全英連参加者のブログ

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令和3年度埼玉県公立高等学校入試英語リスニングテスト分析

2021-10-12 04:00:00 | 教師の仕事 2021+a

 短い夏期休業期間、今年も英語実音テスト問題の音源CDを借り受け、リスニングテストの分析を実施した。例年通り分析ポイントは、前年度問題形式との比較。変更の有無、wpm*の確認である。


 2月26日(金)14時40分、英語学力検査の開始チャイムが鳴る。その数秒後「放送を聞いて答える問題」が始まる。この問題が終わらなければ、他の問題に手をつけることは、実質的に不可能である。令和3年度入試も、試験は全部で7問、求められる解答数が11である。
 英語学力検査のリスニングは、平成31年度から問題の解答の仕方の説明以外、すべて英文・英語の音声指示に変更された。令和3年度入試も同様である。

 問題1から問題3
 会話を聞き、質問に対する答えとして最も適切なものを選ぶ問題である。四者択一、ヒントのイラストがついている。
 問題4と問題5
 それぞれ「ある場面」を説明する英文を聞き、質問に対する答えとして最も適切なものを選ぶ問題である。四者択一で、英文の答えが出ている。
 問題6
 新規開店のSweet Saitamaについての報告(ニュース)を聞き、内容に関する三つの質問を聞き取り、問題用紙にある英文の解答から選択する。四者択一問題。
 質問は印刷されていない。解答選択肢は印刷されている。
 問題7
 ミホとALTのフォード先生の会話を聞き、会話の内容に関する三つの質問を読み、解答する。解答は空所補充・文完成を求める形式。
 質問は印刷されている。
 *問題7以外はすべて〇 or Xの採点になる。

 使用音源
 令和3年度 英語録音CD1枚

 計時使用機材
 計時はWindows 10のWMPによる。ストップウオッチも使用。CDプレーヤーを使用。
 ・・・毎年同じ作業である。

 分析手順
 ①語数とセンテンスの数をカウント。
 ②何度も聞き直し、各英文の時間を計測。
 ③問題~問題の間のポーズを計測。
 ④はじめから、「以上で問題は終わりです」までの実時間を計測。
 ⑤前年の数値と比較。
 ①から④は手作業(耳作業)である。
 ・・・ここも昨年と同じである。

 以下、音源CD構成と計時データ

 トラック1 音量調整のための放送
 試験当日朝に試聴のために用いる。
 (試験とは関係ない。)

 トラック2 無音
 トラック1をかけたままにしていると、注意される。
 (間違えて、問題を誤放送させない配慮。)
 トラック構成も昨年度と同じである。

 トラック3(0:54)
 0:00- 「放送を聞いて答える問題」のアナウンス。(日本語)

 トラック4(1:14) 問題1
 0:01-0:09 問題1から問題3の解答方法の説明(英語)
 0:14 問題1放送 1回目
 0:34 問題1放送 1回目終了
 問題1 Question 1回目
 0:44 問題1放送 2回目
 1:04 問題1放送 2回目終了
 問題1 Question 2回目
 問題1は、AとBの会話である。A→Bが2回。20秒で話者2、総語数47語である。
 このペースで会話が続いたとすると、20秒は1分の33.3%なので、47を0.33で割る。
 141wpmとする。(160)カッコ内は、R.2データである。以下同じ。なお、問題番号(No.1)やLet’s Start.等は計測から除外している。
 問題1は過去3年間で最も速度が遅い。

 トラック5(0:59) 問題2
 0:02 問題2放送 1回目
 0:21 問題2放送 1回目終了
 問題2 Question 1回目
 0:31 問題2放送 2回目
 0:50 問題2放送 2回目終了
 問題2 Question 2回目
 問題2も、AとBの会話である。A→Bが2回。19秒で話者2、総語数42語。
 このペースで会話が続いたとすると、19秒は1分の31.6%なので、42を0.31で割る。
 133wpm(170)
 問題2も過去3年間で最も速度が遅い。

 トラック6(0:49) 問題3
 0:02 問題3放送 1回目
 0:16 問題3放送 1回目終了
 問題3 Question 1回目
 0:26 問題3放送 2回目
 0:40 問題3放送 2回目終了
 問題3 Question 2回目
 問題3も、AとBの会話。A→Bの回数も同じ。14秒で話者2、総語数35語。
 このペースで会話が続いたとすると、14秒は1分の23.3%なので、35を0.23で割る。
 150wpm(152)

 トラック7(0:57) 問題4
 0:01 問題4と問題5の解答方法の説明(英文)
 0:10 説明終了
 0:15 問題4放送 1回目
 0:25 問題4放送 1回目終了
 問題4 Question 1回目
 0:36 問題4放送 2回目
 0:46 問題4放送 2回目終了
 Question 2回目
 この問題は「ある場面」についての説明文を聞き、それについて解答を求めるものである。10秒で話者1、総語数26語、センテンス数3。
 このペースで発話が続いたとすると、10秒は1分の16.6%なので、30を0.16で割る。
 156wpm(180)

 トラック8(0:48) 問題5
 0:02 問題5放送 1回目
 0:14 問題5放送 1回目終了
 問題5 Question 1回目
 0:25 問題5放送 2回目
 0:37 問題5放送 2回目終了
 問題2 Question 2回目
 問題5も問題4と同じパターン。12秒で話者1、総語数31語、センテンス数3。
 このペースで発話が続いたとすると、12秒は1分の20.0%なので、31を0.2で割る。
 155wpm(167)

 トラック9(3:29) 問題6
 0:01 問題6の解答方法
 Listen to the talk about a new candy shop, Sweet Saitama, and choose the best answer for questions 1, 2 and 3. Let's start.
 0:11 説明終了
 0:13 問題6放送 1回目
 1:10 問題6放送 1回目終了
 Questions 1, 2, and 3
 1:51 問題6放送 2回目
 2:48 問題6放送 2回目終了
 Questions 1,2, and 3
 Sweet Saitamaの説明を聞き、質問を聞き取り、答える(選択する)問題。57秒。総語数136語、センテンス数12。
 このペースで会話が続いたとすると、57秒は1分の95%なので、136を0.95で割る。
 143wpm(143)
 なお、トラックの長さは3:29だが、録音は3:20で終了。最後の問題までの間10秒弱空白になる。

 トラック10(3:21) 問題7
 0:01 問題7の解答方法の説明
 Listen to the talk between Miho and Mr. Ford, an ALT from London, and read the questions. Then write the answer in English for questions 1, 2 and 3. Let's start.
 0:15 説明終了
 0:18 問題7放送 1回目
 1:35 問題7放送 1回目終了
 1:45 問題7放送 2回目
 3:02 問題7放送 2回目終了
 ミホとALTのフォード先生の会話を聞き取り、内容についての質問を読み、解答をする問題。解答は空所補充して文を完成させるもの。
 77秒で話者2、総語数179語、センテンス数23である。
 このペースで二人の会話が続いたとすると、77秒は1分の128%なので、179を1.28で割る。
 139wpm(153)
 なお、問題7(トラック10)の3:13のところで、「放送を聞いて答える問題」の終了が告げられる。午後2時40分の英語試験開始のチャイムから、ここまでが12分半。残り試験時間が37分半程度。
 リスニングテストの配点は100点満点中28点である。


 wpm比較

Questions H29 H30 H31 R2 R3  
1 words 40 34 43 48 47  
seconds 15 12 16 18 20  
wpm 160 170 161 160 141
2 words 57 40 26 34 42  
seconds 21 16 10 12 19  
wpm 163 150 156 170 133
3 words 53 39 46 38 35  
seconds 22 13 16 15 14  
wpm 145 186 173 152 150
4 words 27 28 30 30 26  
seconds 12 9 11 10 10  
wpm 135 187 164 180 156
5 words 28 27 29 39 31  
seconds 10 9 10 14 12  
wpm 175 180 174 167 155
6 words 141 188 185 195 136  
sentences 25 23 22 20 12  
seconds 57 72 70 82 57  
wpm 148 157 159 143 143 ±0
7 words 209 212 229 163 179  
sentences 18 12 14 22 23  
seconds 79 77 85 64 77  
wpm 160 166 162 153 139

 words:語数
 sentences:文の数
 seconds:英語の流れた時間(単位:秒)
 wpm:1分間でどのくらいの語数を聞き取ることになるか。
    は、令和2年度との比較。△は数値が増加したもの、▼はその逆である。

