、
50歳を機にもう一度だけ声が聞きたいと思い電話。
二人の思いはたちまち7年前のように求め合い、燃え上がりますが・・・。
独身で通した蝶子は、今更"結婚"にはこだわらなくなっているのですが、
相手の思いはそうではなかったようで。
7年間心の底に持ち続けた恋の結末はいかに。


それから、巻末の「あのひとの妻」が、鮮烈な印象を残します。
真咲の物語ですが、彼女のところに週に一度通ってくる女性。
なんとそれは彼女が付き合っている人の妻アヤメ。
アヤメは夫と愛人の馴れ初めを
納得の行くまで話を聞きたいと通いつめているのです。
なんとも息詰まる話です・・。
そうしてまでも妻の座を明け渡したくないという執念。
不倫の後ろめたさ故に、それを拒否できない真咲と彼の心境もわからなくはありませんが・・・。
私には全く理解できないアヤメの行動ですが、
それにしてもその情念。
女ながら、強烈に印象に残りました。
そしてその後のこの夫妻のことにも。


「ほろにがいカラダ」藤堂志津子 集英社文庫
満足度★★★☆☆


最新の画像もっと見る

コメントを投稿