映画と本の『たんぽぽ館』

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蛇の道

2024年12月27日 | 映画(は行)

復讐の意味

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黒沢清監督が1998年に手がけた同名作品をフランスに舞台を移して、
セルフリメイクしたもの。

 

8歳の娘を何者かに惨殺された父、アルベール・バシュレ(ダミアン・ボナール)。
偶然知り合った精神科医、新島小夜子(柴咲コウ)の助けを借りながら、
犯人を突き止めて、復讐を果たそうとしていました。

2人は、この犯罪がとある財団の児童売買に関係していることを突き止め、関係者を拉致。
しだいに真相が明らかになっていきます・・・。

本作は、人身売買の実態を明らかにして糾弾しようとするものではなくて、
復讐という行為の意味、どこまで人は非情になれるのか、
そういうことを描いています。

本作の復讐者、アルベールと小夜子は、アルベールが主導で協力者が小夜子という風に
一見思えるのですが、でもそうではないことが次第に分ってきます。

首謀者は小夜子。
アルベールは彼女に操られているだけ。
では、この謎めいた精神科医の本当の目的はなんなのか。
そこが問題なのであります。

拉致され、監禁された人を見る彼女の目。
冷たく、まさに「蛇のよう」だと、作中で言われています。
ひたすら感情を抑え、淡々と残酷な仕打ちを仕掛ける。
これがいわゆるサイコパスであるならば、喜悦の表情があっても良さそうだけれど、
彼女は明らかにそれとも違うのです。

けれどこの組織が幼い子どもに対してどんなことをしていたのか、
それが明らかになるにつれて、その報いは受けるべきだという気持ちも湧いてきます。
それはたとえその実行者でなくても、組織の一員としてそのような行為が容認されていた、
そのことの責任でもある・・・。

どこへも持って行き場のない怒りを、関係者の命で贖おうとする。

小夜子は蛇というよりもむしろ鬼なのかも知れません・・・。

<WOWOW視聴にて>

「蛇の道」

2024年/フランス・日本・ベルギー・ルクセンブルグ/113分

監督・脚本:黒沢清

出演:柴咲コウ、ダミアン・ボナール、マチュー・アマルリック、グレゴワール・コラン、西島秀俊、青木崇高

復讐度★★★★★

満足度★★★☆☆

 



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