萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

微睡時の森深く―morceau by Aesculapius

2013-08-11 00:25:33 | morceau
翠の闇、光の白 



微睡時の森深く―morceau by Aesculapius

水奔る森、飛沫くだけて光に散る。
苔むす岩に水が鳴る、谷風が梢を渉って葉音ふる。
ざわめく木洩陽きらめいて水走らせ辿り、遡る樹影に響きだす。

「…もうじき、」

響きへ声こぼれて足を運ぶ、その靴元に光ゆれて風が鳴る。
独り踏んでゆく山路は誰もいない、けれど無数の樹木に静謐が明るい。
遠く近く響かす飛沫の風ひるがえって頬を涼ませる、その風に滴が跳んだ。

ほら、もう大きな水の壁きらめきだす。
いま純白に轟く水あふれゆく、その飛沫に夏の陽きらめかす。
この輝きも5ヶ月の星霜に凍るなら、そのとき顕れる姿を見せてあげたい。

夏の今日は幼くて、まだ連れてきてあげられなかった。
けれど冬には共に歩けるはず、その成長を願いたくて祈りたい。
そんな想いに回りこんだ岩の向こう、透明な光の沢に登山靴を進ませる。

仰いだ清流ふらす旋律に、約束は七彩の輝き映す。






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