萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

森の光闇、雨と花と―Fr.Holderin×万葉集×William Wordsworth

2013-05-31 21:16:10 | 文学閑話韻文系
霹靂の雨、光闇に育むのは



森の闇光、雨と花と―Fr.Holderin×万葉集×William Wordsworth

Aus heißer Necht die kuhelenden Blitze fielen
Die ganze Zeit und fern Noch tonet der Donner,
In sein Gestade wieder tirtt der Storm,
Und frisch der Boden grunt
Und von des Himmels erfreuendem Regen
Der Weinstock trauft und glanzend
In stiller Sonne stehn die Baume des Haines:

So stehn sie untre gunstinger Witterung,
Sie, die kein Meister allein, die wunderbar
Allgegenwarting erzieht in Leichtem Umfangen
Die machtige, die gottlichschone Natur.

夜尽きるまで熱い闇を涼やかな霹靂が降り
今も雷鳴はるか遠く響きながらも
あふれる奔流はふたたび河を往き
大地は緑あざやいで
葡萄の木は天上よりの
慈雨を滴らせ 森の樹木たちが
静謐の陽光ふるなか煌めき佇むように

そんなふうに彼らは恩恵の空のもとに在り
彼ら、どんな名匠も独りでは創造しえぬ存在たちを
未知に遍く座し、軽やかに大切に抱き
養い育てる者は、力あふれ神秘に輝ける自然であろう

「Wie wenn am Feiertage」 Fr.Holderin

ちょっとドイツ詩を読んだので、抜粋ですが自訳と載せてみました。
いつものWordsworthと雰囲気が似ていますが、森や川の描写が雄渾だなって印象です。
古来のドイツ=森と大河ってイメージが自分はあるんですけど、その広やかな空気感で言葉も選んでみました。
特にドイツっぽいなって思うのは「Meister」が出てくるとこです、笑

で、この前半部ですけど。
恋愛詩として意訳すると大変なことになります、笑 
短篇「玄月」に遣ったブレイクの詩みたいな感じになっちゃうんですよね。
だけどヘルダーリンは自然摂理が好みってカンジだし、後半部の内容もあるから敢えてココではエロ解釈しないです。笑



上述の詩は『ドイツ名詩選』から原文は引用してるんですけど、
ドイツ語の特殊文字は文字化け防止に「ß(=ss)」しか遣っていません。
ので原文は文字が違っていますが、ご興味あったら岩波文庫『ドイツ名詩選』を見て下さいね。

この詩集、他にソーセージにローストビーフを詩にしちゃってるのもあって笑えました。
題名は「Die Wanderratten」放浪ネズミって名前ですが、意外にも作者はH.Heineハイネです。笑
他の詩人たちもビールにワイン、「Schwarze Milch」黒いミルクってたぶん黒ビールなんか詠んでます。

あと、イギリスの詩に比べて「!」が多い印象でした、笑
表現がすこし大げさなモノから叙事詩、ユーモラスで身近な題材も多いです。
例を挙げるなら題名「タイヤの交換」「棚卸し」「電話加入者の皆さまへ」ナンテのがあります。
ブレヒトB.Brecht「Verwisch die Spuren」の一節に「肉があったらとっとと食え!」とかあったりしてね。笑

で、ストレートにエロな詩もあります、笑
今日ね、休憩時間に近くの公園ベンチで読んでたんですけど笑っちゃいました。
ソレ系の単語も直球で出てくるしね、岩波文庫ってコンナのも出版してるのが面白い。
特に笑ったのが「Sie sehn sich nicht wieder」Fr.Hebbel ヘッベルって詩人の作品です。
もしご興味があったらR18で読んでみて下さいね、笑



写真の花は「采配蘭」サイハイランです、森に咲く花で自分も初めて見ました。
前に短編で揚げた万葉集の歌に「朱華」の花がありましたけど、朱華色はコンナ色みたいです。
これは先週撮影したモノで、今日の夕方に見に行ったら「将移香」すこし色褪せたの風情でした。
ここ数日の雨に打たれた所為でしょうね、たぶん。

夏儲けて 咲きたる朱華 久方の 雨うち雫らば移ろひなむ香 大伴家持

夏になり咲いた朱華の花、
久しぶりの雨に打たれ雫へ色移りして、香ごと色褪せないだろうか?
夏に咲いた恋人の君よ、久しぶりに逢いに行く僕との恋を色褪せたなんて言わないでくれる?

コレ、『万葉集』第八巻に夏の雑歌として載っている歌ですが、
原文「将移香」と花の色褪せを謳っているので相聞歌の解釈にしました。
色、香、という言葉は恋愛や容姿への掛詞として遣われ、現代でも「色香」なんて言うでしょ?
なのでこの歌もソンナ感じで描写してみました、色も「朱華」=薄紅いろで恋愛の空気だしね。



今、初夏の森は毒溜草ドクダミソウの季節です。
解毒作用の有名な薬草ですけど、蕾や披きかけの花は可憐だなと思います。
通る道の両側が群生地なんですけど、白い花が緑のなか連なって星のようでした。

Continuous as the stars that shine
And twinkle on the milky way,
They stretch'd in never-ending line

涯なき星々は輝きわたり
天空の川に光煌めかす
その広がりゆく終わりなき一閃

William Wordsworth「The Daffodils」の一節です。
これ「水仙」っていう題名で日本にもファンが多い詩なんですけどね、花は違うけどイメージだなって思います。
でも香は水仙の方がずっと綺麗かなって思います、水仙は甘くて高雅なカンジですがドクダミは薬草らしく独特なので。笑



コレ↑は大文字草かな?
木下闇と木洩陽のはざま白い花が凛と綺麗でした。
なんか群生地があるんですよね、よく行ってる森のとあるポイントなんですけど。

今夜は短編「天津風9」加筆校正をします。
そのあと短編or第65話の周太サイドを書こうかなって予定です。




blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 雨の窓、水の音 | トップ | 第65話 如風act.1―another,s... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

文学閑話韻文系」カテゴリの最新記事