ヒュウゴ、そしてバルサの過去
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『蒼路の旅人』、『天と地の守り人』で暗躍したタルシュ帝国の密偵、ヒュウゴ。
彼は何故、祖国を滅ぼし家族を奪った国に仕えるのか。
謎多きヒュウゴの少年時代を描いた「炎路の旅人」。
そしてバルサは、養父と共に旅を続けるなか、何故、女用心棒として生きる道を選んだのか。
過酷な少女時代を描いた「十五の我には」
―やがてチャグム皇子と出会う二人の十代の頃の物語2編。
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上橋菜穂子さん「守り人」シリーズの外伝となります。
本巻は、タルシュ帝国の密偵・ヒュウゴと、
ジグロと共に旅を続けていた15歳のバルサ、
ふたりの物語が収められています。
ヒュウゴは、ヨゴ皇国の名門の家に生まれます。
しかしタルシュ国侵攻により、ヨゴ皇国はタルシュの支配下となってしまうのです。
その際、ヒュウゴは家族を失い、自身は辛くも生き延びましたが、
身分を明かすことはできず、酒場の下働きをしてなんとか食いつないでいくのでした・・・。
武家としての誇りも何も役には立ちません。
こんな、タルシュを最も憎むはずの彼が、なぜその国に仕えることになったのか・・・。
その壮絶な運命を興味深く読みました。
それは彼が「戦争」の本質を悟ったからなのかもしれません。
「ヨゴ皇国を滅ぼしたのはタルシュではなく、
自分の思惑で動いていた皇族をふくめ、指導者たちかもしれない」
と彼は思うのです。
まさに、そういうことなのだろうなあ・・・。
そして、15歳のバルサ。
最も多感な時期です。
もう自分は大人だと思いたいけれども、まだ未熟。
ジグロの足手まといにはなりたくないと思うのに、
しかしまだ、そうはなれていない。
経験のない自分はまだまだ何もかもが思慮不足・・・と、もどかしく思う。
これまでの物語で、いつもバルサは落ち着いていて思慮深い存在だったので、
こういう成長途上の彼女を見るのはとても喜ばしいのです。
こんな時もあったわけですね・・・。
<図書館蔵書にて>
「炎路を行く者」上橋菜穂子
満足度★★★★☆
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