萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第35話 曙光・予警act.6―side story「陽はまた昇る」

2012-02-27 22:38:01 | 陽はまた昇るside story
想い、真実と温もりを背負って




第35話 曙光・予警act.6―side story「陽はまた昇る」

無条件で受けとめられたい

そんな想いが背中越しふれてくる体温と鼓動に伝わってくる。
自分は受けとめるに決まっているのにな?後ろから抱きしめるように回される国村の腕を、ポンと叩いて微笑んだ。

「俺たち、もう生涯のアンザイレンパートナーだよな?お互いきちんと話していこう、約束だろ?」
「うん、…宮田、」

テノールの声がすぐ傍で英二を呼んでくれる。
どうした?と微笑むと、底抜けに明るい目は真剣に真直ぐ英二に告げた。

「俺がなに話してもね?絶対に、いなくならないでくれ」
「うん、いなくならないよ」

素直に英二は頷いて微笑んだ。
いまなぜ国村がこういう質問をするのか、気持ちが解ると思えた。
大丈夫だから話せよ?そんなふうに見つめ返すと、背中から英二を抱きしめたままテノールの声が話し出した。

「宮田。俺にはね、おまえが必要だ。山でも仕事でも、友達としても」

しずかな灯が黒栗の床を艶やかに照らしている。
その温もりを視界の端に見ながら英二はテノールの声に心傾けた。

「俺はね、山がいちばんだ。そういう俺を本当に理解できるヤツにはね、ずっと会えなかったんだ。
でも、おまえに会えた。おまえはね、俺が『山』を大切にする想いも、仕事に向き合う想いも解ってくれる。
俺がすべて『山』を軸にして考えているって、おまえは本当によく解ってくれる。そしてさ…美代のことだって、そうだろ?」

ふっと言葉をいちど切って国村は唇をかるく噛んだ。
ちいさな沈黙に英二はかるく頷いて「大丈夫だ、」と真直ぐ目を見て笑った。
ふっと国村の緊張がほどけて唇が開いた。

「もう宮田はね、解ってるだろうけどさ?俺は、美代を抱いたことは無いよ」

言って国村はすこし笑った。
純粋無垢な目が真直ぐ英二を見つめている、そしてゆっくりテノールの声は言葉を続けた。

「俺と美代はね、幼馴染だ。赤ん坊の頃から恋人同士みたいに育った。
いつも手を繋いで、おでこにキスしてきたよ。一緒にいるのが自然でさ、大切で特別だよ。
でも恋愛じゃない、美代を抱きたいと思ったことは一度も無い。恋愛と違うけれど大切で、遊びじゃないから、俺には抱けない」

いつも御岳の河原で呑むとき帰り道は、美代が代行運転をしてくれる。
その別れ際に国村は美代の額にキスをする、そして切なげに去って行く美代を見送る。
けれどそのキスと視線にこもる意味と国村の想いを、英二は冬富士の時から気づき始めた。
きっと自分の考えは当たっている、そんな確信をすぐ傍から見つめ返す瞳に見ながら英二は微笑んだ。

「大切だからこそ、おまえは抱けないよな」
「うん…いま宮田にね、こうしてるように抱いたことも、一度も無いんだ…違うって解っているから出来ない」

心が軋むのを英二はしずかに見つめた。
国村の美代に寄せる「特別」の意味、そして美代との擦れ違いを話そうとしてくれている。
国村と美代は似合いで、穏やかな信頼感がきれいだと英二は見てきた。でも「信頼感」の本当の意味を冬富士から気づいた。
多分この信頼感と「特別」はこんな意味だろう、英二はうなずいて微笑んだ。

「うん、…姉さんはさ、抱けないな」

ぐっ、と国村の腕に力が入って抱きしめられる。抱かれる肩口でテノールの声が微笑んだ。

「解ってくれるんだね、」
「うん、俺、姉ちゃんいるしさ。それにね、おまえのことは解るよ?」

英二には姉がいる。だから英二には気づけてしまった、国村が美代に寄せる視線の意味が。
いちばん身近な異性で時に母の顔もしてくれる、憧れと不可侵の対象ともなる「姉」は大切な「特別」な存在。
妹なら庇護の対象だからまた違う、けれど「姉」には母の面も見るから彼氏が出来ると嫉妬したくなるケースも多いと言う。
自分も姉にはそういう想いがある、だから自分と似ている国村も同じだろう。思ったままを英二は口にした。

「姉さんはさ、男にとられたくないな?ずっと、きれいでいてほしい、自分を見つめていてほしい。そうだろ?」
「うん、そのとおりだよ?…俺にはね、姉さんなんだ、美代は」

底抜けに明るいから涙がこぼれた。
あふれだした想いは静かに涙になって、言葉となってこぼれ出した。

「俺にはね、もう、じいちゃんと、ばあちゃんしか肉親はいない。
おふくろはさ、家出同然でおやじと結婚したんだ。だから俺、おふくろの両親と弟には葬式で会っただけなんだ。
だからね、俺にとって美代は家族で、肉親と一緒なんだ…だからさ、失いたくなかった。これ以上は家族を盗られたくなかった。
だから俺、美代に他の男を近づけなかった…身勝手だってね、俺でも解ってるよ?でも、嫌だったんだ。居なくなってほしくなかった」

