全英連参加者のブログ

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セカンドキャリア

2013-01-26 06:49:59 | 全英連参加者 2013

 人事労務用語辞典の解説
 中高年の定年退職後や女性の子育て後、またはプロスポーツ選手の引退後の、「第二の人生における職業」のこと。

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 プロ野球選手の引退後の仕事として、アマチュア野球の指導者になる。これまではかなり高いハードルがあった。日本野球機構(NPB)と学生野球協会は17日、プロ経験者が指導者になるための規定を話し合う「学生野球資格に関する協議会」を都内で開催。これまで、高校野球の指導者となるためには、教員免許取得と2年間の実務経験が必要だったが、座学の研修を受ければ、資格が認められる案が、プロ側に提示された。アマ側が譲歩し、条件は大幅に緩和された。新聞報道では、だいたいこんな感じであったと思う。

 毎年高校、大学、社会人からNPBにドラフト指名されて入団するのは、どれくらいの人数になるのだろう。12球団で100人程度だろうか。その分選手がやめることになる。現役引退後、球団に残れる元選手は少ない。TV・新聞等のマスコミに再就職できる元選手も限られている。入団から数年でやめる選手に、高校や大学の野球部担当職員(フルタイム・パートタイム)の口がどのくらいあるのか。そんなに多いとも思えない。でも、まあチャンスが増えるのは悪いことではない。
 これまでは、高校野球の指導者(コーチ・監督)になるには、上記赤字のような制限がもうけられていた。高校の教員免許は大卒でなければ取得できない。大卒が免許の基礎資格だからである。教員免許を取得するには教育系の学部で学ぶなら4年間。そうでない場合は、大学を卒業するための単位に加えて、教職課程を履修し、教員免許を取得することになる。元NPB選手の場合どうだろう。大学卒業者でも1年ではすまないのではないか。高卒ならばどんなに短くても4年かかる。これはかなり大変である。
 今回の決定は、大幅な緩和ではなく、事実上の制限撤廃である。

 セカンドキャリア(この言い方、実は好きになれない)の先として、元NPB選手のみなさんはどんな姿を考えているのだろう。よく、「高校野球のコーチをしたい」という発言が目につくが、どうだろう。また、私立高と公立高では状況が違うだろう。僕は私立高校のことは詳しくないので、公立高校(県立高校)の場合はどうなのか考えてみる。

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 中学校で柔剣道が体育の授業に取り入れられ、実技研修のあと体育教諭がその指導に当たらせられているが、授業中の事故が非常に懸念されている。本来であれば経験者を体育教諭として確保すべきだが、とてもできていない。高校も同じである。現在一部県立学校で格技系部活動(主に柔道部)等は、指導する教諭が確保できない。学校外から指導者を招聘することもあるが、ほとんどボランティアである。雇用するにはお金が必要なのだ。NPB元選手のセカンドキャリアという場合、仕事である。1日野球教室ではない。そんな状況で、どこからお金を持ってくるか。

 さて、公立高校で野球部担当職員としてのフルタイムで1名コーチ(監督)として雇用すると、いったいいくらかかるかである。雇用するのは上記下線部以外の人である。年齢では30歳前後。大卒、社会人経験者だと、卒業後10年未満、高卒だと10年ちょっとである。

 公務員には職がある。行政職、警察官、教育職、技能職。雇用形態も常勤職・非常勤職と大まかに別けられる。公立学校で働いている人は、基本的には公務員になる。公務員として、税金からお給料をもらう人である。学校の場合、行政職(事務)、教育職(管理職を含む先生)、技能職(給食調理員等)が主なものである。高校の食堂運営、警備はほとんど民間委託である。野球部担当職員に当てはまるものは、現状ではない。
 公立学校で働いている場合でも、特別な技能を持つ人として、華道、茶道、箏曲等の部活動顧問(指導者)を外部委託、嘱託職員として、契約する場合もある。でも、週1がいいところだ。
 公務員ならば、人件費は公費(県予算)、嘱託職員ならば学校独自の予算・団体費(団費)になる。

 元プロ野球選手を1回こっきりの巡回指導者として招くならば、団費でいい。謝金ですませることができる。でも、いつでもいるコーチとなると、常勤に近い状態である。安全管理責任もでてくる。高校野球にはオフシーズンの設定があるにはあるが、部内練習は事実上制限がない。いつでもやっているのが野球部なのだ。コーチや監督。1年で終わりというわけにはいかなくなるだろう。でも、これって可能なのだろうか。

