<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
宇宙エンタメ前哨基地



県道粉河加太線は阪和道の高架下をくぐるまではJR阪和線とほぼ並行して走っていて道は総じてなだらかな下り坂だった。
下り坂は歓迎だ。
それもなだらかで距離のある下り坂は大歓迎なのだ。
私はペダルを踏んでいるのかいないのか、というような軽さでサ〜〜〜っと走るれるところが大好きなのだ。
というか、多分みんな大好きだと思う。

この狭い県道も交通量は少なくない。
途中、紀伊駅、六十谷駅前を通過するときは道路が狭いこともあって道路が自動車で混雑。
自転車のわたしはあまり関係はないものの、和歌山と言ってもここは大阪府から境を越えてすぐなので人口はすくなくない。
東京や大阪の郊外の田舎街がいきなり人口増加で道路インフラが対応できずにそのままきている、というよくある風景だった。
この辺りは府県境というだけではなく、JR阪和線を使うと大阪駅まで乗換なしで行けてしまうのだからメリットは小さくないのだろう。
ということで住宅と田園風景が混在する和歌山の最北部はサイクリングには悪くない風景だ。

この冬。
南海高野線の橋本駅からJR和歌山駅まで折りたたみ自転車で今回走っているところとは紀の川を挟んで対岸を走った。
そのときは寒くて風が強くて往生したのだったが、今回は春ということもあり清々しい気分で走ることができた。
右手に大阪府との府県境である和泉葛城山。
左手には和歌山を代表する大河紀の川。
素敵なエリアなのだ。

しばらく走っていると同じ方向へ派手な装飾を施したトラックが走っていく。
この日はなにかトラックに関わるイベントがあるのか、電飾キラキラのトラックが1台や2台ではないうえに、何台かが連なって走っていたのだ。
大中小、様々なサイズのトラックが走っている様は往年の人気映画「トラック野郎」を彷彿させるものだった。
それだけに何か時代が少しずれてんじゃないのかと思うこともなかったが、こういう所有者の個性が発揮されているトラックは、見ていて面白い。

岐阜県ナンバーを付けた軽トラ、ワゴン、普通トラックのグループが私と並んで走っていた。
ここを走っているということはたぶん京奈和道経由で走ってきたのだろう。
お友達感覚で集団で走っていた。
彼らと並行に走っていると邪魔になるんじゃないかと思った。
なぜなら道路がそこそこ混んでることと、私の足がちっとも疲れておらず快走していることもあって、これらのトラックには追い抜かれたり、信号で追いついたりを繰り返し、結局加太近くまで並行して走っていたからだ。

100km走ろうと思ってスタートして、すでに半分の距離。
途中食ったものがシュークリーム1個なのでエネルギー消費としては悪くないのかもしれない。
水分は500ミリリットルのペットボトルが約1/3消費。
まだまだへばるようなことはなさそうなのであった。

和歌山市内に入ると道路は片側2車線になって交通量もかなり多い。
道路のコンディションは悪くない。
今回初めての100kmライドの休憩は南海電車の加太駅でとるつもりだった。
ここでは「めでたい電車」という南海電車の観光列車、というか加太線のブランディングの結果生まれたお魚をあしらった電車の写真でも撮影しようと思っていたのだ。

加太は幼稚園のときに両親に連れられて一泊したことのある観光地だ。
紀淡海峡の本州側の半島の先っぽということもあり魚釣のメッカでもある。
今でこそキャンプやマリンスポーツで滞在する人も増えているようだが、当時は宿といえば釣宿で、なんとなく小汚い印象が子供の私には強かった。
そこで子供の私が何を持ったかと言うと「一刻も早く家に帰りたい」ということだけなのであった。
夜断水する。
停電もする。
なんだか騒々しい。
暗闇に照らされた階段に置かれた飾り物の布袋さんの人形と「早く帰りたい」といことが鮮明に記憶に刻み込まれた「思い出の場所」。
それが加太なのであった。

県道は南海電車加太線と並行して走っているはずだが線路が見えない。
地図で確認すると少し離れて並行になっているようで電車を見ながら走るということは無理なようだ。

やがて道路が狭くなりカーブになっている坂を登る。
登り切るとまたカーブになっていたが、突然右手に南海電車の線路が見えてきた。
そして踏切があり、警報が鳴っている。
自転車を止めて撮影しなければ、と思った。
もしかすると「めでたい電車」が走ってくるのかもしれない。
バックバックを引き下ろし、カメラを取り出そうとしたその瞬間、電車が手前側からゆっくりと走ってきて和歌山市方面に過ぎ去った。
電車は「鯛」を外観にあしらった「めでたい電車」のいわば看板車であった。

くそっ!

シャッターチャンスを逃した私は若干悔しいながらも加太駅で待っていると他の電車が来るだろうと思って再び走り始めた。
加太駅はどこだろうと思って電車に沿って走っていると小さな駅舎があり、そこから人の波ができている。

「ほ〜人が大勢。加太はもう少しなんだな」

と思って、さらに進んでいると右手の電車の線路が無くなっている。
なんてこった、さっきの小さな駅舎が加太線の終着点「加太駅」なのであった。
加太駅を通り過ぎて、大阪方面に一心不乱に私は走っていたというわけだ。

ということでUターンして再び加太駅へ。

ここで次の電車まで休憩することにしたのだった。

つづく


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )