Of Elements, and an Angelic sprite,
secret talk28 束縛に花を―dead of night
君を惹きたくて、視線すら捕まえたくて。
「すみません、花束をお願いできますか?」
ひさしぶりの店、声かけて花が香る。
明るいウィンドー百花色彩きらめく、その光に長い髪ふりむいた。
「まあ…おひさしぶりです、」
ダークブラウン艶やかにエプロンなびく、色白の頬やわらかに薔薇色やさしい。
変わらない店主の笑顔に英二は微笑んだ。
「俺のこと憶えているんですか?」
もう忘れていると思った。
それくらい無沙汰の時間に澄んだ笑顔ほころんだ。
「はい、印象的で…今日はどんな花束を?」
「赤いバラをください、いちばん香がよくて色の深いものを。一万円くらいでお願いできますか?」
オーダー笑いかけて花を見る。
赤、紅色、真紅に深紅、大輪中輪ちいさな花、八重一重。
同じ花でも同じじゃない、そんな花園にガラスの陽ざしふる。
―…すてきなんだ、あの花屋さん…、
声ゆれる、君の声だ。
ガラスの花園たたずむ君、ダッフルコート小柄な黒髪やわらかな横顔。
クセっ毛きらきら陽ざし遊ぶ、その瞳ふる睫きらめいて花を見ていた。
―…花の女神さまみたいで…花のとりかたも優しいんだ、花に話しかけるのも優しくて、魔法みたいで、
穏やかな声が微笑む、澄んだ瞳はにかんで笑う。
あの瞳が声が讃えていた、その指先が赤いバラふれる。
「こちらのバラはいかがでしょう?深いけれど澄んだ紅色で、香も優しくて深いんです、」
問いかける声が澄んで優しい。
この声に見惚れていたのだろうか?たどり微笑んだ。
「きれいですね、」
「はい、今日いちばんの美人さんです、」
優しい声が花に笑う、その涼やかな瞳深く優しい。
この眼ざしに君も笑っていた?見つめる想いに訊かれた。
「こちら、バレンタインのギフトでしょうか?」
さすが花屋だな?
すこしの関心と笑いかけた。
「そうです、ご存知なんですね?」
「はい、本職ですから。イギリス式のバレンタイン素敵ですよね、」
涼やかな瞳やわらかに微笑む。
たおやか優しい女性、そんなエプロン姿に視線が妬く。
―やっぱり女のほうがいいのかな周太、周太も男だし?
男なら、こんな女性は惹かれるだろう?
そんな納得させられるのは多分、この穏やかな空気だ。
―平和だよな、花いっぱいで…窓も明るい、
明るいガラスふる、穏やかな午後の温もり花ほころぶ。
あまい優しい香が陽ざし咲く、木枯らしの外も知らない光で。
「贈るお相手はどんな方でしょう?合わせておつくりしますけど、」
真紅の花に問いかけ透る。
優しい深い瞳は涼やかで、その眼まっすぐ答えた。
「かわいくて凛とした男です、」
バレンタインの花束を男に。
こんなオーダー、彼女はどうするのだろう?
笑いかけた答え見つめる真中、涼やかな瞳ゆっくり微笑んだ。
「すてきですね、」
優しい深い声が澄む、穏やかな指さきバラをとる。
白い横顔たおやかに凛として、花たばねるエプロン姿に笑いかけた。
「驚かないんですか、男が男に花を贈るのに?」
普通なら驚くだろう?
けれど涼やかな瞳は穏やかに微笑んだ。
「いろんな方が花をもとめてくださいます、ここは新宿ですから、」
街の名前に声深く優しい。
どうして彼女がここにいるのか?解るようで尋ねた。
「新宿に店を開いてるのは、そういう理由なんですか?」
いろんな人間がくる、この街は。
そこにいる白い横顔が微笑んだ。
「そうですね、花が誰かを笑顔にできたらって想いますけど、」
できたらって、
そんな言い方は願い籠る。
なにか事情があるのだろう?そんな瞳ふわり笑った。
「花束、こんな感じでいかがでしょう?」
真紅の大輪ふかく澄む、凛と蕾、ほころびかけ、あざやかな満開ひとつ。
蔓バラは薄橙こまやかなセピア色、グリーン爽やかな蔦に葡萄色の蔓、重厚なくせ優しい花束に笑いかけた。
「ありがとう、赤いバラは12本なんですね?」
何か意味がある?
笑いかけた先、色白やさしい笑顔は言った。
「ダーズンローズです、12本は感謝を表すんですよ?花の開き加減も意味があるんです、バラは色ごとにも意味が違います、」
答えながらリボンかけてくれる。
チョコレートブラウンにセピア色、深い葡萄色、まとめてゆく白い指に尋ねた。
「そうですか、この花束はどんな意味に?」
「いくつも意味こめてあります、カードおつけしますね、」
澄んだ深い声が応えてくれる。
その横顔は朗らかに穏やかで、楽しげな指先に笑いかけた。
「ありがとう、いい意味だと嬉しいけど、」
「きっと喜ばれると思いますよ?」
白い指リボン結いあげる。
薔薇色の頬やわらかに微笑んで、美しい花束ひとつ抱きあげた。
「お待たせいたしました、幸せなバレンタインでありますように?」
言祝ぎ花を渡してくれる。
受けとめて、花の重みやわらかに香り高い。
「ありがとう、」
笑いかけて花を抱く、真紅の大輪ふわり唇かすめる。
この花に笑顔は咲くだろうか?毎日いつも見つめて香を感じて、想いだしてくれる?