 【注意】
 問題6と問題7は平成31年度と令和2年度でと出題形式が入れ替わっている。
 ・平成31年度入試
  問題6が会話問題、問題7がスピーチの聞き取り問題。
 ・令和2年度入試
  問題6が話者1の聞き取り問題。問題7が会話問題。
  令和3年度入試は令和2年度入試のパターンを踏襲している。

 令和2年度との比較は以下の通り。
 問題1:易化
 問題2:易化
 問題3:易化
 問題4:易化
 問題5:易化
 問題6:変化なし
 問題7:易化
 (計測ミスがなければだが)すべて易化している。易化の理由だが、総語数に着目した。令和3年度入試リスニングにおける顕著な変化は、「聞き取るべき総語数」だと思う。

 R3 496 544
 R2 547 568
 H31 588 570
 H30 568 569
 H29 555
 H28 584
 左から実施年度、総語数、実施年度を含む3年間平均。
 やはりどう見ても少ない。平均値もこのため544である。問題形式、実施時間が大きく変わらず、聞き取るべき語数が前年比マイナス50近い。やはり新型コロナ対応といわざるを得ないだろう。

 なお、リスニング問題の出題形式は平成29年度から平成31年度、毎年変更されている。
 平成29年度は、解答の仕方、問題1から問題7が、日本語で設問が示され、日本語で放送がある。
 平成30年度は、解答の仕方、問題1から問題6が、日本語で設問が示され、日本語で放送がある。問題7は英語で設問が示され、英語で放送がある。
 平成31年度は、解答の仕方が日本語で示され、日本語で放送がある。問題1から問題7が、英語で設問が指示され、英語で放送がある。
 少しずつ難しくしている。令和3年度入試は前年度入試と同じである。


 「令和3年度埼玉県公立高等学校入学者選抜実施状況」によれば、学力検査の得点の平均は以下のとおりである。(全日制の課程,受検者平均点【第9表】より
 過去のデータもあわせて表を作成している。

学力検査問題 選択問題
国語 社会 数学 理科 英語 数学 英語
R.3 68.7 62.6 62.2 56.2 51.4 56 61.6
39,035 39,035 29,376 39,035 29,376 9,659 9,659
R.2 57.2 55.4 67.9 55.1 52.2 55.2 58.9
41,206 41,206 31,796 41,206 31,796 9,410 9,410
H.31 58.3 60.3 42.3 44.5 47.7 53.5 64.3
43,424 43,424 33,564 43,424 33,564 9,860 9,860
H.30 52.8 55.9 44 51.7 55.9 43.7 58.9
44,362 44,362 34,560 44,362 34,560 9,802 9,802
H.29 53.3 60.6 44.4 48.5 52 43.2 71.9
46,455 46,455 36,513 46,455 36,513 9,942 9,942

 年度ごと、上段が平均点、下段が受検者数である。なお、平均点は全日制5教科受検者の得点より算出している。
 平成29年度入試から、英語(と数学)は学力検査問題(いわゆる普通の問題)と学校選択問題の2種類の問題が学校単位で選択制で実施されている。平均点を見ると、後者に当初3年間(平成31年度まで)年度ごとのふらつきを感じる。作問は努力していると思うが、結果に「安定感」がない。これは受験生数を考えるとやむを得ないとも言えるが、いっそうの改善が求められることだと思う。
 選択問題実施校は、県立高校としてはアカデミック・レベルの高いとされる学校である。実施科目である英数の点数と、国社理の点数の平均点の差違があまり顕著なのは、好ましいことではない。令和2年度入試においては、平成29年度、同31年度のように、大きな差は見られなかったが、令和3年度は、やや問題ありである。


 なお、問題、正答、データ分析は、埼玉県総合教育センターウェブサイトで公開されている。
 https://www.center.spec.ed.jp/(新しいウインドで開きます。)
 (メニューの「入試情報・説明会案内」から)
 ・平成31年度~令和3年度の問題を公開中である。
 今年も分析をするために、東京新聞ウェブサイトの『首都圏公立高校入試特集ページ』を参考にした。問題を見るのならば、このサイトを利用するといい。関東地方の公立高校入試問題を、PDFでアップロードしている非常によくできたサイトである。毎年使わせてもらっている。特記する。
 アドレスはこちら。(新しいウインドで開きます。)
 https://www.tokyo-np.co.jp/tags/exam

 *このエントリにおけるwpmの出し方(考え方)については、こちらです。
 2010-03-11
 「wpm


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