気が狂いそう、優しい歌が好きで
* * * * * * * * * * * *
ふくだももこさんの小説「えん」と「ブルーハーツを聴いた夜君とキスしてさよなら」を
一つの物語にまとめて映画化。
地方都市-大阪のとある町の高校2年男女による青春群像です。
縁(ゆかり)(松本穂香)の親友、琴子(中田青渚)は彼女のことを「えん」と呼びます。
琴子は自由奔放、授業をサボってはタバコを吸うし彼氏をコロコロ変える。
そしてあるとき琴子は翳りを帯びた業平(小室ぺい)に一目惚れしてしまいます。
一方、純(片山友希)は母が出ていったことひたすら無視する父がイヤで、
東京から転校してきた伊尾(金子大地)と
ショッピングモールのバックヤードの暗い階段で一緒に過ごすことが多くなります。
また、サッカー部キャプテンの岡田(甲斐翔真)は、縁と親しく話をするけれど実は・・・。
本作冒頭で、深夜の住宅地で高校生が自分の父親を殺害するというシーンが流れます。
そして、この高校生6人のストーリーに入っていく。
このうちの幾人かは自分の父親に複雑な感情を抱いている。
私たちは、まさか、この中の誰かが冒頭の「犯人」となるのだろうか・・・と、
そんなイヤな予感に震えながら見ていくことになります。
それほどに彼らは皆、繊細で脆くて危うい・・・。
若さ故の衝動の爆発はどこで起きてもおかしくないようにも思えてしまう。
家と学校と、地域に古くからあるショッピングモール。
彼らの生活はすべてこの範囲内でこと足りてしまいます。
彼らはまるでそこに閉じ込められているように感じてしまうのでしょう。
そして、どうしたって親との関係はギクシャクする年頃でもある。
こんな狭い世界に閉じ込められた気がしているけれど、
実は彼らにとって未来は限りなく広がっているのです。
でも、あまりにも広くて自由だから、選ぶことが恐いし、迷ってしまう。
そんな彼らが、友人たちもまた、もがきながら生きていることを知って、
少しずつ力を得ていく。
ここが「君」と自分の世界のはじまりであることに気づいていく・・・。
ブルーハーツの「人にやさしく」の曲が、とても効果的に使われています。
なんだか勇気のわいてくる曲ですね。
そこへ持って、エンドロールでは松本穂香さんのアカペラ。
癒されます!!
まさに、この映画の締めにふさわしいのでした。
本作中に高校生活ではつきものみたいになってしまっている、
いじめのシーンがないのもポイント高い。
<WOWOW視聴にて>
「君が世界のはじまり」
2020年/日本/115分
監督:ふくだももこ
原作:ふくだももこ
脚本:向井康介
出演:松本穂香、中田青渚、片山友希、金子大地、甲斐翔真、小室ぺい、板橋駿谷
閉塞感★★★★☆
青春度★★★★★
満足度★★★★☆
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます