日本でのタイトルは「オデッセイ」、原題は直球の「THE MARTIAN(火星人)」である。
During a manned mission to Mars, Astronaut Mark Watney is presumed dead after a fierce storm and left behind by his crew. But Watney has survived and finds himself stranded and alone on the hostile planet. With only meager supplies, he must draw upon his ingenuity, wit and spirit to subsist and find a way to signal to Earth that he is alive.(IMDb) |
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火星が舞台の映画として、印象に残っているのはアーノルド・シュワルツェネッガー主演の「トータル・リコール(1990)」と、ゲイリー・シニーズの「ミッション・トゥ・マーズ(2000)」かな。
前者は、人類は火星植民地を築いている。しかし、地球とは異なり大気圧が低く、防護服なしでは地上で活動できない場所として描かれている。後者は、かつて火星にいた知的生命体の痕跡と人類の遭遇を描いた作品と言っていいだろう。いずれも、火星に「人類以外」の知的生命体の存在を前提に描かれた作品である。本作はそのようなことはない。火星にいるのはほぼ全編主人公だけである。
ホントは封切り日に出向きたかったけど、会議の時間が読めなかったので断念。6日いつもと違うMOVIX川口に出かけた。同劇場は初めてである。
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生物学者として火星探査ミッションに参加していた主人公は、取り残されたことに気がつく。彼が使えるものは観測基地と、本来であればクルー全員の火星滞在を担保する食料等サプライのみである。絶望的な状況下で、仮に自分の生存を地球に伝えられたとしても、救出までは年単位の時間がかかる。孤独の中で生き延びるために、まさにそこにあるものを創意工夫して使う。食料、酸素、水。ないものを数えていたらきりがない。主人公は科学の知識を実践に活かしながら、問題を一つ一つ解決、生き延びていく。
ねたばれになるので、あまり細かいことはかけないが、主人公が絶望するシーンはほとんどない。
映画.comのレビューでは『ポジティブな冒険心と科学へのパッションに満ちた爽快なサバイバルSF』という評価。
本作は、あのリドリー・スコット監督作品である。
ゴールデングローブ賞のコメディ・ミュージカル部門の作品賞、男優賞受賞作品である。アカデミー賞でも作品賞候補8本に含まれている。僕は前者の分類は不思議な感じがしていた。後者に含まれたことには、SFが作品賞候補作になり得ることに、かなり驚いていた。そんな構えで映画館に出向いた。作品を見て、GG賞の作品の分類、ドラマ部門かコメディ・ミュージカル部門どっちかと考えれば、『ドラマ部門にはおさまりきらない感』はあると感じた。*
マット・デイモンは主人公マーク・ワトニーの絶望を、悲壮感漂う熱演で見せていないと思う。本作は一昔前の映画のキャッチコピーならば、こんな感じになるような作品である。
ひとり火星に取り残され、絶望の淵に立たされたワトニー宇宙飛行士の運命や如何に...
でも、本作は違う。ある種の開き直り。頭のいい、しぶとい、向こう見ずな主人公が大活躍するものがたりである。
観測基地で主人公がジャガイモを作るシーンは、確かにコメディーの要素を感じた。イギリス人やアメリカ人が見ると、ジャガイモはあるいみ象徴的なのかななんて考えた。
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本作はSF作品としてかなりその科学考証を細かくしている作品である。ただし、"science"に重きを置く人は、引っかかるところがあるだろう。それは火星の重力と気圧の問題である。これは、以前に書いたことだが、ものがたりの舞台設定としてどこまで火星を科学的に描くかの問題でもある。僕は充分楽しめた。
本作はSFの『アポロ13』かもしれない。スコット監督の『プロメテウス』よりも満足度は高い。☆4コかな。
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参考:数値で比べる地球と火星
\ | 地球 | 火星 |
重力 加速度 |
9.8 | 3.72 |
気圧 (Pa) |
101325 | 750 |
重力加速度は地球の37%、気圧は地球の0.74%である。
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*2016年(2015年度)ドラマ部門の作品賞受賞作は『レヴェナント: 蘇えりし者』である。
同部門には『マッドマックス 怒りのデス・ロード』もノミネートされていた。