映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

トラッシュ!この街が輝く日まで

2015年01月16日 | 映画(た行)
正しいと思うことに突き進め!



* * * * * * * * * *

舞台はブラジル・リオデジャネイロ。
ゴミの山からめぼしいものを拾って生活している少年ラファエルが、
ゴミの中から財布を拾います。
その中入っていたのは、
お金、ID、少女の写真、アニマル・ロトのカード、そしてコインロッカーの鍵。
そんな矢先、警察がこの財布を探しにやってきます。
お金ではなく何か重要な秘密が隠されているらしい・・・。
ラファエルは友人のガルド、ラットとともに
この財布に隠された秘密を解き明かそうと奔走を始めます。



普通は落とし物の財布を警察に届ければそれでストーリーはおしまいです。
ところがここがブラジルという場所であるのが問題。
事実そうらしいのですが、
ブラジルの警察は汚職と賄賂にまみれて全く庶民の味方にはなってくれない。
ほとんどマフィアの手先になっていて、こりゃホントたちが悪い。
だから彼らを必死で追うのが警官。
少年たちは自分たちが「正しい」と思うことを、
逃走しつつ、命がけでやりぬこうとします。



彼らの親は全く登場しません。
多分、いないのですね。
まあ、だからこそこんなところで生活しているわけなのでしょう。
そこで、多少なりとも彼らの面倒を見ているのが
アメリカ人のジュリアード神父(マーティン・シーン)と
その娘オリヴィア(ルーニー・マーラ)。
心温まる存在です。
ラットはどうしてもお金が必要な時、
神父さんの引き出しからちょっと「拝借」してしまうのです。
でも後でちゃんと返すんですね。
その時に添えたメッセージがなんとも心憎い。



こんな風にバイタリティあふれる子どもたちの冒険譚は大好きです。
宮崎アニメに出てきそうな少年たち、
アニメでなくて、実写で行ってますものねえ。
そしてまた気持ちが真っ直ぐなのがなんとも、胸が熱くなります。
いまどきの日本にはこんな子どもたちはあまり見かけないですね・・・。
貧しいけれども、元気で、希望があって・・・
こういう子どもたちが将来いい国を作り上げてくれるといいのですけれど。
でも、貧しいとはいえ、やはり現代に生きる子どもたちなのです。
ネットを使いたいときには、こっそり神父さんのパソコンを拝借。
下水管に住んでいて、しかしながらパソコンもゲームもちゃんと持っている
ラット少年もナイス。
ちょっとぼんやりしているようで、でも記憶力は素晴らしい
ガルド少年も好き。
正義感があって賢いラファエル少年ももちろんいい。
そして最後の最後に目を疑う登場人物が・・・! 
突然スピリチュアルなはなしになってしまったのか?と驚きましたが、
そうではなかったのでした。
・・・まあ、私達が騙されてました。



新年早々良い物を見ました。
オススメです!

「トラッシュ!この街が輝く日まで」
2014年/イギリス/114分
監督:スティーブン・ダルドリー
脚本:リチャード・カーティス
出演:リックソン・テベス、エデュアルド・ルイス、ガブリエエル・ウィンスタイン、マーティン・シーン、ルーニー・マーラ

ハラハラ度★★★★☆
子どもたちのバイタリティ★★★★★
満足度★★★★★

「ペコロスの母に会いに行く」 岡野雄一

2015年01月15日 | コミックス
心は自由に漂う

ペコロスの母に会いに行く
岡野 雄一
西日本新聞社


* * * * * * * * * *

母は、人生の重荷を下したかのように、ゆっくりとゆっくりとボケていきました─

62歳、無名の"ハゲちゃびん"漫画家が
施設に暮らす認知症の母との
「可笑しく」も「切ない」日々を綴った
感動のコミックエッセイ!
40歳で故郷長崎にUターンした漫画家(62歳)が、
親の老いを見つめてきた日々の、笑えて、温かくて、どこか切ない家族の物語。
主人公は、認知症と診断され施設に暮らす現在89歳の母。
母が見せる「人生の重荷を下ろしたとびっきりの笑顔」や、
著者のはげた頭を見て名前を思い出すエピソード、
時折つぶやく亡き父との思い出話などを描いたコミックエッセイです。
「忘れること、ボケることは、悪いことばかりじゃないんだ。
母を見ていてそう思った」


* * * * * * * * * *

先日、映画を見て、
やはり原作本の方も見てみたくなってしまいました。
本作はなんといってもこの岡野雄一さんのほんわかした絵が魅力です。
認知症といえば、
こまったこと、あまり表には出したくないこと、悲惨なこと、
そういうマイナーなイメージばかりが先行しますが、
映画にも出てきたこの言葉、
「忘れること、ボケることは、悪いことばかりじゃないんだ。」
そういうことを実感させてくれます。


お母さんは施設にいながら、時を自由に行き来します。
10人姉弟の長女として、子守と野良仕事に明け暮れた若いころ。
酒乱だった夫に耐えた子育て期。
すでに亡くなった人とも自在に交流し、心は自由に漂っている・・・。
ピンピンコロリが理想だと、私も思っていたのですが、
もしかしたらこういうのもありかもしれない。
自身の心はまさに自由・・・。
だってね、まあ人によるかもしれないけれど、
あちこち気を使うばっかりの人生って、なんだか疲れる。
ボケまくってまわりじゅうに迷惑をかけながら、
人生の最後ぐらい自分勝手に生きてみるのもいいかもね・・・。
とは言え、夜中に針も糸も持っていないのに、
縫い物のしぐさをしているお母さんの姿には泣かされます。
こんな時にまで、家族のために何かするということが染み付いてしまっているわけで・・・
私ならどんなにボケても、そういうことはなさそうだ。


