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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「シーソーモンスター」伊坂幸太郎

2023年01月14日 | 本(その他)

対立する海族と山族の壮大な歴史の中で

 

 

* * * * * * * * * * * *

バブルに沸く昭和後期。
一見、平凡な家庭の北山家では、元情報員の妻宮子が姑セツと熾烈な争いを繰り広げていた。
(「シーソーモンスター」)

アナログに回帰した近未来。
配達人の水戸は、一通の手紙をきっかけに、ある事件に巻き込まれ、
因縁の相手檜山に追われる。(「スピンモンスター」)

時空を超えて繋がる二つの物語。
「運命」は、変えることができるのか――。

* * * * * * * * * * * *

本作はなかなかユニークな成り立ちをしています。
伊坂幸太郎さんが提案したようなのですが、
8人の作家で、数千年の時を超える物語を書きつなごう、と。
テーマは対立。
名付けて「螺旋プロジェクト」。
そのルールは、

・「海族」vs.「山族」の対立を描くこと

・共通のキャラクターを登場させること

・共通シーンや象徴モチーフを出すこと

 

ということで、
朝井リョウ、天野純希、伊坂幸太郎、乾ルカ、
大森兄弟、澤田瞳子、薬丸岳、吉田篤弘
の8名が、原始から未来に至る壮大な物語の各パーツを担うことになったわけです。

とは言え、その一つ一つは独立した物語でもあって、
どこから読んでも読まなくてもOKということのようなので、
私はまずその言い出しっぺ、伊坂幸太郎さんの一冊を手に取りました。

 

本巻は昭和後期を描く「シーソーモンスター」と、
近未来を描く「スピンモンスター」が収められています。

「シーソーモンスター」では、対立する海族と山族の血を引くと思われる二人が
なんと嫁と姑の関係になってしまい、
ただでさえ剣呑な関係なりそうなところが、ただならないことになってしまう。
しかもその嫁は元スパイというのがいかにも伊坂幸太郎さん。
だから単なる家庭内騒動の話にはなりません。

 

そして、時は過ぎて「スピンモンスター」では、
AIが世の中を支配しつつある近未来が描かれます。
ここで対立関係となるのは、2人の男性。
双方子どもの頃に同じ交通事故で家族を皆亡くして、孤児となって生きてきた。
双方が加害者遺族であり被害者遺族でもあるという微妙な関係。
特に親しく話したこともないけれど、
なぜかお互い対面すると異常な緊張感や敵愾心を抱いてしまうという・・・。

そしてこの物語には前作の元スパイである「嫁」が老女となって登場します。
時の流れは地続きなんですね。

結構楽しめました。
他の関連作品、全部とは言いませんが
いくつか、また機会があれば読んでみたいと思います。

 

「シーソーモンスター」伊坂幸太郎 中公文庫

満足度★★★★☆

 


「カミサマはそういない」深緑野分 

2023年01月13日 | 本(その他)

いないわけではない・・・と

 

 

* * * * * * * * * * * *

目を覚ましたら、なぜか無人の遊園地にいた。園内には僕をいじめた奴の死体が転がっている。
ここは死後の世界なのだろうか?
そこへナイフを持ったピエロが現れ……(「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」)。

僕らはこの見張り塔から敵を撃つ。戦争が終わるまで。
しかし、人員は減らされ、任務は過酷なものになっていく。
そしてある日、味方の民間人への狙撃命令が下され……(「見張り塔」)

など全7編を収録。

見たくない、しかし目をそらせない、人間の本性をあぶり出すダークな短編集。

* * * * * * * * * * * *

深緑野分さんの短編集。

 

ルームシェアしていた3人の一人が、故郷へ帰ると行って家を出て行った。
しかし彼の実家から、彼は帰って来なくて連絡も取れない、行方を知らないかとの連絡が。
行方の知れない彼を自分たちは本当に友人だと思っていたのか。
そして意外にも彼はすぐ近くにいて・・・。(伊藤が消えた)

 

神無月が始まって、「カミサマがあちらに御座す」と兄がいう。
そんな兄の目にできた斑点はどんどん増えていって、妙なモノが見え始める。
そして神無月の終わる晦の日、
兄は「カミサマの手」にひかれて家を出たきり、神無月が終わっても戻らない・・・。(朔日晦日)

 

紹介文にもあるとおり、人間の本性をあぶり出すダークな短編集となっています。
舞台は現代日本、近未来、異世界・・・
終末の光景も幾度か見せつけられます。
まさに、神も仏もない、救いようのない世界・・・。

あ、でも、本作の題名は「カミサマはそういない」。
英語題で”God is Hard to Find”

つまりカミサマは滅多にいないけれども、
全くいないわけではない、ということですよね。
それを実感するのは、ラストに収録されている「新しい音楽、海賊ラジオ」です。
陸があらかた水没して、人類が細々とかつての文明をつないでしのいでいる世界。
人々の新たな生活の息吹がそこにあるのか・・・?

おそらく本作は計算してラストに持ってきていますよね。
それで良かったです。
でないと読後感があまりにもよろしくないところだった・・・。

 

<図書館蔵書にて>

「カミサマはそういない」深緑野分 集英社

満足度★★★★☆


マイ・ニューヨーク・ダイアリー

2023年01月12日 | 映画(ま行)

サリンジャーとの日々

* * * * * * * * * * * *

原作、ジョアンナ・ラコフさんの自叙伝から。



90年代後半のニューヨーク。

作家を夢見るジョアンナ(マーガレット・クアリー)は、老舗出版エージェントで、
J・D・サリンジャー担当の女性上司マーガレット(シガニー・ウィーバー)の
編集アシスタントとして働き始めます。
そこでジョアンナは、世界中から大量に届くサリンジャーへのファンレターの対応処理に当たることに。
サリンジャーはそのような手紙を一切受け取らないと決めていたので、
極めて紋切り型の事務的返信をして、手紙はシュレッダーにかけるというのがその仕事。
しかし、そんな中には心揺さぶれる手紙もあって、
ジョアンナは規定を破って、個人的に何人かに返事を書いてしまいます・・・。

原題は“My Salinger Year”なので、そちらの方が的確に内容を表わしていると思うのですが、
まあ確かに、そのまま邦題とするのは、わかりにくいでしょうか。

そのころのサリンジャーは、田舎に引きこもり、
外部との連絡をほとんど断って隠遁生活をしていました。
そのような中で、唯一サリンジャーと直接やりとりをする会社というのが、
いかにも希有な体験なわけです。

出版エージェントというのは、日本ではあまり聞きませんが、
作家と出版社をつなぐような役割なんですね。
このような傾向の小説ならどこそこの出版社がいいのでは・・・?
と、紹介したりするわけです。

さて、大ヒットの「ライ麦畑でつかまえて」が出てから何十年も経つのに、
いまだに大量に届くファンレター。
ジョアンナは
「著者の意向で、手紙を本人に届けることはできません。」
など、文例集に従って、返事を書いていたわけです。
けれども妙に心に引っかかる手紙がたまにある。
それに対して、ジョアンナはただの紋切り型の返信で済ますことがつらくなってしまうのですね。

そういうジョアンナは作家志望ながら、この仕事に就いている間は何も書いていません。
上司マーガレットから、「小説なんか書いてもムダ」と
始めに軽くいなされたためもあるのですが、
彼女の中でまだ何かの醸成が足りないようにも思えます。

ニューヨークに来る前に付き合っていた男性とは別れて、
新たな恋人と共に住んだりと、
仕事面ばかりでなく恋愛事情についても、
ジョアンナはこれからの人生の方向性を模索しているようです。

そしてまた、サリンジャー関係の仕事をしているにもかかわらず、
ジョアンナはサリンジャーを読んだことがないというのです!!
彼女がついにそれを読むのは、かなり終盤になってから。
あまりにも多くの人が「すばらしい」というものに
ちょっとためらいが出てしまう、という気持ち、私にも少し分かる気がします。
でもこんなにも長きの間、多くの人に愛されるのには、
やはりそれなりの理由があるのでしょうね。

1人の女性の成長、そして自立の物語。
サリンジャーが素材となっているのも、なんともステキです。

シガニー・ウィーバーの女性上司というのがまた、ナイスなのです。
厳しく、頑固そう。
でも意外と部下のことをよく見ている。
エイリアンと闘ったりしなくても、魅力的であります!!

そして本作の1990年代という時代性。
オフィスに徐々にコンピューターが入り込んでいった時代です。
まだ多くはタイプライター。
マーガレットがデジタルに不信感を持っているので、
ここのオフィスはよそよりコンピューターの導入が遅れているのです。
でもそんな彼女も、ネット検索などの利便性を否定できなくなってくる。

私自身もそんな時代を過ごして来たわけで、妙に懐かしい気がしました。

 

<WOWOW視聴にて>

「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」

2020年/アイルランド・カナダ/101分

監督:フィリップ・ファラルドー

原作:ジョアンナ・ラコフ

出演:マーガレット・クアリー、シガニー・ウィーバー、ダグラス・ブーマ、
   ブライアン・F・オバーン、セオドア・ペレリン

時代性★★★★☆

サリンジャーへの興味度★★★★☆

満足度★★★★★


四月は君の嘘

2023年01月11日 | 映画(さ行)

母との関係、そして病気のオンナノコ

* * * * * * * * * * * *

母の死がきっかけで、ピアノが弾けなくなってしまった
天才ピアニストの少年、有馬公生(山崎賢人)。
ある日、天真爛漫なバイオリニスト・宮園かをり(広瀬すず)に出会い、惹かれていきます。

かをりとの出会いをきっかけに、ピアノと母の思い出に向き合っていく公生。
やがて、恐れずピアノを弾くことができるように。
しかしある日、共に出場するはずだったコンサート会場に、姿を現さないかをり・・・。

普通に音楽青春物語だと思って見ていたら、
私の苦手な「病気のオンナノコ」の話になっていきました。
う~ん、聞いてないよー!!

それにしても、内気で気が弱くて、いつもうつむきがちの公生くんと、
明るくて前向き、いつも元気を与えてくれるかをり、
名コンビをたっぷり楽しませてもらいました。

ここで重要なのは、公生と母親との関係。
母はそれこそ名ピアニストで、幼少の時から公生は
実に厳しく母からピアノを教えられたのです。
コンテストに優勝したときでさえも、褒め言葉はなくダメ出しばかりだったりして。
ある時ついに耐えきれず、「お母さんなんか死んじゃえ」と言ってしまった公生。
でも、以前から病に冒されていた母は、本当に亡くなってしまう。

まるで自分が母を殺したような感情に苦しみ、
ついにはピアノに集中しようとすればするほど、
ピアノの音が聞こえなくなるという症状が現れ、
以後、まともにピアノを弾くことから遠ざかっていたのでした。
母親への複雑な感情。
それが通り一遍ではないところがなかなかよいです。

公生の友人役、石井杏奈さん、中川大志さんもいい感じ。
幸せな友情物語でもありますね。

<WOWOW視聴にて>

2016年/日本/122分

監督:新城毅彦

原作:新川直司

出演:広瀬すず、山崎賢人、石井杏奈、中川大志、甲本雅裕、板谷由夏

 

音楽を楽しむ度★★★★☆

病気のオンナノコ度★★★★☆

満足度★★★☆☆


ファミリア

2023年01月10日 | 映画(は行)

人々の分断を乗り越えて

* * * * * * * * * * * *

山里で1人暮らす、陶芸職人の神谷誠治(役所広司)。
一流企業のプラントエンジニアで、アルジェリアに赴任中の息子・学(吉沢亮)が、
婚約者ナディア(アリ・まらい果)を連れてやって来ます。

学は結婚を機に退職して、焼き物の仕事を継ぎたいと言います。
けれど、父・誠治はいい顔をしません。

一方、隣町の団地に住む、在日ブラジル人のマルコスが、
半グレ集団に追われて、誠治と学ぶに救われます。
マルコスは焼き物の仕事に興味を覚えます。

やがて、学とナディアはアルジェリアに戻り、
マルコスはさらにまた半グレ集団につけ狙われるようになりますが・・・。

私、本作はもう少しハートウォーミング的作品かと思っていたのですが、
とんでもない、シビアでショッキングな作品でした。

ブラジル人等の外国人ばかりが住む団地というのは実在して、
それがモデルになっているようです。
男達は朝出迎えの車に乗り合わせて工場へ向かう。
女たちは調度その頃に、夜の盛り場から帰ってくる。
冒頭で、そんな様子が映し出されます。

彼らは、一攫千金の夢を見て本国から日本へ渡ってきたのだけれど、
そんな話は全くの眉唾物・・・。

移民達が日本社会の中で受ける差別や偏見。
一行に変わらない低賃金。
マルコスはもうすっかり将来の夢を見ることも忘れています。
そんな外国人たちとなんのわだかまりもなく付き合い、助けようとするのが神谷父子。

なにしろ学は、アルジェリアの難民キャンプにいたナディアと結婚を決意し、
誠治は息子からその娘を紹介されても動じずに歓迎する。
なんと肝の据わった親子でしょう。
すべての日本人がこうであればよいのに・・・。
こんな親子なので、移民団地の人々と仲良くなるのも自然な成り行きなのであります。

それにしても終盤の展開はあまりにも意外で悲痛です。
アルジェリアは政情不安定な国で、
日本人が思う「話し合い」の通じるような人ばかりではない、ということか。

国際間の人々の分断は、全く単純ではありません・・・。
個人として出会えば、家族のようにもなれるのに・・・。

最後の誠治の行動が何しろすごくて、圧倒されました。
力のある作品ですね。

 

<シネマフロンティアにて>

「ファミリア」

2022年/日本/121分

監督:成島出

出演:役所広司、吉沢亮、アリ・まらい果、サガエルカス、ワケドファジレ、
   中原丈雄、室井滋、佐藤浩市

 

分断度★★★★☆

ショッキング度★★★★★

満足度★★★★☆

 


「短編宝箱」集英社文庫編集部編

2023年01月09日 | 本(その他)

おせち料理のようなアンソロジー

 

 

* * * * * * * * * * * *

眠れない夜。
久しぶりの旅行。
のんびりしたい休日
……どんな時も寄り添ってくれるもの。
それは、一編の物語。
スリリングな大人の駆け引きにはらはらしたり、
初恋に胸をときめかせたり、
家族や友達との特別な絆に涙したり。
2010年代、「小説すばる」に掲載された様々なジャンル
──ミステリから時代小説まで──
の短編作品から厳選。
人気作家たちが紡ぐ宝物のような11編で、最高の読書時間を!

* * * * * * * * * * * *

アンソロジーは、それ一冊で様々な作家に出会えて、豪華でちょっとウキウキします。
まるでお料理料理の重箱みたいに。
でも、一冊ですぐにお腹いっぱいになってしまって、もうしばらくはいいや
・・・と思ってしまう。
私にとってはいつもそういう感じです。

本巻も、まあ、たまにはいいかな?と思ったことと、
執筆陣があまりにも私好みだったもので・・・。

敬称略ですが・・・
朝井リョウ、浅田次郎、伊坂幸太郎、荻原浩、奥田英朗、
西條奈加、桜木紫乃、島本理生、東野圭吾、道尾秀介、米澤穂信

 

ところが、私の好きな作家ばかりということで、ほとんど読んだことのあるものだった・・・。
まあ、当然と言えば当然ですが、そこまで考えていませんでした。

いつも私は読めばすぐに忘れるタイプ、と思っていましたが、
意外と覚えているモノですね。

まあ、ディティールは覚えていないのですが、どこか既視感があるという感じ。
それだけ印象に残るできのよい短編であるとも言えるかもしれません。
そしてこの場で改めてまた読めたことも、悪くはないです。

 

また、いくつかはそれぞれの作家の人気シリーズの中の一篇だったりするのは嬉しいです。

米澤穂信さんの「ロック・オン・ロッカー」は「本と鍵の季節」から。
堀川と松倉が一緒にヘア・サロンに行くという印象深い一作。

東野圭吾さんの「それぞれの仮面」では、
ホテルコルテシア東京が舞台で、勤めてまだ4年の山岸尚美が登場します。

桜木紫乃さんの「星を見ていた」は、
釧路郊外のラブホテル「ホテル・ローヤル」に関連するストーリー。

人混みの雑踏で思わぬ旧友に出会ったような気分。
まあ、こういうのもいいですね。

 

まあだから、やっぱりたまに読むアンソロジーもよし、ということにしておきましょう。

 

「短編宝箱」 集英社文庫編集部編 集英社文庫

満足度★★★★☆

 


「ぼくの死体をよろしくたのむ」川上弘美

2023年01月08日 | 本(その他)

日常と非日常を暖簾一枚で行き来

 

 

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うしろ姿が美しい男に恋をし、銀色のダンベルをもらう。
掌大の小さな人を救うため、銀座で猫と死闘。
きれいな魂の匂いをかぎ、夜には天罰を科す儀式に勤しむ。
精神年齢の外見で暮らし、一晩中ワルツを踊っては、味の安定しないお茶を飲む。
きっちり半分まで食べ進めて交換する駅弁、日曜日のお昼のそうめん。

恋でも恋じゃなくても、大切な誰かを思う熱情がそっと心に染み渡る、18篇の物語。

* * * * * * * * * * * *


川上弘美さんの短編集。

 

ちょっと不思議で唐突で、けれど読後は余韻が深いストーリーの数々。
いや、ストーリーというか、ストーリーの一部を切り取っただけのようにも思える短編の数々なのですが、
読後は、語られないその全体のストーリーの空間に
いつまでもふわふわと漂っていたい気持ちになります。

 

表題作「ぼくの死体をよろしくたのむ」

さくらは、父の遺言で黒河内瑠莉果という女性に年に2度会いに行きます。
父と彼女がどういう関係だったのか知るのは、少し後のこと。
さくらはちょっと風変わりなこの女性と時々逢うだけで、
特に難しい話をするわけでもないのだけれど、でも逢うのはイヤではなかった。
ある時、黒河内は、さくらの父が亡くなる前に彼女に送ってきた手紙を見せてくれます。
そこに書いてあったのが「ぼくの死体と晴美とさくらをよろしくたのむ」。
さくらの父は自殺で亡くなったのでしたが・・・。

ちょっとアンニュイな感じで、多少のことには動じなさそうな黒河内は
なんと実はミステリ作家だったりしますが、
なんだかこういう女性にはちょっと憧れます。
何かに行き詰まったときに、訪ねて、決して美味しくないお茶を頂いてみたい・・・。

 

当文庫の巻末解説で、女優・美村里江さんが、
川上弘美さんの短編について、こんな風に言っています。

「日常と非日常を暖簾一枚の気軽さで行き来し、
手触りと匂いと現実感があり、生きていることと死ぬことが寄せて返す。」

なるほどー。
うまく表現するモノですね。
もうこれ以上私の言うことなどありません。

 

「ぼくの死体をよろしくたのむ」川上弘美 新潮文庫

満足度★★★★☆


グッバイ・クルエル・ワールド

2023年01月07日 | 映画(か行)

「狂える」世界

* * * * * * * * * * *

西島秀俊さん出演なので、常ならば劇場で見るところですが、
私の好きなテーマではなかったので、配信視聴できるまで待ちました。

まあ、つまり血みどろの抗争劇ということで・・・。

 

年齢も信条もバラバラ、互いに素性も知らない5人組の強盗チームが、
ラブホテルで秘密裏に行われていたヤクザの資金洗浄現場を襲い、
数千万円の強奪に成功します。
彼らは金を山分けし、何食わぬ顔で日常生活に戻ります。

一方、金を奪われたヤクザが、それで事を済ますはずがありません。
かねてからの手飼いの現役の刑事を雇い、強盗チームを本気で追い始めます。

また、強盗チームからもヤクザからも、いいように使われて分け前ももらえず、
ただ踏みつけにされた若い男女2人が、不穏な動きをしはじめます。

 

とにかく殺伐とした登場人物たち。

元ヤクザで今は足を洗ったけれど、
妻の実家が経営している旅館の再建資金を稼ぐために今回の強盗に加わった、安西(西島秀俊)。
とにかく妻と娘との関係を修復したいと思っています。
表向き物腰は柔らかいけれど、しかし、奥底には凶暴性が・・・?

根っからのサディストであり凶悪人。
タトゥーだらけのアブナイ奴・萩原(斎藤工)。
斎藤工さんがこの役を楽しんでいることがうかがわれます・・・。

元政治家秘書という、左翼崩れの老人・浜田(三浦友和)。
最近、三浦友和さんを映画やテレビでよくお見かけするのですが、
どれもハマっていますねえ。

潜入捜査にはあらず。
金のために、ひたすらヤクザの言いなりで働くクズ刑事・蜂谷は大森南朋さん。
全くタチが悪いけれど、どこか憎めないのはやっぱり大森南朋さんだから?

そして、社会の底辺でもがく若い2人。
ラブホテルの従業員・矢野(宮沢氷魚)と、風俗嬢・美流(玉城ティナ)。
大金が手に入ったら、海辺の町に行って、観光客相手にかき氷を売ろうなんて、
ごくごくささやかな夢を語り合いますが、そのようなことすらも叶わない2人。
ヤクザにも強盗団にもザコ呼ばわりされ、世間一般の人からも踏みつけにされている・・・。
この2人の存在が、本作に価値を与えていると思います。

本作は犯罪者側、つまりは「あちら側」の物語のように思えるのですが、本当にそうなのか。
元ヤクザの安西は、元ヤクザであることをひた隠しにして旅館で働いているのですが、
いつしかそのことが周囲に知られてしまい、それまで得た信頼も何もかもすっかり失ってしまいます。
「こちら側」の人だって、たいしたモノではない。

「こちら側」の最先端、正義の人であるべき刑事が、ヤクザとズクズクの関係だったりもする。

矢野と美流に至っては、すでに「あちら側」も「こちら側」もなく、
軽々とその境界を越えてみせる。

つまり元々そんな境界なんてないのかも知れません。
すべてが同じく「cruel world」である、と。

安西と蜂谷は最後に互いに笑ってこの「cruel world」に別れを告げるでありました・・・。

まあ、確かに血みどろで、好きな作品とは言いがたいのですが、
でもなかなか味わいがありました。

Cruelは、ひどいとか残酷なという意味ですが、
「狂える」でもいいな、などと思ってしまった。

 

<Amazonプライムビデオにて>

「グッバイ・クルエル・ワールド」

2022年/日本/127分

監督:大森立嗣

脚本:高田亮

出演:西島秀俊、斎藤工、宮崎氷魚、玉城ティナ、大森南朋、宮川大輔、三浦友和

 

残酷度★★★★☆

満足度★★★.5

 


カオス・ウォーキング

2023年01月06日 | 映画(か行)

心の声がダダモレ

* * * * * * * * * * * *

2257年。
汚染された地球を旅立った人類は、新たな星「ニュー・ワールド」にたどり着きます。
そこでは、男達の頭の中、心の内が、「ノイズ」となって立ち上がり、
誰の目にも明らかにさらけ出されてしまいます。
ところが女性にはノイズは現れないのです。

ここで生まれ育ったトッド(トム・ホランド)は、母を幼い頃に亡くしていて、
そしてこの世界には母どころか、女性は一人もいません。
大人達は、「先住の野蛮なエイリアンが、女性を皆殺しにしてしまった」と言うのです。

ある時、トッドは地球からやって来て墜落した宇宙船の生存者
ヴァイオラ(デイジー・リドリー)と出会います。
ヴァイオラの存在を知った首長のプレンティス(マッツ・ミケルセン)は、
彼女を探しにやって来る母船を利用して、勢力を広げようと考えます。
そんなプレンティスからヴァイオラを守るため、トッドはヴァイオラと逃避行を始めます。

本作の「ノイズ」という発想がとても面白く思いました。

考えていることが、モヤモヤと煙のように立ち上がり、
音声や映像となって他人に知られてしまう。
強く思えば、その映像はよりくっきりとリアルなものになります。
そのためここでは思考がダダモレ。
なかなかしんどそうです。
どうしても人に知られたくない時には、必死で他のどうでもいいことを考えます。
そんな中で、より精神力が強ければ、ノイズを抑えることができるらしく、
首長プレンティスがそんな人物なのです。
まあ、自分の野心とか欲望が人に漏れないからこそ、この地位に立てたのかも知れません。

さて、トッドはものごころついて初めて「女性」と出会います。
ハードなSFにして、ボーイ・ミーツ・ガールなストーリーだったのです。

初めての女性を前にして、トッドの心は浮ついて、ついあらぬ妄想が湧いてきたりします。
ところがそれも相手にはダダモレ。
しかも、その相手のノイズはないので、何を考えているのかサッパリ分からない。
かわいそうなくらい、男の子には不利ですよね。
笑ってしまうほどに。

さてトッドは自分のいる町がこの世界のすべてだと思っていたのですが、
そうではなく、他にもこの星には多くの町が点在していたのです。
そしてそこには女性達も普通に暮らしている。

どうやら、プレンティスが自分の都合のよいように「真実」を創り上げていたようなのです。
権力者というのはそういうモノ・・・。

まあ、いろいろな奥深いことが裏のほうに見え隠れ、なかなか興味深い作品でした。

 

<WOWOW視聴にて>

「カオス・ウォーキング」

監督:ダグ・リーマン

原作:パトリック・ネス

出演:トム・ホランド、デイジー・リドリー、マッツ・ミケルセン、デミアン・ビチル、シンシア・エリボ

 

異世界設計度★★★★★

満足度★★★★☆


Helpless

2023年01月05日 | 映画(は行)

思い込み故に深みにはまる

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WOWOWの青山真治監督特集で、「映画工房」でオススメしていた一作。
1996年作品です。

 

1989年。
高校生・健次(浅野忠信)は、仮出所で帰ってきた片腕のヤクザ・安男(光石研)と再会します。
安男は、自分に何もかもなすりつけて知らぬフリの組長を恨んでいて、
組長を殺すことを決意して、行方を探そうとしていました。
そのため安男は知的障害のある妹のユリ(辻香緒里)と
ショルダーバッグを健次に預けて、出かけて行きます。
ところが、関係者の誰に聞いても「組長は死んだ」と言うのです。
嘘をつかれていると思った安男は、そういう者たちを次々殺していく・・・。

一方、ユリと健次はとあるドライブインで安男を待つことにしたのですが、
そんな時に健次は、精神病院に入院中の父が自殺したことを知り・・・。

 

「helpless」という題名の通り、どうにも救いようのない物語・・・。

父の病院に見舞ったり、兄貴分の安男と対面したり、
知的障害のユリと会話したりする時の健次は、
ちょっとやさぐれてはいるけれど、普通に優しい感情のある男子。
けれど、父が自殺したと知ったあと彼は豹変します。

心を病む父ではあるけれど、それが逆に
自分の存在価値の明かしであるかのように思っていたのかも知れない。
そんな父からも見捨てられたと思ったとき、
彼はもう生きる意味も見失って自暴自棄になってしまう。

感心にも、健次はずっと安男のバッグを開けてみなかったのですが、
最後についに中を見てしまいます。
私はもしや大金でも入っているのでは?などと思ったのですが、違いました。
でもある意味、それに類するものではあります。
そして、安男の「執念」の物体。

考えてみれば、安男にしても健次にしても、その時置かれた状況はそんなに悪いモノではないのです。
しかし、自らの「思い込み」故に暗い淵に落ち込んで行ってしまう。

それと対照的存在がユリということなのでしょう。
彼女はそもそもそんなに深く考えない。

自然体で生きるということ。
彼女は自然にそれができているけれど、それが案外難しいのかも知れません。

 

しんどく息苦しくなってしまう物語・・・。
浅野忠信さんのうんと若い頃が見られたのは儲けもの。

 

<WOWOW視聴にて>

「helpless」

監督・脚本:青山真治

出演:浅野忠信、辻香緒里、光石研、斉藤陽一郎

 

ブラック度★★★★★

満足度★★★☆☆

 


「おんなの女房」蝉谷めぐ実

2023年01月04日 | 本(その他)

夫婦の形はいろいろ

 

 

* * * * * * * * * * * *

ときは文政、ところは江戸。
武家の娘・志乃は、歌舞伎を知らないままに役者のもとへ嫁ぐ。
夫となった喜多村燕弥は、江戸三座のひとつ、森田座で評判の女形。
家でも女としてふるまう、女よりも美しい燕弥を前に、
志乃は尻を落ち着ける場所がわからない。

私はなぜこの人に求められたのか――。
芝居にすべてを注ぐ燕弥の隣で、志乃はわが身の、そして燕弥との生き方に思いをめぐらす。
女房とは、女とは、己とはいったい何なのか。

* * * * * * * * * * * *

 

本作の題名、「おんなの女房」は、ちょっとどういうこと?と思ってしまいました。
これはつまり、歌舞伎の女形の女房、と言う意味なのでした。

 

武家の娘である志乃は、父親に命ぜられるがままに、
歌舞伎の女形、燕弥のもとに嫁ぎます。
志乃は、武家の女の作法をびっしりと仕込まれており、
父親の命に従うのは当然と思い、何の疑問も持たずに嫁に来ます。
歌舞伎のことはもちろん、庶民の暮らし向きのことも何も知りません。
夫の仕事の場に顔を出したりするのは、はしたないと思っているので、
夫の出ている舞台を見に行こうともしない。

役になりきるために、普段からも女の姿でいる夫。
だからなのか、妻である自分の体を求めることもない。
自分よりも美しく女らしい夫はなぜ自分と結婚したのか。
自分は何のためにここにいるのか・・・。

 

序盤で、燕弥がなぜ志乃を嫁にとったのかと言う直接的な理由は明らかにされます。
通常は、それは屈辱的で、失望を呼ぶことだと思うのですが、
しかし志乃は逆にここでは安堵。
ともかく自分の存在意義が確かめられたのならそれでいい。
自分はその役に徹しようと、そう思うのです。

なかなか通常の夫婦としては考えられない関係になっていきます。
しかし、そんな中でも互いの気持ちは通じ合い絆が生まれていく過程が、
丁寧に描かれています。

そしてその結末もなんとも意外なものでした。

読み応えアリ、です。

<図書館蔵書にて>

「おんなの女房」蝉谷めぐ実 角川書店

満足度★★★.5


「アンのゆりかご 村岡花子の生涯」村岡里恵

2023年01月03日 | 本(その他)

空襲警報の下で

 

 

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戦争へと向かう不穏な時勢に、翻訳家・村岡花子は、
カナダ人宣教師から友情の証として一冊の本を贈られる。
後年『赤毛のアン』のタイトルで世代を超えて愛されることになる名作と
花子の運命的な出会いであった。

多くの人に明日への希望がわく物語を届けたい――。
その想いを胸に、空襲のときは風呂敷に原書と原稿を包んで逃げた。
情熱に満ちた生涯を孫娘が描く、心温まる評伝。

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「赤毛のアン」を翻訳したことで知られる村岡花子さんの孫娘が描いた、村岡花子の生涯を描く評伝。
その物語は、2014年にHNKの朝ドラとなり、好評を得ました。

そのころの私はまだ仕事をしていたので、ドラマは毎日は見ておらず、
土曜日だけ見て他の部分を想像で補っていました。
当時は、土曜でも一週間のまとめではなかったのです。

と言うことで、この度村岡花子さんについて、もう少しきちんと知っておきたいと思い、
本巻を手に取りました。

 

貧しい家ながら、父親の一念というか執念とでも言いましょうか、
娘を東京のミッションスクールに送り込む。
もちろん娘の向学心と才能を見込んでのことではあり、
給費生という扱いでもありましたが。
しかしそのため、この家に他にも兄弟姉妹が多くいたのですが、
まともな教育を受けたのは彼女だけ。
明治時代としては極めて貴重な経験だったことは間違いありません。

花子はそこで、カナダ人宣教師から英語を学びます。
この学校で得た親友が、後に世を騒がせた白蓮であることとか、
妻帯者との恋とか、まさにドラマ向き、波瀾万丈の人生です。

 

彼女の最も大きな業績とも言うべき「赤毛のアン」の翻訳は、
なんと太平洋戦争下のなかで行われていた、と言うのにも驚いてしまいます。
当時のことですから、英語は敵性語。
その翻訳を行っているなどと外に知れたら、どんなことになるやら。
それで花子は密かによその人には誰にも告げずに翻訳を行っていたのです。
いつかこういうものも当たり前に出版できる日が来るだろう、その日を夢見て。
時には空襲警報の鳴り響く中での執筆。
すごいですねえ・・・。

 

