歴歩

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奈良県田原本町・宮古北遺跡 辰砂から朱の精製に使用した土器が出土

2010年04月18日 | Weblog
 田原本青垣生涯学習センターで17日に行われた「発掘調査報告会」で、宮古北遺跡(田原本町宮古)で古墳時代前期に赤色顔料「朱」の精製に使った須恵器の鉢(直径12・5cm、高さ5・3cm)が発見されたと発表された。
 昨年5~6月、古墳時代前期の堀跡の近くの井戸跡の中から、内側に朱がこびりつき外側は火をかけたことによる煤(すす)が付着した鉢1個が完形で出土した。
 朱は辰砂をすりつぶし、水で溶いて塗る赤色顔料。精製する際に加熱処理が必要とされ、土器はその際に使われたという。
 土器は、同センター2Fの唐古・鍵考古学ミュージアム前廊下で開かれている「発掘速報展」(4月17日~5月23日)で展示される。
[参考:毎日新聞、奈良新聞]
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栄山江流域 全南霊岩郡・長洞方台形古墳 2次調査着手

2010年04月18日 | Weblog
 4月15日の聨合ニュースで、栄山江流域の代表的な巨大古墳の一つである全南霊岩郡チャンドン古墳(장동고분)の2次発掘着手のニュースが配信された。
 昨年、本古墳の周溝の範囲確認のための発掘調査が行われ、墓の大きさは南北36.6m、東西31mの長方形であり、周溝(주구)が幅5m、残存深さ約1.5mでかなりよく残っていることが確認された。
 調査を通じて円筒形土器(원통형 토기)2点が東側周溝から出土した。墓の内外に列をなして立たせておく儀式用土器であるこの円筒形土器は、国内では全南地域だけにしか見えないのに、日本でも似たような土器が「埴輪(하니와)」という名前で存在して、古代日本との文化交流があったことを推定するような遺物である。
 本古墳は構造や性格など学術調査がなされないまま、1986年に全羅南道記念物に指定され、以後整備されたが周辺地域が耕作地で利用されているために毀損が進行された。発掘調査に当たっている国立羅州文化財研究所は、本古墳が栄山江流域の巨大古墳築造勢力の性格を把握するのに重要な遺跡であるとしている。
[参考:聨合ニュース]
 以上が、ニュース記事の内容である。

 チャンドン古墳(장동고분)とは、前方後円墳としてよく知られるチャランボー古墳(자라봉고분)ではないようだし、ようやく調べついたのが長洞方台形古墳(장동 방대형고분)であった。国立羅州文化財研究所のホームページの中に昨年度の調査報告書が収納されていた。その中身の概略を下記にまとめてみる。
 所在地は、全南霊岩郡始終面沃野里。霊岩郡の古墳群は計44ヶ所が確認されているが、このうち25ヶ所の古墳群が始終面に分布している。霊岩地域で調査された古墳の埋葬主体は甕棺、土窟+甕棺、石室であるが、大部分が甕棺を中心に埋葬する。石室はチャランボー古墳で1基が調査されている。
 長洞古墳群は海抜15m前後の低い丘陵の頂上部に方台形墳2基と円形墳1基がある。長洞古墳群の1号墳である長洞方台形古墳は、1980年代調査当時、長さ38m、幅35m、高さ5mで墳頂平坦部に2~3ヶ所の陥没部があり盗掘されたことが報告されている。
現在の墳丘は整備復元されて芝が植栽されているが、周溝が存在する墳丘周辺はかなり畑で開墾され、開墾された畑の地表上には土器片と甕棺片が露出していて、相当部分が毀損されたと考えられていた。
 周溝平面調査結果、周溝は墳丘全周に回っており、周溝内側線を基準とすると墳丘は南北中央36.6m、東西中央31m、高さ約6.7m、上部平坦部長さ13.4m、幅10.4mであった。
 発見された円筒形土器の1つ(注1)をみると、下部は狭く、上部にかけ広がる形状で器高57cm。底部に直径3.5cmの円形透孔があけられていた。3個の突帯が巡らされていて、第1突帯は1条、第2突帯は2条である。2~4段には波状文が施文されており、2段、3段には三角形の透孔(5*5cm)(注2)が等間隔であけられている。既存の韓国内外の円筒形土器とは違った状態で、円筒形土器導入以後地域性が加味された変形円筒形土器である可能性が高いとみられる。この出土品からみると長洞古墳築造勢力が日本と緊密な関係を維持していることが分かり、共に霊岩地域の初めての円筒形土器出土事例という点で意味がある。
栄山江流域の初期甕棺古墳中心地として知られた霊岩郡所在大型墳丘に対する発掘調査を実施したが、調査結果では古墳の墳形と出土した円筒形土器から推定すると、後期甕棺古墳である可能性が大きいことを確認した。
[参考:霊南長洞方台形古墳発掘調査2009.6/国立文化財研究所]
(注1) 写真から推定すると最下部の直径約17cm、最上部の直径34cmほどか。
(注2) 2段目は逆三角形、3段目は三角形
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