基本的には4コマ漫画です。
少しずつ語られるエピソードをつなげて一つの映画を作る、
その映画の脚本にも今さらながらスゴイなあ思いました。

「ペコロスの母に会いに行く」岡野雄一 西日本新聞社
満足度★★★★☆

ペコロスの母に会いに行く

2015年01月14日 | 映画(は行)
ボケるとも悪いことばかりじゃなかかもしれん



* * * * * * * * * *

62歳で漫画家デビューをした岡野雄一氏の介護日記コミックが原作。
ベストセラーなので、このほのぼのしたイラストを目にしたことがある方も多いはず。
かくいう私、本作はまだ見たことがなかったのですが、
先ごろから、我が家で購読している新聞にコミックの定期連載が始まり、
いいなあ・・・と、感じ入った次第。



85歳、認知症の度合いが進行してきた母みつえが、グループホームに入所。
息子ゆういちがホームに通うエピソードが綴られていきます。
時折母は、息子が息子ともわからなくなるのですが、
ゆういちの、はげちゃびんの頭を撫でると、思い出す。



坂の町長崎の風景。
長崎の言葉。
そして長崎の歴史。
この地方色がまた、たまらなく柔らかな雰囲気を醸し出しています。
冬も雪がなくていいなあ・・・と私は思います。
北海道の冬期間の真っ白な風景は、介護生活には寂しすぎる気がします。
実際、外に散歩にも行けず、ひたすら春を待ちわびるのみ。
私自身も、介護施設に入所している父のところへ通う日常で、
本作も大変身にしみます。
だから、あえて原作本も見ていなかったというところもあるのですが、
本作のセリフにもある通り
「ボケるとも悪いことばかりじゃなかかもしれん」
というのも、実感として、そういう面もあるかも知れないと、
このごろ思います。





母みつえの心に断片的に浮かび上がってくるのは、
幼なじみの友人のこと、若き日の夫のこと・・・。
悲しい思い出もあるけれど、多くは楽しかった懐かしい日々。
日々の憂さを忘れて、陽だまりのような懐かしさに包まれて過ごすことは、
ある意味幸せなのかもしれません。
今はすでに亡くなっている人も、まるで今そこにいるかのよう。



本作は認知症の悲惨さとか介護の大変さを訴えているわけではなく、
人として当たり前に来る「老い」に、
当人も周囲の人も、優しく寄り添って過ごそうとする所に、
多くの人が共感を覚えたのだと思います。
ほのぼのした絵にチョッピリ悲哀がにじむ本作、やっぱり読んでみたくなりました。

ペコロスの母に会いに行く 通常版 [DVD]
岩松 了,赤木春恵,原田貴和子,加瀬 亮,竹中直人
TCエンタテインメント


「ペコロスの母に会いに行く」
2013年/日本/113分
監督:森崎東
原作:岡野雄一
出演:岩松了、赤木春恵、原田貴和子、加瀬亮、竹中直人

老いを見つめる度★★★★☆
満足度★★★★☆

ベイマックス

2015年01月13日 | 映画(は行)
このお正月は、“餅マックス”が流行りだったそうで



* * * * * * * * * *

「アナと雪の女王」に次ぐディズニーアニメ。
私は純然たるファンタジーよりも、むしろ現代感覚あふれる本作の方が好みなので、
こちらはちゃんと劇場で見ました。
でも、札幌ではどこも日本語吹き替え版しかありません。
・・・いや、大人だって観るんだからさ、
せめて1館で一日一回でもいいから字幕をやっていて欲しかった。
でもまあ、菅野美穂さんと小泉孝太郎さんの声というのも、楽しめましたけどね。



舞台となるのはサンフランソウキョウという架空の都市ですが、
その名の通りサンフランシスコと東京が合体したような、
東洋風味たっぷりの街。
主人公がヒロで、兄がタダシ。
めちゃくちゃ日本びいきの設定なので、すごく親しみが持てます。



ヒロは14歳の天才少年。
でももう学校へ行っても習うべきことはないと思い、
アンダーグラウンドのロボット格闘技に夢中になっていたりします。
兄のタダシはそんなヒロを見かねて、自身の通う大学にヒロを連れて行きます。
タダシの研究仲間やロボット工学の第一人者キャラハン教授と出会い、
大学で最先端の科学を学ぼうと決意。
しかし、そんな矢先、タダシが事故死。
失意のためやる気をなくしてしまうヒロ。
そんな時、タダシが人々の心と体の健康を守るために開発したケアロボット、
ベイマックスが現れます・・・。



本作、癒し系ロボットのベイマックスが活躍する物語かと思ったのですが、
もともと、「Big Hero 6」というコミックが原作なんですね。
ヒロはベイマックスを戦闘もできるように改造。
(と言うより、戦闘スーツを作成したというべきか)。
兄の研究仲間とともに、ある“巨悪”と戦うことになるのです。
その“巨悪”こそが、兄が亡くなった原因を作った・・・。


