僕は’21年3月末、定年退職した。その1年前の’20年3月、Aさんは校長で定年退職した。 1983年4月1日の新任式(辞令交付式)の午後、初任校までのバスに乗るために、僕はとある国鉄駅前バス乗り場にいた。 「〇〇高校ですか? それが出会いだった。あとで聞くと外見で新社会人、新任の先生と判断したとのこと。 Aさんは3年半前に退職、どこかに再就職したか、一時期かなり調査した。元同僚が退職後、大学で教員養成系科目を担当。Aさんならば、引く手あまたのはず。必ずどこかでと考えた。Teachers' Teacherに、彼ほど相応しい人物はいないからだ。 でも、見つからなかった。あることから、悠々自適の隠退生活と考えることにしていた。 彼の再就職先を探していたころ、イヤな夢を見た。葬式(?)で僕が弔辞を読んでいるのだ。遺影を見上げているが、顔がわからない。奇妙で怖い感覚だ。親戚の葬式以外、僕が話すことはない。ああ、夢なんだ。そう思った。次の瞬間、僕はこんなことを言い始めた。 「Aセンセ、覚えていますか。初めて会った日を... そこで目が覚めた。Aさんの葬式なのだ。 文化祭のとき、待機時間に同僚と話しをしていた、自分の昔ばなしから、Aさんの話題になった。同僚はAさんが初任校の次の転勤先で、1年間講師をしていたという。その30数年後、顧問を勤める部活動統括団体会長のAさんと再会したとのこと。きちんと同僚のことは覚えていたそうだ。いかにもAさんらしい... そして思いもよらないことを聞いた。病気で亡くなられたとのこと。 知らなかった。 何で彼が、あんな優秀な人が、いないんだ。 話さなければよかった、そうすれば知らずにすんだのに。 |