<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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六本木の東京ミッドタウンにある21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「土木展」を訪れてきた。
土木工事をアートする、とは一体どんなものなのか。
行く前からかなり好奇心が刺激されるものがあったのだが、若干予測はしていたものの「体験型夏休み子ども向けアート展」の様相を呈していたのであった。

そもそも河川工事や橋梁工事、下水道や上水道、ビルの基礎工事、地下街の構築など、ちょっと考えるとアートと結びつけるのはかなり困難に見えるジャンルがテーマだ。
建築現場のそれも重機を駆使して穴を掘ったり、地下に潜ったり、水をせき止めたりする工事は、どう考えても「熱い男たちのシゴトバ」のイメージがつきまとう。
ガガガガガ、っと音とたたて岩盤を削るさく岩機。
どっか〜ん!と爆発するダイナマイト。
汗を流し、泥に塗れ、時として命を危険に晒しながら、且つ高度な技術で人々のより過ごしやすい都市を構築していく仕事。
そういうイメージが「土木」にはある。

それをあのDESIGN SIGHTでアートするというのだから、必見なのであった。

多くは体験型と立体模型や巨大なスクリーンによる映像で構成されていた。
入ったところには大きなスケッチが掲示されていた。
東京のまちづくりの計画図なのであった。
渋谷、東京、新宿、そしてなぜか六甲山から見た大阪湾。
どれもこれも私の仕事とは直接結びつかないものの、なかなか興味深いものなのであった。
中の展示室では大きな三面スクリーンに土木工事の様子を捉えたノンフィクションのフィルムから編集によるアブストラクト的な作品が上映されていて、これはこれでかなりの迫力を感じた。
そして土木技術や作品そのものよりも、その作品を投影しているプロジェクターのコンパクトさに驚いた。
こんなシステムでIMAXみたいな映像を映し出せるのか、と思ったら私自身自宅の壁と障子と襖に向かって同じような映像を投影したいという衝動に駆られたのであった。
ま、家族の顰蹙を買う可能性があるので無理なのだが、そういう家の中の工事もなんとなく土木工事を連想させ、なかなか面白かった。

メインの展示室には渋谷駅の立体模型がドドドと置かれており、アップダウンの起伏のある丘の中に建設されている私鉄、地下鉄、JR各線のフォームの立体の複雑さが、なんとなくアートになっていることに気がついた。
子供の頃にアリの巣を金魚鉢の薄っぺらいバージョンで観察したときの有機的な面白さと共通するものがそこにはあった。
まるでアリのように人間は自分たちの都市を掘り下げているのだ。

以前、東京現代美術館でパラモデルとうアーティストグループが大阪市営地下鉄の各駅の立体図を繋ぎあわせてインスタレーションを構成しているのを見たことがあるのだが、それの立体版のように感じられたのであった。

その他には砂場にレーザーで映し出している等高線を砂を触ることで描き変えることのできるアートや、東京の地図を大写しにしたプロジェクションなどが展示されていた。

ひとつひとつが大きな作品で、昨年の同じ場所で開催されたフランク・ゲーリー展や目黒区立美術館で開催された建築模型の美術展と比べると感動は小さかった。
子供と来て、一つ一つの作品に一緒に触れると初めて価値を持つような展示会なのであった。


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