短い夏期休業期間、今年も英語実音テスト問題の音源CDを借り受け、リスニングテストの分析を実施した。例年通り分析ポイントは、前年度問題形式との比較。変更の有無、wpm*の確認である。
2月26日(金)14時40分、英語学力検査の開始チャイムが鳴る。その数秒後「放送を聞いて答える問題」が始まる。この問題が終わらなければ、他の問題に手をつけることは、実質的に不可能である。令和3年度入試も、試験は全部で7問、求められる解答数が11である。
英語学力検査のリスニングは、平成31年度から問題の解答の仕方の説明以外、すべて英文・英語の音声指示に変更された。令和3年度入試も同様である。
問題1から問題3
会話を聞き、質問に対する答えとして最も適切なものを選ぶ問題である。四者択一、ヒントのイラストがついている。
問題4と問題5
それぞれ「ある場面」を説明する英文を聞き、質問に対する答えとして最も適切なものを選ぶ問題である。四者択一で、英文の答えが出ている。
問題6
新規開店のSweet Saitamaについての報告(ニュース)を聞き、内容に関する三つの質問を聞き取り、問題用紙にある英文の解答から選択する。四者択一問題。
質問は印刷されていない。解答選択肢は印刷されている。
問題7
ミホとALTのフォード先生の会話を聞き、会話の内容に関する三つの質問を読み、解答する。解答は空所補充・文完成を求める形式。
質問は印刷されている。
*問題7以外はすべて〇 or Xの採点になる。
使用音源
令和3年度 英語録音CD1枚
計時使用機材
計時はWindows 10のWMPによる。ストップウオッチも使用。CDプレーヤーを使用。
・・・毎年同じ作業である。
分析手順
①語数とセンテンスの数をカウント。
②何度も聞き直し、各英文の時間を計測。
③問題~問題の間のポーズを計測。
④はじめから、「以上で問題は終わりです」までの実時間を計測。
⑤前年の数値と比較。
①から④は手作業(耳作業)である。
・・・ここも昨年と同じである。
以下、音源CD構成と計時データ
トラック1 音量調整のための放送
試験当日朝に試聴のために用いる。
(試験とは関係ない。)
トラック2 無音
トラック1をかけたままにしていると、注意される。
(間違えて、問題を誤放送させない配慮。)
トラック構成も昨年度と同じである。
トラック3(0:54)
0:00- 「放送を聞いて答える問題」のアナウンス。(日本語)
トラック4(1:14) 問題1
0:01-0:09 問題1から問題3の解答方法の説明(英語)
0:14 問題1放送 1回目
0:34 問題1放送 1回目終了
問題1 Question 1回目
0:44 問題1放送 2回目
1:04 問題1放送 2回目終了
問題1 Question 2回目
問題1は、AとBの会話である。A→Bが2回。20秒で話者2、総語数47語である。
このペースで会話が続いたとすると、20秒は1分の33.3%なので、47を0.33で割る。
141wpmとする。(160)カッコ内は、R.2データである。以下同じ。なお、問題番号(No.1)やLet’s Start.等は計測から除外している。
問題1は過去3年間で最も速度が遅い。
トラック5(0:59) 問題2
0:02 問題2放送 1回目
0:21 問題2放送 1回目終了
問題2 Question 1回目
0:31 問題2放送 2回目
0:50 問題2放送 2回目終了
問題2 Question 2回目
問題2も、AとBの会話である。A→Bが2回。19秒で話者2、総語数42語。
このペースで会話が続いたとすると、19秒は1分の31.6%なので、42を0.31で割る。
133wpm(170)
問題2も過去3年間で最も速度が遅い。
トラック6(0:49) 問題3
0:02 問題3放送 1回目
0:16 問題3放送 1回目終了
問題3 Question 1回目
0:26 問題3放送 2回目
0:40 問題3放送 2回目終了
問題3 Question 2回目
問題3も、AとBの会話。A→Bの回数も同じ。14秒で話者2、総語数35語。
このペースで会話が続いたとすると、14秒は1分の23.3%なので、35を0.23で割る。
150wpm(152)
トラック7(0:57) 問題4
0:01 問題4と問題5の解答方法の説明(英文)
0:10 説明終了
0:15 問題4放送 1回目
0:25 問題4放送 1回目終了
問題4 Question 1回目
0:36 問題4放送 2回目
0:46 問題4放送 2回目終了
Question 2回目
この問題は「ある場面」についての説明文を聞き、それについて解答を求めるものである。10秒で話者1、総語数26語、センテンス数3。
このペースで発話が続いたとすると、10秒は1分の16.6%なので、30を0.16で割る。
156wpm(180)
トラック8(0:48) 問題5
0:02 問題5放送 1回目
0:14 問題5放送 1回目終了
問題5 Question 1回目
0:25 問題5放送 2回目
0:37 問題5放送 2回目終了
問題2 Question 2回目
問題5も問題4と同じパターン。12秒で話者1、総語数31語、センテンス数3。
このペースで発話が続いたとすると、12秒は1分の20.0%なので、31を0.2で割る。
155wpm(167)
トラック9(3:29) 問題6
0:01 問題6の解答方法
Listen to the talk about a new candy shop, Sweet Saitama, and choose the best answer for questions 1, 2 and 3. Let's start.
0:11 説明終了
0:13 問題6放送 1回目
1:10 問題6放送 1回目終了
Questions 1, 2, and 3
1:51 問題6放送 2回目
2:48 問題6放送 2回目終了
Questions 1,2, and 3
Sweet Saitamaの説明を聞き、質問を聞き取り、答える(選択する)問題。57秒。総語数136語、センテンス数12。
このペースで会話が続いたとすると、57秒は1分の95%なので、136を0.95で割る。
143wpm(143)
なお、トラックの長さは3:29だが、録音は3:20で終了。最後の問題までの間10秒弱空白になる。
トラック10(3:21) 問題7
0:01 問題7の解答方法の説明
Listen to the talk between Miho and Mr. Ford, an ALT from London, and read the questions. Then write the answer in English for questions 1, 2 and 3. Let's start.
0:15 説明終了
0:18 問題7放送 1回目
1:35 問題7放送 1回目終了
1:45 問題7放送 2回目
3:02 問題7放送 2回目終了
ミホとALTのフォード先生の会話を聞き取り、内容についての質問を読み、解答をする問題。解答は空所補充して文を完成させるもの。
77秒で話者2、総語数179語、センテンス数23である。
このペースで二人の会話が続いたとすると、77秒は1分の128%なので、179を1.28で割る。
139wpm(153)
なお、問題7(トラック10)の3:13のところで、「放送を聞いて答える問題」の終了が告げられる。午後2時40分の英語試験開始のチャイムから、ここまでが12分半。残り試験時間が37分半程度。
リスニングテストの配点は100点満点中28点である。
wpm比較
Questions | H29 | H30 | H31 | R2 | R3 | ||
1 | words | 40 | 34 | 43 | 48 | 47 | |
seconds | 15 | 12 | 16 | 18 | 20 | ||
wpm | 160 | 170 | 161 | 160 | 141 | ▼ | |
2 | words | 57 | 40 | 26 | 34 | 42 | |
seconds | 21 | 16 | 10 | 12 | 19 | ||
wpm | 163 | 150 | 156 | 170 | 133 | ▼ | |
3 | words | 53 | 39 | 46 | 38 | 35 | |
seconds | 22 | 13 | 16 | 15 | 14 | ||
wpm | 145 | 186 | 173 | 152 | 150 | ▼ | |
4 | words | 27 | 28 | 30 | 30 | 26 | |
seconds | 12 | 9 | 11 | 10 | 10 | ||
wpm | 135 | 187 | 164 | 180 | 156 | ▼ | |
5 | words | 28 | 27 | 29 | 39 | 31 | |
seconds | 10 | 9 | 10 | 14 | 12 | ||
wpm | 175 | 180 | 174 | 167 | 155 | ▼ | |
6 | words | 141 | 188 | 185 | 195 | 136 | |
sentences | 25 | 23 | 22 | 20 | 12 | ||
seconds | 57 | 72 | 70 | 82 | 57 | ||
wpm | 148 | 157 | 159 | 143 | 143 | ±0 | |
7 | words | 209 | 212 | 229 | 163 | 179 | |
sentences | 18 | 12 | 14 | 22 | 23 | ||
seconds | 79 | 77 | 85 | 64 | 77 | ||
wpm | 160 | 166 | 162 | 153 | 139 | ▼ |
words:語数
sentences:文の数
seconds:英語の流れた時間(単位:秒)
wpm:1分間でどのくらいの語数を聞き取ることになるか。
は、令和2年度との比較。△は数値が増加したもの、▼はその逆である。
【注意】
問題6と問題7は平成31年度と令和2年度でと出題形式が入れ替わっている。
・平成31年度入試
問題6が会話問題、問題7がスピーチの聞き取り問題。
・令和2年度入試
問題6が話者1の聞き取り問題。問題7が会話問題。
令和3年度入試は令和2年度入試のパターンを踏襲している。
令和2年度との比較は以下の通り。
問題1:易化
問題2:易化
問題3:易化
問題4:易化
問題5:易化
問題6:変化なし
問題7:易化
(計測ミスがなければだが)すべて易化している。易化の理由だが、総語数に着目した。令和3年度入試リスニングにおける顕著な変化は、「聞き取るべき総語数」だと思う。
R3 496 544
R2 547 568
H31 588 570
H30 568 569
H29 555
H28 584
左から実施年度、総語数、実施年度を含む3年間平均。
やはりどう見ても少ない。平均値もこのため544である。問題形式、実施時間が大きく変わらず、聞き取るべき語数が前年比マイナス50近い。やはり新型コロナ対応といわざるを得ないだろう。
なお、リスニング問題の出題形式は平成29年度から平成31年度、毎年変更されている。
平成29年度は、解答の仕方、問題1から問題7が、日本語で設問が示され、日本語で放送がある。
平成30年度は、解答の仕方、問題1から問題6が、日本語で設問が示され、日本語で放送がある。問題7は英語で設問が示され、英語で放送がある。
平成31年度は、解答の仕方が日本語で示され、日本語で放送がある。問題1から問題7が、英語で設問が指示され、英語で放送がある。
少しずつ難しくしている。令和3年度入試は前年度入試と同じである。
「令和3年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施状況」によれば、学力検査の得点の平均は以下のとおりである。(全日制の課程,受検者平均点【第9表】より
過去のデータもあわせて表を作成している。
\ | 学力検査問題 | 選択問題 | |||||
国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | 数学 | 英語 | |
R.3 | 68.7 | 62.6 | 62.2 | 56.2 | 51.4 | 56 | 61.6 |
39,035 | 39,035 | 29,376 | 39,035 | 29,376 | 9,659 | 9,659 | |
R.2 | 57.2 | 55.4 | 67.9 | 55.1 | 52.2 | 55.2 | 58.9 |
41,206 | 41,206 | 31,796 | 41,206 | 31,796 | 9,410 | 9,410 | |
H.31 | 58.3 | 60.3 | 42.3 | 44.5 | 47.7 | 53.5 | 64.3 |
43,424 | 43,424 | 33,564 | 43,424 | 33,564 | 9,860 | 9,860 | |
H.30 | 52.8 | 55.9 | 44 | 51.7 | 55.9 | 43.7 | 58.9 |
44,362 | 44,362 | 34,560 | 44,362 | 34,560 | 9,802 | 9,802 | |
H.29 | 53.3 | 60.6 | 44.4 | 48.5 | 52 | 43.2 | 71.9 |
46,455 | 46,455 | 36,513 | 46,455 | 36,513 | 9,942 | 9,942 |
年度ごと、上段が平均点、下段が受検者数である。なお、平均点は全日制5教科受検者の得点より算出している。
平成29年度入試から、英語(と数学)は学力検査問題(いわゆる普通の問題)と学校選択問題の2種類の問題が学校単位で選択制で実施されている。平均点を見ると、後者に当初3年間(平成31年度まで)年度ごとのふらつきを感じる。作問は努力していると思うが、結果に「安定感」がない。これは受験生数を考えるとやむを得ないとも言えるが、いっそうの改善が求められることだと思う。
選択問題実施校は、県立高校としてはアカデミック・レベルの高いとされる学校である。実施科目である英数の点数と、国社理の点数の平均点の差違があまり顕著なのは、好ましいことではない。令和2年度入試においては、平成29年度、同31年度のように、大きな差は見られなかったが、令和3年度は、やや問題ありである。
なお、問題、正答、データ分析は、埼玉県総合教育センターウェブサイトで公開されている。
https://www.center.spec.ed.jp/(新しいウインドで開きます。)
(メニューの「入試情報・説明会案内」から)
・平成31年度~令和3年度の問題を公開中である。
今年も分析をするために、東京新聞ウェブサイトの『首都圏公立高校入試特集ページ』を参考にした。問題を見るのならば、このサイトを利用するといい。関東地方の公立高校入試問題を、PDFでアップロードしている非常によくできたサイトである。毎年使わせてもらっている。特記する。
アドレスはこちら。(新しいウインドで開きます。)
https://www.tokyo-np.co.jp/tags/exam
*このエントリにおけるwpmの出し方(考え方)については、こちらです。
2010-03-11
「wpm」