繋ぎとめたい願い抱きしめて、花が香る。
【引用詩文:John Donne「HOLY SONNETS:DIVINE MEDITATIONS」】
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英二side story予告編@第85話+XX日
secret talk28 束縛に花を―dead of night
君を惹きたくて、視線すら捕まえたくて。
「すみません、花束をお願いできますか?」
ひさしぶりの店、声かけて花が香る。
明るいウィンドー百花色彩きらめく、その光に長い髪ふりむいた。
「まあ…おひさしぶりです、」
ダークブラウン艶やかにエプロンなびく、色白の頬やわらかに薔薇色やさしい。
変わらない店主の笑顔に英二は微笑んだ。
「俺のこと憶えているんですか?」
もう忘れていると思った。
それくらい無沙汰の時間に澄んだ笑顔ほころんだ。
「はい、印象的で…今日はどんな花束を?」
「赤いバラをください、いちばん香がよくて色の深いものを。一万円くらいでお願いできますか?」
オーダー笑いかけて花を見る。
赤、紅色、真紅に深紅、大輪中輪ちいさな花、八重一重。
同じ花でも同じじゃない、そんな花園にガラスの陽ざしふる。
―…すてきなんだ、あの花屋さん…、
声ゆれる、君の声だ。
ガラスの花園たたずむ君、ダッフルコート小柄な黒髪やわらかな横顔。
クセっ毛きらきら陽ざし遊ぶ、その瞳ふる睫きらめいて花を見ていた。
―…花の女神さまみたいで…花のとりかたも優しいんだ、花に話しかけるのも優しくて、魔法みたいで、
穏やかな声が微笑む、澄んだ瞳はにかんで笑う。
あの瞳が声が讃えていた、その指先が赤いバラふれる。
「こちらのバラはいかがでしょう?深いけれど澄んだ紅色で、香も優しくて深いんです、」
問いかける声が澄んで優しい。
この声に見惚れていたのだろうか?たどり微笑んだ。
「きれいですね、」
「はい、今日いちばんの美人さんです、」
優しい声が花に笑う、その涼やかな瞳深く優しい。
この眼ざしに君も笑っていた?見つめる想いに訊かれた。
「こちら、バレンタインのギフトでしょうか?」
さすが花屋だな?
すこしの関心と笑いかけた。
「そうです、ご存知なんですね?」
「はい、本職ですから。イギリス式のバレンタイン素敵ですよね、」
涼やかな瞳やわらかに微笑む。
たおやか優しい女性、そんなエプロン姿に視線が妬く。
―やっぱり女のほうがいいのかな周太、周太も男だし?
男なら、こんな女性は惹かれるだろう?
そんな納得させられるのは多分、この穏やかな空気だ。
―平和だよな、花いっぱいで…窓も明るい、
明るいガラスふる、穏やかな午後の温もり花ほころぶ。
あまい優しい香が陽ざし咲く、木枯らしの外も知らない光で。
「贈るお相手はどんな方でしょう?合わせておつくりしますけど、」
真紅の花に問いかけ透る。
優しい深い瞳は涼やかで、その眼まっすぐ答えた。
「かわいくて凛とした男です、」
バレンタインの花束を男に。
こんなオーダー、彼女はどうするのだろう?
笑いかけた答え見つめる真中、涼やかな瞳ゆっくり微笑んだ。
「すてきですね、」
優しい深い声が澄む、穏やかな指さきバラをとる。
白い横顔たおやかに凛として、花たばねるエプロン姿に笑いかけた。
「驚かないんですか、男が男に花を贈るのに?」
普通なら驚くだろう?
けれど涼やかな瞳は穏やかに微笑んだ。
「いろんな方が花をもとめてくださいます、ここは新宿ですから、」
街の名前に声深く優しい。
どうして彼女がここにいるのか?解るようで尋ねた。
「新宿に店を開いてるのは、そういう理由なんですか?」
いろんな人間がくる、この街は。
そこにいる白い横顔が微笑んだ。
「そうですね、花が誰かを笑顔にできたらって想いますけど、」
できたらって、
そんな言い方は願い籠る。
なにか事情があるのだろう?そんな瞳ふわり笑った。
「花束、こんな感じでいかがでしょう?」
真紅の大輪ふかく澄む、凛と蕾、ほころびかけ、あざやかな満開ひとつ。
蔓バラは薄橙こまやかなセピア色、グリーン爽やかな蔦に葡萄色の蔓、重厚なくせ優しい花束に笑いかけた。
「ありがとう、赤いバラは12本なんですね?」
何か意味がある?
笑いかけた先、色白やさしい笑顔は言った。
「ダーズンローズです、12本は感謝を表すんですよ?花の開き加減も意味があるんです、バラは色ごとにも意味が違います、」
答えながらリボンかけてくれる。
チョコレートブラウンにセピア色、深い葡萄色、まとめてゆく白い指に尋ねた。
「そうですか、この花束はどんな意味に?」
「いくつも意味こめてあります、カードおつけしますね、」
澄んだ深い声が応えてくれる。
その横顔は朗らかに穏やかで、楽しげな指先に笑いかけた。
「ありがとう、いい意味だと嬉しいけど、」
「きっと喜ばれると思いますよ?」
白い指リボン結いあげる。
薔薇色の頬やわらかに微笑んで、美しい花束ひとつ抱きあげた。
「お待たせいたしました、幸せなバレンタインでありますように?」
言祝ぎ花を渡してくれる。
受けとめて、花の重みやわらかに香り高い。
「ありがとう、」
笑いかけて花を抱く、真紅の大輪ふわり唇かすめる。
この花に笑顔は咲くだろうか?毎日いつも見つめて香を感じて、想いだしてくれる?
繋ぎとめたい願い抱きしめて、花が香る。
【引用詩文:John Donne「HOLY SONNETS:DIVINE MEDITATIONS」】
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