 勤務時間・雇用形態
 部活動担当職員であるならば、常識的に考えて授業時間後が、就業(業務委託)時間である。午後4時~7時終了、前後30分を勤務時間とすると、1日実働4時間。どう見ても、1日8時間勤務とするのは無理がある。土日も部活動があるので、変形労働時間制を適用する。常勤・非常勤の公務員ではなく、期限付きの民間委託である。でも、これは公務員組織としていいことなのか。

 給料
 いったいいくら払えるのだろう。埼玉県の公務員給与データを見てみる。
 (①②とも平成23年4月1日現在、県ウェブサイトより)

 ①埼玉県職員の初任給の状況
 一般行政職・大卒178,800円、高卒144,500円
 技能労務職・高卒146,700円
 *高等学校教育職199,700円
 *小・中学校教育職199,700円
 警察職・大卒207,300円、179,000円
 *教育職はいずれも大卒のものである。

 ②職員の経験年数別・学歴別平均給料月額の状況
 一般行政職経験10年・大卒277,817円、高卒229,490円

 いずれも税引き前である。念のため。これ以外に期末勤勉手当(いわゆるボーナス)がある。
 前職の経歴を給与に反映することは、公務員でも民間でもある。経験者を初任給で雇用することはなじまない。でも、NPB選手だったことを、どのような経験と見なすかは難しい問題である。
 現在埼玉県立春日部高等学校定時制事務職員・マラソンランナー川内優輝さんは大卒4年目である。彼はおそらく基本給は20万円程度だろう。もしも彼が体育系の大学(学部)を出て、教員になっているとしたら、もう少し多い。川内さんは普通に仕事をしてその程度。体育の先生が、勤務時間を超えてまで野球部顧問をしていても、基本的にはお給料しか収入はない。
 仮に年齢を基準に②程度を考えると、30歳で一人あたりの年間400万円前後だろう。ただ、これは週5、フルタイムの場合である。勤務時間からして、この半分給与として出せればいい方である。
 継続して雇用するならば、給与も上げなくてはならない。公式戦の遠征は、通常出張である。旅費も発生する。野球部の戦績で実績評価を加味するわけにもいかないだろう。教える方は職業でも、生徒はプロじゃないんだから。

 人事
 正規採用の場合は、前提として定年退職までいることになる。公務員組織には人事異動がある。野球部担当職員が、ある学校では管理職はおろか、すべての教職員よりも在職年数が長い職員になってしまうかもしれない。大阪市の学校の問題を想起させる。一カ所にず~っといる。これは、公務員組織には絶対なじまない。やっぱり常識的には任用期限は必要である。でも、更新更新...これはいけない。
 複数年の期限付き嘱託契約。でも、予算は県予算ということになるのだろうか。上記金額であっても、団費は無理である。学校の運動部は野球部だけではないのだから。野球部生徒の保護者が払うのも無理だろう。それは、学校外のサッカークラブの雇用形態のように見える。いずれにしても、従来の発想では公立高校で雇用するのは無理そうだ。何か新しい仕組みを考えなければいけないだろう。

 管理責任
 高校の野球部。以前勤務していた学校は、強豪野球部がある学校。野球部には顧問が3名。いずれも教諭で部長、監督、コーチがいた。対外的には部長が責任者である。

 学校の部活動中起きたことで、何かあればそれは学校の責任である。事故があった時、校長が責任を取ることになる。大阪市の高校のような事態が発生すれば、原因が誰であっても学校の責任を問われる。それは教諭であれ、NPB元選手であれ関係ない。おかしな言い方かもしれないが、後者は学校カルチャーにこれまで存在しないカテゴリーの(職の)人になる。ある意味、以前取り上げた『民間人校長』と同様、異業・異種である。ALTやスクールカウンセラーのような、教諭でないけど学校にいる(ことがある)、先生のような存在。そんな人になるのかもしれない。

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 現実問題として...
 来年の今頃、埼玉県内のどこかの高校の野球部の関係者から、NPB元選手の採用が提起され、学校で可否を決めることになる。校長独断で決めるか、一応職員会議で意見集約を図るか。いずれにしても校長が決めることになる。元選手をコーチとして学校に迎える。雇用形態はどうあれ、監督、部長は教諭のままである。なかなかプロ野球選手会が喜んでいるような状況には、なりにくい。そんな気がする。

 いろいろ考えてみたのだが、元選手が個人でできることではないだろう。人材派遣、人材プール組織の必要があるのではないか。
 NPB関係者のみなさま。当面は元選手が、母校で後輩を教えても、規則上母校や後輩に迷惑がかからなくなる。そんな小さな変化に留まるだろう。でも、そこからはじめない限り、「セカンドキャリア」なんて、無理な状況であると思う。


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