20年ほど前に持っていたシャープのパソコンX68000に、「フライトシュミレーター」というソフトがあり、飛行機の好きな私が持っていた数少ないゲームソフト的なソフトウェアだった。
マイクロソフトのフライトシュミレータが世にでる随分前のソフトで、画像は現在のようにリアルではなかった。
しかし、夜間のランディングのみに特化したその機能と画面は素晴らしく、当時めずらしかったX68000が誇るPCM音声も手伝って、管制塔とのやりとりの音声で、かなり雰囲気リアルなのであった。
このシュミレータ。
操縦桿を別に買う必要があったのだが、キーボードでも操縦できることからケチい私は常にキーボードで様々な機種を伊丹空港その他に着陸させようと試みていたのだ。
で。結論から言うと、何十回、いや百回以上このソフトで遊んだものの、無事に着陸させうことができたのは1度しか無く、その他は、
「失速」
「滑走路通過」
「着陸経路逸脱」
などで、甚大な被害を出していたのだ。
とりわけ横風があると悲惨で、着陸コースを維持することさえままならなかった。
かように「飛行機の着陸は難しいもんだ」と感心したことしきりなのであった。
元全日空パイロットで作家の故内田幹樹のエッセイを読んでいると、いろんな着陸に関するエピソードが載っていて楽しいし、驚くことがある。
その中でもパイロットになりたての1960年代の終わりに副操縦士で羽田から富山に富んだ時の話がとりわけ印象に残っている。
飛行中、雹だった霜だったかやられてコックピットのガラス正面が見えなくなってしまった。
経験の少ない副操縦士だった内田幹樹は「これは着陸できない」と緊張が走ったという。
ところがベテランの機長はそんなことどこ吹く風。
富山空港へは正面が見えないので、窓の横の景色を見ながら難なく着陸してしまったのだという。
ケロッとしている機長に、
「どうして横を向いたまま着陸できるんです?」
という意味合いのことを聞いたところ、
「艦載機は横の景色を見ながら着艦するんだよ。機種を上げているから空母の甲板は見えないんだ」
機長はゼロ戦乗りの生き残りなのであった。
著者も読んでいる私も旧海軍のパイロットの神業といえる技量に、恐ろしく感動してしまったことは間違いない。
ゼロ戦のパイロットは戦後も人々の命を守りながら旅客機を飛ばしていたことに頼もしさを感じたのであった。
サンフランシスコ空港で発生したアシアナ航空機の事故は、素人目から見ても明らかな操縦ミスだ。
風はなく、視界良好。
遠く離れたところからも雲ひとつ無い青空のもと事故機が着陸する様子がビデオに捉えられている。
飛行機の侵入角度があまりに低いのも、飛行機をよく利用する人や、見ることが好きな人にはよく分かる風景だ。
あの低い高度で侵入していて異常だと気づかないのは、明らかにオカシイのだ。
報道によると「パイロットはベテランで不備はない」とアシアナ航空会社は主張している。
ベテランなら低すぎる着陸の侵入角度は目で見て分かっていたはずで、もしかhしたら別のことに気を取られ危機を見逃したのかもわからない状況だ。
パイロットはベテランだから「飛行機が悪い」という構図に持ってこうとするところに姑息さを感じずにはいられない。
むしろあれだけの事故でありながら乗客のほとんどが助かったのは、B777の優秀な設計にあったと思わずにはいられない。
飛行機の操縦はゲームでも難しい。
でもベテランなら横の窓から見ていていても高度が適正なのか、侵入経路も適正なのかは判断がつくはずで、今回の事故はお粗末としか言いようがないが、そのお粗末さは想像以上に高く付くものになるだろう。
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