ベイマックスを始め、他のメンバーも科学オタク系、
日頃から人と争ったりはしない。
そんな彼らが立ち上がるというところがなかなかいい。
ベイマックスのぷにぷにした質感がいいですよね。
にしてもあそこまで膨らんでいたら、
人を介護するにも身動きしづらそうですけれど・・・。
決して人を傷つける事ができないようにプログラムされているわけだから、
もともと戦闘には向きません。
しかし、自分がヒロの手伝いをすることで、
ヒロの心の健康が取り戻せるのならそれでもいいか・・・という理論で、
あえて戦闘に加わるわけです。



ジェット噴射で空をとぶシーンは、ワクワク感たっぷり。
はい、“クール”です。
そしてまた泣かされるシーンもたっぷり。
タダシが亡くなったあとのシーン、
ヒロの悲しみがモロに伝わって、ほんと、こちらの胸まで傷んできました。
そしてラストですね。
ベイマックスとの別れのシーン・・・。
いや、でも、ディズニーアニメなので、ちゃんと嬉しいオチもあるのでご安心を。
私達の世界にとても近い“別世界”を堪能しました。


「ベイマックス」
2014年/アメリカ/102分
監督:ドン・ホール、クリス・ウィリアムズ
脚本:ロバート・レ・ベアード
声(日本語吹き替え版):川島得愛、本城雄太郎、菅野美穂、小泉孝太郎

ワクワク度★★★★☆
お涙度★★★★☆
満足度★★★★☆

おまけ

我が家の“餅マックス”

美しい絵の崩壊

2015年01月12日 | 映画(あ行)
同じく穏やかで美しい背景なのに



* * * * * * * * * *

舞台はオーストラリア東海岸、美しく風光明媚な場所です。
子供の頃からの親友ロズ(ロビン・ライト)とリル(ナオミ・ワッツ)は、
お互いの10代の息子たちも交え、家族ぐるみの付き合いをしています。
清潔で居心地のよさそうなそれぞれそこそこ裕福な家庭。
息子たちは日がなサーフィンに興じ、
母親たちも美しい息子たちを誇りに思う。
いつまでも続くかと思われる、それは確かに美しい一枚の絵でした。
ある夏、ロズに思いを寄せていたリルの息子イアン(ゼイビア・サミュエル)が彼女に迫り、
一線を越えてしまいます。
しかしその秘密を知ったロズの息子トム(ジェームズ・フレッシュビル)もまた、
リルと関係を持ってしまいます。
2組の母と息子の人知れない関係が続きますが、
やがてトムはシドニーに出ることになり・・・。
危ういバランスが少しずつ崩れ始めるのです・・・・。



本作、原題は「Two Mothers」と素っ気ないのですが、
「美しい絵の崩壊」と邦題をつけた方には敬意を表したいと思います。
ただいるだけで、周囲から憧れの目で見られそうな美しい母親たちと
若く美しいエネルギーに満ちた息子たち。
この美しい構図が、ラストシーンで確かに「崩壊」しているのです。
それは同じく彼ら4人のショットであるにもかかわらず。



10代の若者が美しく熟れた身近な女性に興味をそそられるのは
しかたのないことかも知れません。
はじめに手を出したイアンについては、それはわかる。
でもよく分からなかったのは、トムの気持ちなんですね。
なんだか母親を奪われたはらいせでリルに迫ったようにも思われる。
しかも、彼は貞操観念なんてものもなくいい加減な奴でもあった。
こういうのが一番手におえないのですが、
いや、実は大抵の人がこっちの方なのかもしれません。
なんと厄介な男女の愛と性。
穏やかな海辺の風景の中での情痴沙汰が、
まるで皮肉のようです。
何もなければないで、それはまだ美しい絵のままであったのかもかも知れません。
けれど、生きていく私達は、変わらずにいられないものでもありますね・・・。



美しい絵の崩壊 [DVD]
ナオミ・ワッツ,ロビン・ライト,ゼイヴィア・サミュエル,ジェームズ・フレッシュヴィル,ベン・メンデルソーン
ビデオメーカー


「美しい絵の崩壊」
監督:アンヌ・フォンテーヌ
出演:ナオミ・ワッツ、ロビン・ライト、ゼイビア・サミュエル、ジェームズ・フレッシュビル、ベン・ネンデルソーン
危うい美しさ★★★★★
満足度★★★★☆

「儀式 上・下」 パトリシア・コーンウェル 

2015年01月11日 | 本(ミステリ)
真の敵はFBI?

儀式(上) (講談社文庫)
池田 真紀子
講談社


儀式(下) (講談社文庫)
池田 真紀子
講談社


* * * * * * * * * *

マサチューセッツ工科大で女子大学院生の変死体が発見された。
遺体を検分したスカーペッタは奇妙な事実に気づく。
全身に粉末状の蛍光物質が蒔かれていたのだ。
夫のベントンはワシントンDC連続殺人事件と同一犯ではないかとにらみ、
問題の粉末は犯人が施した「儀式」の痕と推理する。
真相は何か!?
検屍官シリーズ第21弾(上)


殺された大学院生ゲイルは、投資運用会社ダブルSと係争中だった。
さらに彼女とケイの姪ルーシーはITのエキスパート同士の知人で、
ルーシーは図らずも事件に関わってしまう。
一方、夫のベントンは捜査方針をめぐりFBI内で孤立。
ケイの周辺に暗雲が漂う。
その最(さ)中(なか)、ダブルS社が何者かに襲撃された!(下)


* * * * * * * * * *


毎年年末に新刊が発売されるこの検屍官シリーズ。
私が読むのはたいてい年明けになりますが、
それにしても、前作を読んで、もう1年が過ぎたということです! 
驚いてしまいますね。
なんて時の流れは早いのでしょう・・・。
それと同時に私も加速度的に年をとっているということで・・・。
オソロシイ。


さて、でもスカーペッタはまだまだ、お元気のようです。
というか本作、冒頭から彼女は相当疲れています。
何しろ、学校で前代未聞の大量無差別殺人事件があった直後。
彼女も検屍官としてその現場を見ており、
あまりの無残さに心が折れてしまっていました。
その心の弱まったところにつけ込まれるようにインフルエンザにかかり、
寝込んでいて、ようやく少し回復してきた、
そんな早朝に、仕事の要請が入ります。
クリスマスにはまだ少し早い12月の雨の日。


なんと本作は、最後の後日談を除いてすべて、
この同日に起こったことが順を追って描かれていまして、
全く、いつもながらスカーペッタのタフさには感心させられます。
当人は常にクタクタだと弱音を吐いているのですが、
いやいや、このタフさはルーシーも顔負けでありましょう。


スカーペッタとベントンの住む家のほど近く、マサチューセッツ工科大で、
女子大学院生の変死体が発見されます。
妙にリラックスしたようなポーズを取り、白い布がかけられた死体には、
全身に蛍光物質が蒔かれており、まるで何かの儀式のよう。
そしてこれは、今ベントンが追っているワシントンDCの連続殺人事件と酷似している・・・。
また、この殺された女子大学院生のゲイルはルーシーの知人でもあった。
事件の真相は・・・。


本作、憎むべき犯人はもちろんいるのですが、
それよりも本当の敵の存在が大きいのです。
スカーペッタやベントンは、時として事件の謎よりも、
政府や法曹界、そして自らの組織内の軋轢に悩まされます。
今回の敵はズバリFBI。
ベントンの立場が微妙になっていくのを観るのはつらいものがありますが、
こんな優秀な人を優遇せずにどうするのよ!
といいたくなります。
でも、優秀すぎて、かっこ良すぎて、
まあ、たしかに反感は買うかも・・・とも思います。


マリーノは今回からスカーペッタの元を離れ、警官に復帰! 
まあ本人は相変わらずですが。
でも本作マリーノがいなければ全然味気なくてつまらない話になっちゃいますよね。
しょうもないおじさんだけど、私は好きです。
それから、スカーペッタのオフィスで働くおしゃべりの止まらないブライスも。
また一年後には、マリーノの訓練している犬も、もう少しおりこうになっているかな?

「儀式 上・下」 パトリシア・コーンウェル 講談社文庫
満足度★★★★☆

海月姫

2015年01月10日 | 映画(か行)
ふわふわ、ひらひら



* * * * * * * * * *

どちらかと言うと、私がよく見る邦画とは雰囲気が違うかな?
と自分でも思いつつ・・・、
オタクの女子ばかりが出てくるという設定にちょっと惹かれました。



幼い頃から海月(クラゲ)大好き、
今ではすっかりクラゲオタクの月海(つきみ)(能年玲奈)。
彼女は、男を必要としない人生を目指すオタク女子集団「尼~ず」とともに、
男子禁制のアパート「天水館」で暮らしています。
ある日、ペットショップで知り合った美女を天水館に招くのですが、
実はそれは女装のイケメン男子・蔵之介(菅田将暉)でありました。
そんな時、この天水館が土地再開発による取り壊しの危機に・・・。



彼女たちは男を必要としないというよりも、
すでにもう、男性とお付き合いをするところからして諦めているのです。
たまたま迷いこんでしまった蔵之介は、
別にゲイではないのですが、単に女装が趣味。
普段男子のスタイルでいれば、なにげにモテたりしています。
が、彼は好奇心たっぷりなんですね。
自分を飾らない個性たっぷりの天水館のメンバーたちが面白くて、
つい通ってしまう。
そうですね、彼女らに比べれば同じ大学の女子なんて、
誰も彼もみな同じに見えてしまうかも。
が、本作で面白いのは、
蔵之介は実は総理大臣の息子で、堅物一本槍の兄・修(長谷川博己)がいる。
意外にも月海とこの修が一目惚れ。
どちらも男女交際などしたことがないウブ同士。
内心穏やかでない蔵之介が、
それでも二人のことを思っておせっかいを焼いたりヤキモキしたり・・・。
ということで、普通に楽しめるラブコメなのでした。



でもクラゲは、確かにいいですよね。
ずーっと見ていても飽きない感じで、癒されます。
後段で出てくるファッションショーの衣装がすてきですよ~。
ふわふわひらひら・・・クラゲのイメージがよくできています。
菅田将暉さんがこれを着てサマになる、というのがまたスゴイ!



私は後で出演者を見て驚きましたが、
池脇千鶴さんに篠原ともえさん!? 
尼~ずのメンバーはみな顔を隠すようにしているので、
誰が誰なのやら全然分からなかった・・・。
速水もこみちさんが一人勝ちのようにイイカッコしてました!



2015年1月12日まで渋谷パルコで「海月姫展」をやっているんですってね。
男子禁制なので、男性は「女装」しなければ入場できないそうです。
ユニーク! 
そもそも月海が、「おしゃれ女子」の群に恐れをなして、
ついに入場することができなかったパルコで、というのもイカしていますね。
ドレスの実物は見てみたかったなあ・・
しかし考えてみたら私も月海のことは笑えない。
札幌にもパルコはありますが、
この年で足を踏み入れるのはちょっと勇気がいるんですよね~。
というか、多分もう何年も行っていない・・・。
(そもそも用事ないし)
札幌でも「海月姫展」をパルコでやります、なんてことになったら、
私は、行けるのでしょうか?!

「海月姫」
2014年/日本/126分
監督:川村泰祐
原作:東村アキコ
出演:能年玲奈、菅田将暉、長谷川博己、池脇千鶴、篠原ともえ、速水もこみち

ファッション度★★★★☆
オタク度★★★☆☆
満足度★★★☆☆

サンバ

2015年01月08日 | 映画(さ行)
重い題材をサラリと・・・



* * * * * * * * * *

料理人を目指し、アフリカからフランスに来ていたけれど、
ビザの更新手続きを忘れてしまったことから、
国外退去を命じられた青年、サンバのストーリーです。



拘束されたサンバに救いの手を差し伸べたのは、
移民協力ボランティアのアリス。
実は彼女は仕事に疲れ、鬱を患っていたのですが・・・。
大変困った状況にありながら、
心優しくユーモアを忘れないサンバに、心慰められていくのです。



ビザもなくお金もない、住むところもない・・・
このような移民問題は、アメリカでも顕著ですが、ヨーロッパも同じなんですね。
まさに現代の大きな社会問題を扱いながら、
決して暗すぎたり重すぎたりせず、
ユーモアを持って描かれているところがいい。
だから、「最強のふたり」の監督・主演タッグ再び・・・というわけなのですが。

黒人の大男と障害のあるお金持ち。
黒人の大男と心を病んだ女性。
このシリーズはもうやめたほうがいいです。
2番煎じはやはり2番煎じで、
はじめほどの感動は得られませんでした。
これ以上続けると、オマール・シーの可能性も狭められてしまいます。



とはいえ、楽しいシーンも多くありました。
サンバが高所恐怖症気味なのがいい。
窓ふきとか工事の仕事はちょっと大変そうですが。
彼と友人のユーモアあるやりとりも楽しかった。
女性ばかりのオフィスの窓の外で踊るセクシーなダンス。
揺れるからやめろ!と必死で止めるサンバ。
屋根の上では、「靴を投げろ」と同僚にいわれて、
下に放り投げてしまうサンバ。
サンバよ、アンタは北海道人か・・・と
密かにツッコミを入れてしまいました。
北海道では捨てることを「投げる」というのです。



結局、楽しくはあるけれど、やや凡庸かな・・・?と。

「サンバ」
2014年/フランス/119分
監督:エリック・トレダ、オリビエ・ナカシュ
出演:オマール・シー、シャルロット・ゲンズブール、タハール・ラヒム、イジア・イジュラン

人種を超えた交流★★★★☆
満足度★★★☆☆


「時生」東野圭吾

2015年01月07日 | 本(ミステリ)
時をさかのぼれたら

時生 (講談社文庫)
東野 圭吾
講談社


* * * * * * * * * *

不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、
宮本拓実は妻に、二十年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。
どうしようもない若者だった拓実は、
「トキオ」と名乗る少年と共に、
謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った―。
過去、現在、未来が交錯するベストセラー作家の集大成作品。


* * * * * * * * * *

本作、単行本出初出版された時は「トキオ」とカタカナだったのですが、
文庫化の時に漢字に改題されたのだそうです。
「トキオ」はやっぱりジュリーのイメージが強いからかな?
それでもいいんですけどね。


不治の病で昏々と眠り続ける息子の最期の時が迫っている時、
宮本拓実は妻に20年以上前の記憶を語り始めます。
それはまだ結婚前、親に見捨てられたと思い込み、
ひねくれて何に対しても投げやりだった拓実。
そんな彼の前に「トキオ」と名乗る少年が現れる。
正体不明のこの少年を怪訝に思いながらも、
どこか親しみを感じてしまう拓実は、
トキオともに、何か危ない事件に巻き込まれ行方不明となった
恋人千鶴の行方を探すため、大阪へ向かいます。


泣きたくなってしまうくらいにいい子なんですよね、このトキオくん。
それというのも、彼は両親の愛を一心に受けて育ったからに他なりません。
そう、このトキオこそが、20年後の昏睡状態の拓実の息子であるわけです。
時をさかのぼり、20年前の自分の父親を助けに来たトキオ。
不思議でステキな物語でした。


20年前といっても、本作の初出は2002年。
とすると今から30年以上前が舞台ですね。
だから、パソコンや携帯電話が夢のように語られていたりします。
ほんの30年前には、そういうものがまだ何もなかった。
思えば情報の激変の時代を私達は生きているのですねえ・・・。

「時生」東野圭吾 講談社文庫
満足度★★★☆☆

フルートベール駅で

2015年01月06日 | 映画(は行)
一見の価値あり



* * * * * * * * * *

2009年元旦。
米サンフランシスコのフルートベール駅で、実際に起こったことの映画化です。
3才の娘を持つ22才の黒人青年、オスカー・グラントが、
警官に銃殺された事件。
今またアメリカで同様の事件が波紋を呼んでいるところでもあります。
アメリカの黒人差別や銃社会、問題が大きすぎです。



ここで描かれるオスカー・グラントは、
前科はあるものの、麻薬の売人はやめて、まともな生活をしようと努めています。
母の誕生日にカニを買い、娘と遊ぶ良きパパでもある。
仕事はクビになって、まだ先は見えないけれど、
大晦日の夜、仲間とともにサンフランシスコに花火を見に行って年が明ける。
何かいいことがある年になればいいな・・・
そんな気持ちの時でした。
電車の中で喧嘩をふっかけられて
ちょっとした騒ぎになってしまいます。
たちまち警察が駆けつけて、彼らは無理やり連行されそうになる。
特に誰が怪我をしたというのでもないのに。

状況を説明しようとしたオスカーを何人もの警官が組み伏せ、
そのうちの一人が背中から彼を撃ってしまうのです。
もちろんオスカーは銃など持っていませんでしたし、
仮に持っていても、こんなに何人にも抑えこまれた状況で
銃など発射できるわけがありません。
病院では「殺人事件だ」と言っていましたが、
結局裁判では、撃った警官は「業務上過失致死」にしかならなかったとか。
大勢で賑わっていた駅なので、
その時の生の映像が多く残っていてさえも、この結果。



この事件を例えば新聞で読んだとして、
「へ~、黒人への差別かな。ひどいな。」
と思うくらいなのだと思いますが、
本作で、その名も無き黒人青年の生活を丁寧に描くことにより、
まるで家族が亡くなったような痛みを私達に与えます。

白人の警官から見れば、単なる街のチンピラの一人かもしれないけれど、
家族があって、友人がいて、人生がある。
どんな人だって、まるでゴミのように見捨てられていいわけではないということを
強く訴えています。
この時節柄、一見の価値がある作品です。



フルートベール駅で [DVD]
マイケル・B・ジョーダン,メロニー・ディアス,オクダヴィア・スペンサー,ケヴィン・デュラント,チャド・マイケル・マーレイ
東宝


「フルートベール駅で」
2013年/アメリカ/85分
監督:ライアン・クーグラー
出演:マイケル・B・ジョーダン、オクタビア・スペンサー、メロニー・ディアス、ケビン・デュランド、チャド・マイケル・マーレイ
テーマ性★★★★★
満足度★★★★☆

天才スピヴェット

2015年01月04日 | 映画(た行)
自分にとっての「松の樹」



* * * * * * * * * *

本作のジャン=ピエール・ジュネ監督は、あの「アメリ」の監督さん。
なるほど、あの雰囲気がさらにパワーアップしていました!



米モンタナ州、田舎の牧場で暮らす
10歳少年T・S・スピヴェット(カイル・キャトレット)は、天才少年。
日々科学的観察と考察に明け暮れています。
しかし、この田舎の地で、彼の能力はさして役には立たず、
浮いてしまっているのです。



父は根っからのカウボーイ。
母は昆虫学者(多分彼はお母さんの方の血を濃く受け継いだのですね)。
アイドルになりたい姉。
そして彼の双子の弟は、活動的でワイルド、まさに父親が誇りに思うタイプの息子。
T・Sは、父に好かれる弟が羨ましいのです。
しかしその弟が、ある「事故」で亡くなってしまいます。
悲しみに暮れる家族。
そしてT・Sもまた、暗く鬱屈した気持ちを抱え続けています。
そんなある日、スミソニアン学術協会からS・Tに
科学賞が授与されることになりました。
S・Tは家族に内緒で単身ワシントンDCへ旅立つことを決心します。



モンタナからワシントンDCまで、
ほとんど大陸横断になります。
貨物列車にこっそり乗り込んでシカゴまで。
そこからはヒッチハイクで。
いくら天才少年でもやっぱり10才の子供なのです。
大きなスーツケースを抱え、
特に暗い夜は怖くて寂しくて、すぐにでも帰りたい気持ちでいっぱいになるけれど、
彼はこの旅を絶対にやりぬこうと決めたのです。

たった一人のロードムービー。
でも、そっと彼を勇気づけてくれる大人の存在があったのは、うれしいですね。
彼らは決して裕福ではなく、言わば人生のアウト・ロー。
だからこそ、この一人ぼっちの少年を「保護」しようなどとは思わなくて、
やりたいようにやってみろ!と
そっと背中を押してくれるのです。



この旅は結局、家族の絆を取り戻すための旅でした。
途中で語られる雀と松の樹のエピソードが心に残ります。

ある雀が、たった一羽でひと冬を凌がなければならなくなった。
どこかの樹に身を寄せなければ寒さで死んでしまう。
そこで雀は、いろいろな樹にそばにいさせてもらうように頼むのですが、
どの樹にも断られてしまう。
最後に松の樹に頼んでみると
葉っぱがスカスカであまり役に立たないかもしれないけど、
いいよと言ってくれるのです。
それ以来どの樹も冬になると葉が落ちてしまうけれど、
松の樹は葉を落とさないのだとか・・・。

こんな風に、一人ぽっちでも
きっとどこかに自分を守ってくれる「樹」があるのではないか、
ということなんですね。
S・Tは、何の力にもならないと思っていた家族が、
結局はやはり彼にとっての「松の樹」だということに気づくのです。



S・Tは父と母が結婚したのが最大の謎だと言っていましたが、
本当にその通り。
母の日記には、お母さん自身、夫に愛されていないと思っているフシが見えるのですが、
S・Tは、3人も子供が生まれたんだから愛していないわけがない、とつぶやきます。
そうなんですよね。
その証拠に、ラストシーンでは・・・。


それから、夜中に放送の終わったTV(砂漠の砂嵐状態)を
じっと眺めているワンちゃんがステキでした。



こんなふうで、どのシーンもツボにはまりまくるんですよね。
本作本当は3Dなのだそうです。
札幌ではようやくミニシアターで観ることができたくらいなので、
3Dは観ることができません。
S・Tのいろいろな想像シーンが3Dで活かされているということのようです。
ぜひ見たかった・・・。


いずれにしても、感動いっぱいのステキなストーリーでした。
新年早々、いいものを観ることができて、ラッキー!!

