今年の春の初め頃、買い物に出かけた先のDIYショップで「唐辛子」の苗を見つけた。
1つ200円ほどだったの3つ買い求めてきて家の裏庭に植えて育ててみることにしたのだった。
「どこに植えたん。こんな近くに植えたらえらいことになるで」
園芸、というものを全く知らない私は、3つの苗を20センチ間隔くらいに植えて叱らた。
大きくなったときに収拾がつかなくなるのだという。
「そんなこと知るかい!」
とは思ったものの、確かに20センチ間隔だと大きくなったら隣通しが混み混みで大変なことになってしまうな、と思って植え変えたところ、1つ枯れて死んでしまったのであった。
幸いなことに残りの2つは元気に育ってついに花が咲き実をつけるまでに成長。
先週最初の収穫をしたところだ、といっても片手の手のひらに乗るほどの量しかなかったけれども。
で、どうして庭いじりなどしない私が唐辛子を育てたのかというと、ふと、6年ほど前、ミャンマーのヤンゴンからマンダレーまでを旅行した時のことを思い出したからなのだった。
その時私はヤンゴンからマンダレーまで列車で移動し、その後、船でエヤワディ川(日本ではイワラジ川とも言う)を川下りして遺跡の街バガンを訪れようと思ったのだった。
この列車プラス船の旅が苦難に満ちたことは時々紹介しているのでご存知の方も多かろうと思う。
この時、十時間以上遅れて走っていた列車の車窓というか、開けっ放しの扉からぼんやり眺めていた沿線の風景で最も印象に残ったのが延々と続く「唐辛子の畑」なのであった。
実のところ、ミャンマーへ行くまで私は唐辛子が育てられているのを実際に見たことがなかった。
子供の頃によく岡山の祖父母の家へ遊びに行ったので、都会育ちの私も田植え、稲刈りの経験はあったのだが、唐辛子の育っているところを見たことがなかった。
「あれ、唐辛子の木ですよ」
とボンヤリと景色を眺めている私に教えてくれたのはガイドのTさんなのでった。
クリスマスツリーと似たり寄ったりの大きさの緑の木。
あれが唐辛子なのかと、初めて見た唐辛子に異国を感じた。
ミャンマーはあちらこちらへ訪問したのだが、どこへいっても唐辛子を育てているところは多く、田舎の道に筵を広げて唐辛子を天日干ししている様子を頻繁に見かけた。
赤。
黄。
橙。
緑。
などなど。
唐辛子はカラフルで美しい植物なのであった。
裏庭に無事唐辛子が実り、たくさんの実をつけた様子を見ると、来年はもっとたくさんの唐辛子を育てて、ミャンマーのあの車窓の景色や、田舎道の景色のように、色とりどりの「夏」を演出できれば楽しいのではないか、と思うのであった。
なお、我が家の唐辛子の味は、まだ試していない。
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