
地下鉄大江戸線の本郷三丁目を下車して交差点近くのラーメン屋でチャーハンセットを食べた。
650円。
東京にしてはやけに安い。
初めて上京した1980年代、東京駅でカレーライスを食べたのだが、あまりに高いので驚いた。
ビーフカレーが800円もしたのだ。
当時、私は大阪難波の映画館、南街劇場の地下にあった阪急ボックスカレーでよくビーフカレーを食べていた。
ここのカレーは美味い上に400円とすこぶる安く、私にはそれが外食カレーのスタンダードになっていたのだ。
そんなこともあって、
「東京は食べ物の高いところや。こんなところに住めるんやろか」
と心配になっていたら、めでたく第一志望の東京の大学を不合格。
浪人生活はしたくなかったし、する勇気もなかったので合格していた第二志望の大阪の大学に入学。
以後、大阪に住み続けるきっかけになった。
ラーメンは九州ラーメンでチャーハンの量も普通にあり全部平らげたら食べ過ぎになってしまった。
やはり本郷三丁目は学生の街なのであった。
この本郷三丁目の近くにあるのが、かの東京大学で、なんの因果か東京の私大、しかも芸術学部を落っこちた私が仕事で時々訪れるようになったのは5年ほど前のこと。
毎月1度はこの本郷キャンパスか千葉の柏キャンパスを訪れる。
この東京大学本郷キャンパスの一番の魅力は四季折々に見せるキャンパスの景観だ。
春、桜の季節の美しさ。
夏の深い緑。
秋の紅葉。
冬の灰色の風景。
建築物が「さすが東大」というぐらいにボロっちいい、もとい、洒落た昔の建築物なので景色がいい。
写真を写すには絶好のロケーションなのだ。
ということで、今週初めにラーメンとチャーハンで満腹感いっぱいの私が赤門を潜ろうとキャンパスに入っていくと、突如と視界に広がってきたのは、色づいた樹々の絶景なのであった。
もちろんデジカメを鞄から取り出して、シャッターを「シャカッ、シャカッ」と切る。
あっちもすごい、こっちもすごい。
と本郷キャンパスのあちこちを撮影しているうちに打ち合わせの時間が迫ってくる頃には食べ過ぎのお腹も少しく落ち着いた。
650円は、案外スカスカだったのかも、と思ったのであった。

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