家族の元へ帰ることだけを信じて
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辺見じゅんさんのノンフィクション「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」を元にしています。
1945年。
戦後の話。
当時満州にいた日本兵は、ソ連軍によって捕虜となり、
シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に抑留されました。
冬は零下40度にもなる過酷な環境の中、
わずかな食料のみで重い労働を強いられ、命を落とす者が続出。
そんな中で、山本幡男(二宮和也)は、
日本にいる妻(北川景子)や子どもたちの元に必ず帰ることができると信じ、
周囲の人々を励まし続けます。
その仲間思いの行動とまっすぐな信念は、
多くの捕虜達の心に希望の火を灯していきます。
まずは、実話に基づくというところがすごいですね。
山本らは、一度帰国が叶えかけるのですが、
無残にも場所を移してさらに25年の拘束を言い渡されてしまいます。
その絶望はいかに・・・。
結局は、日ソ関係の若干の好転から、
戦後12年で彼らは「ダモイ」(帰国)が叶うことになるのですが、
そこに山本の姿はありません・・・。
極限の状況の下では各々の人間性がむき出しになります。
そこで「卑怯」な行為が露呈したとしても、誰も責めることはできませんよね。
でもそんな中、自らのヒューマニズムを貫き通した山本。
妻と交わした約束「必ず生きて帰る」ことを胸に・・・。
こんな場所で彼らはどんなにか故郷へ帰りたかったことか。
懐かしい家族。温かい家。馴染んだ食べ物・・・。
収容所では幾度も宿舎の点検があり、
文字を書き記した紙などは没収されてしまいます。
それがスパイ行為に繋がることを恐れたのでしょう。
山本は最期に家族へ宛てて書き記した遺書を残したのですが、
そのままでは没収されてしまうことになります。
仲間達はどのようにしてその遺書を山本の家族の元に届けることができたのか。
涙なくして見ることはできません。
本作に登場した黒いワンちゃんにも、たっぷり涙を誘われました。
1945年に私たちは戦争が終わったと思っているわけですが、
こんな風にその傷跡はいつまでも続いているわけです。
現場の者も、彼らを待つ者にも。
国が始めたことなのに、一介の庶民ばかりが苦しみを背負う。
そうは言っても、世界は変わらずに戦争を繰り返すばかり。
むなしくなります。
<シネマフロンティアにて>
「ラーゲリより愛を込めて」
2022年/日本/133分
監督:瀬々敬久
原作:辺見じゅん
出演:二宮和也、北川景子、松坂桃李、中島健人、桐谷健太、安田顕
戦争を考える度★★★★★
望郷度★★★★★
満足度★★★★☆
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