映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ふたりのマエストロ

2023年09月04日 | 映画(は行)

反発し合う父と息子

* * * * * * * * * * * *

パリの華やかなクラシック音楽界で、それぞれ指揮者として活躍する
父フランソワと息子ドニ。

ある時、フランソワのもとに世界最高峰、ミラノ・スカラ座の
音楽監督就任を依頼する電話があります。
ドニは、ライバルでもある父の成功を素直に喜ぶことができません。
ところが翌日、実は就任を依頼されたのはドニで、
父フランソワへの連絡は誤りだったと分かります。
父に真実を伝えなければならないけれど、なかなかできないドニ・・・。

父と息子の相克を真っ正面から捉えています。
元々このふたり、普段から会話も少なく反発し合う仲。
ドニは父にかわいがってもらった記憶もありません。
まあそもそも父は常に多忙だったというわけで。

長年の努力と自らの感性に誇りを抱くフランソワは、
スカラ座から声がかかったことでようやく報われた、と思ったわけです。
ドニは悔しく思いながらも、その気持ちは分かる。
だからその依頼が間違いで、実は自分こそが当事者と分かったときに、
父の心情を思わずにいられなかった。
どんなにがっかりすることか。
そして、息子に「負け」たことでより傷つくのではないか・・・。

そこがやはり親子なんですね。
常以上に相手を気遣いすぎて、素直に伝えることができない。
そしてそれを隠したことでまた父を傷つけてしまう・・・。

本作、こうした父子のぐちゃぐちゃの感情を、
最後に意外な方法ですくい上げています。

やるもんだね!!
ま、そこがミソの物語。

ドニの息子は、父と祖父のいざこざを見過ぎてイヤになったのか(?)
音楽をたしなみはするものの、音楽家になることは放棄して、
料理人になるといっていました。
ときおりピアノを好きに弾く。
そうした音楽との親しみ方もいいですよね。
こういう若い人の自由さもまたいいなあ・・と思います。

ステキなオーケストラ演奏も楽しめました。

 

<シアターキノにて>

「ふたりのマエストロ」

2022年/フランス/88分

監督:ブリュノ・シッシュ

出演:イバン・アタル、ピエール・アルディティ、ミュウ・ミュウ、キャロライン・アングラード

 

父子の相克度★★★★★

クラシックを楽しむ度★★★★☆

満足度★★★.5



最新の画像もっと見る

コメントを投稿