ここ数日、
「東京電力は自力で復旧や保証をする能力が無いから国が保証すると発表した」とか、「ボランティアを騙って空き巣に入って泥棒家業で稼ぐ輩がいる」とか、「セリーグがセパ同時開幕を回避の姿勢」とか、「東京との水道から放射性ヨウ素検出」といったニュースを目にすると、滅入ることしきり。
ろくでもないことばかりなので、元気が出る映画を見たいと思い、家族を伴って公開中のディズニーのミュージカルアニメ映画「塔の上のラプンツェルン」(IMAX 3D字幕スーパー版)を鑑賞してきた。
震災で大変な時に映画なんて、と思われるかもしれないが、それはちょっと違う。
こういうときにこそ映画を見よう。
心の平安をサポートできる人類が生み出した最高のエンタテイメント、それは「映画」あると、私は固く信じているのだ。
予め希望を述べると「ダムの決壊」という今時にはちょっと、と考えてしまうシーンが一カ所だけあるものの、ディズニー社には是非この映画を被災地で無償上映し、被災した人たちにひとときの楽しみと希望を与えていただきたいと思うくらい元気をくれる映画なのだ。
そもそも、私はミュージカル映画が大好きだ。
それは人が演じるものでも、アニメ作品でも変わらない。
このミュージカル大好きになったのは中学生のときに何気なくテレビのチャンネルを合わせたゴールデン洋画劇場で放送された「ザッツ・エンタテイメント」を見たのがきっかけだった。
この映画は1930年代から50年代に公開されたMGMの黄金時代のミュージカル作品のハイライトを集めたものだった。
数々の名シーンが連続するのだが、そのインパクトは紅白歌のベストテンやレッツゴーヤングぐらいしか歌番組を知らない洟垂れ小僧の私には強烈なものなのであった。
とりわけジーン・ケリーの元気なダンスやフレッド・アステアの優雅な踊り、レスリーキャロンの可愛らしさ、フランク・シナトラのヘタッピだけど妙に味のあるやんちゃな歌などが強く印象に残ったのであった。
以来、ミュージカル映画が公開されると劇場に足を向けるようになった。
また、アニメのミュージカルについては物心がついた頃に東映アニメ「長靴をはいた猫」やNHK人形劇「ひょっこりひょうたん島」を夢中になって見たために抵抗感がまったくなく、その楽しかった映画が潜在意識の中に蓄積されていたのだった。
そんなこんなで、近年ではそのミュージカル好きがエスカレートし舞台のミュージカルも楽しむようになった。
それも劇団四季ではなく、本場ブロードウェイの来日公演がお気に入りで、大阪で何か目立った公園がある時は、高いチケットを工面して購入し、劇場に足を運んでいる。
「ニューヨークに行きたい」
と我がままを言って叱られることもしきりである。
実のところ「塔の上のラプンツェルン」については、当初まったく関心がなかった。
どうせいつものディズニー映画だと思っていたのだ。
ピクサーではない新作ディズニー映画に対する私の関心はあまり高くない。
ところがある日、愛読してる週刊誌の映画評欄で、いつもは酷評でならした五人の評論家がこぞって4つ星か5つ星の高得点を与えていたのに目が止まった。
しかもその一個の批評に、
「まるでブロードウェイの舞台ミュージカルを見ているように興奮した」
というような意味合いが書かれていて、これは観なければと、めずらしく鑑賞映画候補リストに加えていたのであった。
時節柄、映画館はガラガラなのであった。
私たち親子3人がシアターに入ると客は一人もおらず貸し切り状態。
無人の映画館で予告編と広告だけが流れている状態になっているのであった。
後方中央部の席に付き、貸し切り状態を喜んでいると、あとから4人ほど観客が入ってきた。
それでも私たちと合わせて10人にも満たない劇場は、正直なんだか寂しいのであった。
そんな寂しさを吹き飛ばすように、物語は開始と同時に息も付かせぬブロードウェイミュージカルそのままの店舗で展開し始めた。
隙無し、テンポよし、CGとは思えない美しい映像には思わず息をのんだ。
キャラクターの表情もCGアニメとは思えない魅力があり、事実、物語に没頭しているとCGアニメであることを忘れてしまうくらいのアニメとしてのリアリティが溢れていたのだ。
各所で見せる踊り、歌。
キャラクターが演じる一つ一つのシーンが舞台のミュージカルを彷彿させる心地よい汗の匂いを感じさせたのであった。
「このディズニー映画。ピクサーでもないのにすごいテクニックや」
と感動していてタイトルクレジットを見ると、なんと製作総指揮はピクサーのジョン・ラセターなのであった。
アメリカ映画お得意の超楽観主義的雰囲気がないこともないが、一つ一つのエッセンスが洗練されているために、そんなことはどうでも良くなり、主人公とそれを取り巻くバイキングのような悪人集団(実は良い人たち)や王や王妃に知らず知らずのうちに感情移入して、笑いあり、涙ありの超エンタテイメントを楽しむことができていたのだった。
なお、最っも印象深いキャラクターは近衛兵の白い馬。
このキャラクターの表情や動作を見るだけでも一見の価値あり。
どんな苦しいときでも幸せになれる稀な映画なのであった。
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