2013年/フランス・カナダ/105分
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
原作:ライフ・ラーセン
出演:カイル・キャトレット、ヘレナ・ボナム・カーター、ジュディ・デイビス、カラム・キース・レニー、ニーアム・ウィルソン
家族度★★★★★
冒険度★★★★★
満足度★★★★★

「ワタシの川原泉 Ⅲ」

2015年01月03日 | コミックス
絶妙な力の抜け加減

川原泉傑作集 ワタシの川原泉III (花とゆめCOMICSスペシャル)
川原泉
白泉社


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読者投票により収録作を決定した前代未聞の傑作集
「ワタシの川原泉」第3弾が登場!
異色のフィギュアスケート長編「銀のロマンティック…わはは」に3つの短編を加え、
著者インタビュー他スペシャル企画を添えて、
読みやすいB6サイズでお届けします。
松たか子さんも激賞!


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先にⅠとⅡが出ていまして、
この度めでたく続きが出ました。
まもなくⅣも出る予定。
これってつまり、傑作選というよりは「全集」になってきましたね。
いずれにしても私はすべて読んでいますが、
これがまた、あらためて見てもやっぱりいいのだなあ・・・。


本巻に収められているのは、
「銀のロマンティック・・・わはは」、
「大地の貴族―9月はなごんでる」、
「カレーの王子さま」、
「Intolerance・・・あるいは暮林教授の逆説」。


何と言っても泣かされるのは
「銀のロマンティック・・・わはは」
ペアフィギュアスケートの頂点を目指す男女のストーリー。
有望視されながら、怪我でスピードスケートの道を断念した影浦忍と、
著名なバレエ・ダンサーであり演出家でもある父親を持つ由良更紗。
この二人、元気で力があってスピーディ。
技術も確かなんだけれど、
やたら無機質で情感というものが全くない。
会えばガミガミ喧嘩してるし、
愛だの恋だのなんか双方全く縁がなさそう・・・。
この二人が互いを思いやり、気持ちをひとつにしていくためには
やはり一つの試練がありまして・・・。
まあ、例によっておとぼけ顔の主人公たちが、
いつしか本気でひたむきにスケート打ち込んでいく姿に、
つい涙させられるのでありました。
全く、川原泉マジック。
なぜこの絵で泣かされる!?
この題名についている「わはは」というのが実にいいですよね。
著者は槇村さとるさんの「愛のアランフェス」や
おおやちきさんの「雪割草」に触発されて
フィギュアスケートの作品を書いてみようと思ったそうです
(どちらも私も愛読しました)。
でも、そもそも著者はそういう根っからの情熱的な作風の方ではありません。
つい自分でも照れてしまって「わはは」と付け足したのだろうな、
というあたりが容易に読み取れるのが楽しい。
こういう力の抜け加減が、私が川原泉さんを好きな第一の理由なのです。
それにしてもこの二人、
それぞれシングルでもかなりのセンを行きそうなのに、もったいないことです。


「大地の貴族」は、「カモメまゆ毛の嫌味なヤツ」がしっかり記憶に残っていました。

「カレーの王子さま」も、もちろん大好き。

暮林教授は川原作品には珍しくシリアス。
うーん、でもやはりおとぼけキャラのほうが好きかな?


「ワタシの川原泉 Ⅲ」花とゆめCOMICSスペシャル
満足度★★★★★

バンクーバーの朝日

2015年01月02日 | 映画(は行)
野球好きたちの“夢”



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1914年~41年、戦前のカナダで活躍した
日系移民の野球チーム“バンクーバー朝日”の実話です。
石井裕也監督、そして敬愛する奥寺佐渡子さん脚本ということで
楽しみにしていました。



日系移民たちは過酷な肉体労働と貧困・差別の中で
毎日をやっと暮らしていたのですが、
そんな中でも二世たちが野球を続けていました。
しかし、体格で上回る白人チームに負け続け、万年リーグ最下位。
そんなある時、キャプテンのレジー(妻夫木聡)が、
バントと盗塁を多用し、小刻みに点を稼いでいく方法を考えます。
このやり方で、バンクーバー朝日はどんどん勝ち進むようになっていくのです。



本作は栃木県足利に巨大オープンセットを作って撮影したそうなのですが、
白人街と日本人街の町並み、
双方で挟みこむように真ん中にある野球場、
素晴らしく雰囲気がありました。
特に他に娯楽というほどのものもない当時、
日系人も白人も、みな野球が大好きということが伺われます。
バンクーバー朝日が快進撃を始めると日系人が盛り上がるのはもちろんですが、
地元の白人たちもまた、この野球の面白さに惹かれていくというのがいいですね。
そして、移民たちは彼らの野球に勇気や希望を見出していく。
胸が熱くなるドラマでした。



