<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
宇宙エンタメ前哨基地



小学校の低学年くらいまで、私はお菓子と言えばチョコレートしか食べない妙な子供なのであった。

おかきやせんべいは好みでない。
飴やガムは舐めたり噛んだりするのが面倒くさい。
マシュマロやグミの食感は最悪。
ウエハスの類いは口の中にペチャペチャと破片がくっつくので大嫌い。

なぜか、チョコレートだけが大丈夫なのであった。

とはいうものの、チョコレートは今も昔も安くなく、なんとなく虫歯の原因候補ナンバーワンと思えるような予感も変わらない。
したがって、そう再々食べさせてもらえるわけではなく、食べさせてもらえても、昭和40年代、私と母が勝手に「棒チョコ」と呼んでいた駄菓子系のチョコレートか、チューブに入ったこれまた駄菓子系のチョコレートを買ってもらうのが関の山で、ロッテや森永、明治といったメーカーのチョコはメめったと口にすることはなかったように記憶している。
ちなみに、たんまに父が飲み屋からもらってくるウィスキーボンボンと外国製のチョコレートは最悪の味だと思っていた。

この「虫歯の原因」と勝手に思っていたチョコレートは実は昔「医薬品」として使われていたことを知って驚いたのだった。

武田尚子著「チョコレートの世界史~近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石」(中公新書)には、チョコレートが生み出された歴史的背景と、チョコレートがもたらした様々な文化が記されていた。
身近なお菓子、チョコレートがこんなにも様々な背景を抱えていたとは、実のところ想像することもなかったのだ。

知ってて当たり前なのかも知れないが、チョコレートの原料「カカオ」は南米原産。
つまりチョコレートもトマトや唐辛子と同様に大航海時代がもたらした産物であったわけだ。
しかし、トマトや唐辛子と違ってカカオはその使い方が最初はよくわからなかった。
カカオからココアへと進化して、さらにチョコレートになるためにはずいぶん時間を要して、私たち一般人の手元に届いたのは20世紀を迎えるころ、というのにも驚いたのだった。

そのなかでも意外だったのは、当初、チョコレートの原型であるココアは滋養強壮を狙った薬品として扱われていたということだった。
確かにココアにしろチョコレートにしろカロリーが高く、体力を消耗しているときには有効な食品であることは、なにかの本で読んだことはあったものの、まさか医薬品として扱われていたとは知らなかった。

虫歯の原因、チョコレートは医薬品だったというわけだ。

ともかく、チョコレートのあれやこれや。
チョコレートの歴史は、近代菓子の重要な要素なのだと思ったのであった。



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )