映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

梅切らぬバカ

2021年11月22日 | 映画(あ行)

いなくてもいい人なんていない

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山田珠子(加賀まりこ)は、古い一軒家で占い業を営み、
自閉症の息子・忠男(塚地武雅)と2人暮らし。
亡き父が昔植えたという庭の梅の木は、忠男にとってはたいせつなもの。
しかしその木の枝が伸びて、私道に大きく張り出してしまっています。

そんなある日、隣家に越してきた里村茂(渡辺いっけい)は、
邪魔な梅の木と予測不能な行動をとる忠男を疎ましく思います。

そして珠子は、自分がいなくなった後のことを考え、
知的障害者が共同生活を送るグループホームに息子を入れることにしますが・・・。

珠子と暮す忠男のこと、グループホームのこと、
町内にはそれを快く思わない人たちが少なからずいて、常に批判的です。
出来ればいなくなって欲しいと思っている。

私たちは、自分と違うよく分からない人のことが恐いのではないでしょうか。
その人がどういう人なのか、特に、暴力を振るったりはしないことをよく知れば、
そうした恐れはかなり改善するはず。
だから本当はもっと交流の機会が多くあればいいのになあ・・・と思ったりします。
本作では隣家の父親はダメだけれど、
奥さんと男の子がフレンドリーでとてもいい感じです。
こんな風にご近所ぐるみで接することが出来ればいいのになあ・・・。

「梅切らぬバカ」というのは、アレですね、
「桜切るバカ、梅切らぬバカ」。
形良く育てるには桜は切らない方がいいし、梅はどんどん切った方がいい。
対象に適切な処置をせよ、ということなのですが・・・。

しかし、植木屋さんが来てここの梅を切ろうとすると、
忠男がまるで自分の身を切られるように痛がるのです。

作中、この木は忠男の父親の象徴というような説明があるのですが、
私はむしろ忠男本人だと思うわけです。
大きくはみ出してじゃまもの扱いされてしまう、ということで。
でもちょっとくらい格好が悪くたって、やっかいだっていいじゃない。
ちゃんと花が咲いて実も付く。

忠男がホームに行ってしまった後の、珠子の落ち込みようもなかなかのものでした。
忠男の世話をするばかりで疲れてしまった、と思っていたけれど、
忠男に生かされていた部分もあったことが分かります。

いなくてもいい人なんていない。
そう実感させられますね。

 

<サツゲキにて>

「梅切らぬバカ」

2021年/日本/77分

監督・脚本:和島香太朗

出演:加賀まりこ、塚地武雅、渡辺いっけい、森口瑤子、斎藤汰鷹

 

問題提起度★★★★☆

満足度★★★★☆

 



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