妻夫木聡さん演じるところのレジーは、人前でしゃべるのが苦手。
キャプテンなのにみんなをまとめるような言葉の一つもかけられないのですが、
何より野球が好きなことだけは人一倍。
そういうことがちゃんとみんなに伝わるんですね。
そして、彼の行動原理は
日本人だから頑張らなければないけないとか、
日本のために負けられないとか、
そういう思いではないのです。
本当にただ野球が好きなだけ。
もちろん勝てば嬉しいし。
それは彼が二世であるという事情もあるのでしょうね。
やはり差別はあるけれど、カナダのこの地こそが彼らの故郷でもある。
だからその当時日本で、ひたすら「お国のために」
・・・ということで突っ走らされていた状況よりも自由なのです。

途中で、日本に帰国したフランク(池松壮亮)は、
日本で何を感じるのかな? 
ちょっとそちらも気になったりします。



やがて太平洋戦争が勃発し、
理不尽にも日系人たちは「敵性外国人」ということで家も財産も没収され、
強制収容所へ送られてしまいます。
本作中ではそのため野球もそこで諦めなければならなかった彼らが、
実に淡々とこの運命を受け入れているところが印象的です。
結局カナダで日本人街も日系人の野球チームも復活することはなかった。
でもこんな風にして、「過去」を知ることができたのは幸いに思います。


佐藤浩市さんが、ついにこんな「年」の役になりましたか・・・!

「バンクーバーの朝日」
2014年/日本/132分
監督:石井裕也、
脚本:奥寺佐渡子
出演:妻夫木聡、亀梨和也、勝地涼、上地雄輔、池松壮亮、高畑充希、佐藤浩市

歴史発掘度★★★★☆
時代の雰囲気★★★★☆
野球のワクワク感:★★★★★
満足度★★★★☆

ワン チャンス

2015年01月01日 | 映画(わ行)
諦めない「力」は、周りの人々の支えがあるからこそ生まれる


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さて、せっかく元旦なので、今日は少し明るい作品をご紹介することにします。

2007年、イギリスの人気オーディション番組「ブリステンズ・ゴット・タレント」で優勝し、
一介の携帯ショップの店員が一躍世界的歌手になったという、
あのポール・ポッツの実話です。



オペラにはちょっと苦手感のある私ですらも知っている、ポール・ポッツ。
オーディション番組で一躍脚光を浴びたことも知っていましたが、
こうして映画作品としてみると、また一段と親しみを感じます。



イギリスの片田舎。
容姿も冴えず内気な性格で、いつも虐められていたポール・ポッツ。
彼は歌うことが大好きで、オペラ歌手になるという密かな夢を抱いています。
しかし家は豊かではなく、音楽留学なども考えられない。
通常そういうことを学ぶためには莫大なお金がかかります。
共産圏なら別かもしれませんが・・・。
しかし彼は、街の小さなイベントでしたが、
オペラを歌い賞金を獲得して、イタリアでオペラを学ぶ機会を得ます。
そこで彼は水を得た魚のように学び、いろいろなことを吸収しますが、
最大のチャンスの時に極度に緊張してしまったために失敗。
そして失意の帰国。





こんな風に何度も挫折を繰り返しながら、
彼は周りの人々に見守られ、励まされて
ついにあの番組に出場することになるわけです。
父母はもちろんですが、ケータイのメールから交際が始まった恋人や、
ケータイショップの店長も・・・。
もっとも、お父さんの心境はやや複雑のようでしたが。
決して諦めないことはもちろん必要ですが、
その力は一人で湧いてくるものではないのですね。
彼を認め、応援してくれる周囲の人々がいればこそ、
また立ち上がる力が湧いてくるのだと、本作は訴えています。



「誰も寝てはならぬ」は、 荒川静香さんのフィギュアスケートに使われた曲で
私達にも馴染みが深いですが、
ポール・ポッツ氏自身の大好きな持ち歌でもあります。
本作中でそのオペラシーンのストーリーが
チョッピリ説明されていたのも嬉しかった。


ポール・ポッツは、ジェームズ・コーデンが演じていますが、
歌はすべてポール・ポッツ本人が吹き替えています。
う~ん、あの伸びやかな美声をまた聞きたくなってしまいましたねえ・・・。

ワン チャンス [DVD]
ジェームズ・コーデン,アレクサンドラ・ローチ,ジュリー・ウォルターズ,コルム・ミーニイ,ジェミマ・ルーパー
ギャガ


「ワン チャンス」
2013年/イギリス/103分
監督:デビッド・フランケル
出演:ジェームズ・コーデン、アレクサンドラ・ローチ、ジュリー・ウォルターズ、コルム・ミーニー、ジェミマ・ルーパー
「夢を追う」度★★★★★
満足度★★★★☆

新しい年

2015年01月01日 | インターバル
2015年を迎えました。



羊・・・じゃなくて、アルパカですが、ご勘弁を。

札幌は穏やかな朝です。
このように平和な1年であることを願いつつ・・・

今年もまた、いい映画と本に巡りあって
ご紹介できるといいなと思います。
年末に風邪を引きまして
しばらく映画館に行けなかったのが残念でした。
当たり前に映画館まで行けるということが
とても貴重なことだったのだなあ、
健康って、大事。
今さらながら、そう感じた次第。

今年もよろしくお願い致します。