この時代にある程度名を上げた女性達が
当然のごとく取り組むのは、婦人参政権運動。
花子も例外ではありませんでした。
けれど散々苦労した活動も戦争に阻まれ、
やがて敗戦後にごくあっさりと民主化が進められて、男女同権を得る。
世の中は、なかなか皮肉に満ちています。

明治、大正、昭和を生き抜く女性達の、たくましくまっすぐな息吹が感じられます。
しかし昭和・平成・令和を生き抜く私は何もできていないなあ・・・。

 

改めて、村岡花子さんファンになりました。
テレビドラマももう一度ちゃんと見たい・・・。

 

「アンのゆりかご 村岡花子の生涯」村岡里恵

満足度★★★★☆


大事なことほど小声でささやく

2023年01月02日 | 映画(た行)

人は皆一人。でも一人じゃない。

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昼はジムで肉体を鍛え、夜はジム仲間が集う「スナックひばり」を営む、
マッチョなオカマ、ゴンママ(後藤剛範)。
スナックに集まるのは実に個性豊かな面々で、いつもわいわいと騒がしいのですが、
実のところはそれぞれに悩みを抱えている様子。
ゴンママがそれぞれ一人一人の悩みや哀しみに寄り添っていきます。

ということで、森沢明夫さんの原作はおそらく、
一人一人のストーリーを各一話とした短編になっているのでしょう。

本作はその中の「四海良一」(深水元基)のストーリーがメインとなっています。

四海は、すなわち歯科医で、皆には「センセイ」と呼ばれています。
マシンガントークがうりで、陽気。
ところがその実、家庭生活に悩みを抱えているのです。
妻との関係が、もうほとんど修復不能に思えるほど冷え切っています。
家に帰るのも憂鬱で、帰宅前に一人路上でたたずんでいたりする・・・。

そんな彼の気持ちに変化を与えるのがゴンママというわけです。
的確な回答を与えたりはしませんが、ほんの少しの共感と慰めが力になる。

というのも、ゴンママ自身も自信満々でハッピーというわけではないから。
時には孤独に押しつぶされそうになることも・・・。

けれども、彼はセンセイに言う、
「人間は所詮一人。でも一人じゃない・・・。」
ちゃんとあなたを見ている人がいる。
わかり合える友がいるよ・・・と。
それはゴンママが自分自身に向かって言っていることなのかも知れません。

本作のジムに集まる人々はみな、
それぞれの孤独を忘れるためにトレーニングに励んでいるようではあります。
そして、孤独に耐えることができるように強くなりたいと思っている。

原作も読んでみたくなりました。

<サツゲキにて>

「大事なことほど小声でささやく」

2022年/日本/98分

監督:横尾初喜

原作:森沢明夫

出演:後藤剛範、深水元基、遠藤久美子、峯岸みなみ、田中要次

 

満足度★★★☆☆


マリー・ミー

2023年01月01日 | 映画(ま行)

格差もなんのその

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世界的歌手・キャット(ジェニファー・ロペス)と
彼女の恋人、音楽界の新星・バスティアン(マルーマ)は、
コンサート中にファンの前で華々しく結婚式を挙げようとしていました。
ところが、その直前にバスティアンの浮気が発覚。

失意の中、キャットはステージ上から、
彼女の新曲名「マリー・ミー」と書いたボードを持っている男性が目に入ります。
キャットは突発的にその男性にプロポーズ。

プロポーズされたのは、ぱっとしない数学教師のチャーリー(オーウェン・ウィルソン)。
彼は友人に誘われてあまり気が進まないままに、このコンサートに来ていたのでした。

スタッフやマスコミ、ファンの混乱の中、2人は会場を逃げ出します。
この話を今さら打ち消すことはできないので、
とりあえず営業上の結婚をそのまま続けてみよう、ということになり・・・。

 

ポップスターと、平凡な子持ちの数学教師のラブストーリー。
多くの人が「ノッティングヒルの恋人」を思い浮かべると思うのですが、
まさしく、それに類するストーリーです。

実際に、ジェニファー・ロペスの歌が楽しめるのも、美味しいところです。

片やあまりにも有名で人気のある歌姫。
もう片や、バツイチの子持ち教師。
まさしく格差カップルですね。
でも互いの立場を取り払って、単に1対1の人間同士と考えてみれば、
当然恋は成り立つはずで・・・。

ま、現実的にはそう簡単ではないわけですが、そこは「映画」の夢の世界。
ちょっとした幸せ気分を味わって、お正月気分を盛り上げるのもいいですね!!

<WOWOW視聴にて>

2022年/アメリカ/112分

監督:カット・コイロ

原作:ボビー・クロスビー

出演:ジェニファー・ロペス、オーウェン・ウィルソン、マルーマ、ジョン・ブラッドリー、
   サラ・シルバーマン、クロエ・コールマン

 

ハッピー度★★★★★

満足度★★★★☆