矮小から無限大へ
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ある日、少年の頭上でボールが割れた。
強い“意志"の力に守られた少年の謎を探るうち、
テレパス七瀬は、いつしか少年を愛していた。
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筒井康隆さんの七瀬シリーズ第3作にして最終巻。
本作では唐突に七瀬は高校の教務課職員となっています。
前作からの続きの顛末は語られていません。
そしてあのとき親しんだノリオやヘンリーのことも、何も出てこない。
しかしそれには実は理由があって、ラスト近くでそれは明かされます。
七瀬は自分が勤務する高校の生徒・香川智広に異常に興味を覚えるのです。
彼の近辺に不可思議な出来事が起こるらしい・・・。
七瀬はそれが智広自身の力ではなく、
彼を守ろうとする何者か、大きな「意思」の力があるらしいと見当をつけますが・・・。
興味を持つあたりはまだよかったのですが、
後にこの二人は異常なほどの恋愛感情を持つようになります。
そのあたりから、私はちょっと引きました・・・。
エディプスというのはあの、「エディプスコンプレックス」を指します。
つまり、智広はマザコン・・・といってしまうと安っぽすぎるか。
彼の母は彼がまだ幼い頃に失踪してしまっているのですが、
その母はもはや「母」という存在を超えた偉大な何か、
大いなる意思とでも言うべきものに変貌している。
しかしそれでも智広の「母」であることには違いなく、
その、息子へ向ける愛も半端なものではない・・・。
矮小から宇宙ほどの無限大への変幻があまりにも唐突で、
ちょっと私にはついて行けません。
そこがいいと思えるかどうか、そこが好みの分かれ道。
残念ながらシリーズを通して私は七瀬に感情移入ができなくて、
結局あまり好きな作品とは言いがたい・・・。
「エディプスの恋人」筒井康隆 新潮文庫
満足度★★.5
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