13歳を迎える春に突然両親を亡くした国村。
ひとりっこ長男の国村にとって「家族」は祖父母と両親だけだった、その両親が同時に消えた。
そして遺された祖父母は確実に自分より先にこの世を去るだろう、けれど兄弟も無く父の兄弟も無く、母の家は頼れない。
いつか自分の家族は肉親は誰も居なくなる、その哀しみを13歳で国村は向き合わされた。
この国村の状況と孤独は周太と似ている、ふたりが惹きあうことは当然だろう。

 ― 良い両親だよ、

そう国村はいつも話してくれる、そんな良い両親がふたり同時に消えた。
だからこそ喪った存在が大きすぎた、そして肉親が少ない痛みはより大きくなってしまった。
そんな大きな喪失に「家族の愛」はひとつでも多く残したいと願う、その想いと哀しみを誰が責められるのだろう?
しかも国村は母親も亡くした、その分も「姉」の存在に見つめたとしても仕方がない。
この「母を姉にも見る」想いは実母の無償の愛を得られない英二にはよく解る、姉は母の分まで自分を見つめ理解してくれるから。
美代と国村の想いに擦違いがあるとしても「特別」な存在として美代を大切にする国村の想いは真実だ。
国村の想いが自分にはよく解る、穏やかに頷いて英二は微笑んだ。

「そうだな。喪いたくない、姉さんは。だから、国村はさ?姉さんだから、美代さんの前では泣かないんだろ?」

男だったら恋人の前では涙を流せても、女きょうだいの前では涙は流せない。
姉や妹の前ではまず泣かない。それでも、ずっと一緒に育った姉と離れるときは涙も出るだろう。
だから国村は美代の前では、警察学校入校で初めて離れるとき1度しか泣いたことが無い。
自分も姉と離れるとき哀しかった、想い出しながら英二は微笑んだ。

「俺もね、姉ちゃんの前では泣かないよ。周太の前では泣くけどね」
「うん、美代の前では泣けない。でもね…『あのひと』のまえでは、俺、泣けるんだ…素直になれるんだ、」

あのひと、は周太のこと。
おだやかに微笑んで英二は国村に言った。

「愛するひとにはね、自分を解ってほしくて、受け留めて欲しいだろ?
だから素直になれるんだって俺は想うよ。だから泣けるんだよな?好きなひとの前では、男でも女でも、関係なく」

「うん、俺ね、『あのひと』が女でも男でも、一緒だよ。…だって俺さ、再会するまで、女の子だって思ってたんだ」

幼いころの周太の写真を想いだし英二は微笑んだ。
母親そっくりの華奢で可愛らしい様子は中性的な雰囲気に優しくて、女の子と言って不思議はなかった。
幼いころから大柄だったという国村からしたら、華奢で小柄な周太はさぞ可愛い女の子だったろう。
幼い日のふたりを想った心が優しいままに温かで、やわらかに英二は微笑んだ。

「周太、可愛いからね。大人になった今でも中性的な雰囲気があるし」
「ほんとに可愛い。いちばん可愛くて、誰よりも、きれいなんだ、俺には。だから、もう失いたくないんだ」

英二の肩に温かな涙がときおりふれる。
どうして国村が自分を抱きしめて今話しているのか、その理由が解ると思った。
美代を、周太を失いたくないように英二を失いたくない。だから抱きしめて掴まえているのだろう。
なんだか弟みたいだな?やさしい穏やかな想いに英二は微笑んだ。

「大切なひとは誰よりも一番きれいで失うのは怖い、それを雪のなかで国村はよく感じる。そう言っていたな、富士の山小屋でさ?」
「うん、話したな。おまえ、蝋梅の光の話をしてくれた」

ふっと細い目が記憶に微笑んだ。
その目に穏かに頷きながら英二は言葉を続けた。

「あのときは俺、ご両親がマナスルで亡くなったからだと思った。そして、大切なひとは美代さんだと思ったんだ。
きっとそれも正解だろう、でも、おまえはさ?本当は誰よりも、周太のこと言っていたんだろ?
おまえと周太は9歳の雪の日に出逢った、でも14年ずっと周太は記憶を失っていた。そう周太に聴いて俺、気がついたんだ」

9歳の雪の日に奥多摩で出会った、そう周太は言っていた。
新雪のなかで出逢った恋愛への想いはきっと、国村の新雪と雪を愛する想いを強くした。
その後に国村は両親を高峰マナスルの雪に失った。そんな国村が雪に「大切なひとを失う恐怖」を感じても無理はない。
それでも国村は雪を愛することを止めなかった、この想いの中心はきっと「周太」、雪に生まれた恋愛だと今は解る。
そうなんだろう?目で問いながら微笑んだ先で、純粋無垢な目は真直ぐに笑った。

「うん、そうだよ。俺はね、14年間ずっと待っていたんだ。
俺は『あのひと』と雪の山で出逢ったんだ、それが俺の唯ひとつの恋愛を見つけた瞬間だった。
ひとめで恋したよ。話して、一緒にいて、大好きになった。だからまた逢いたくて、毎日ずっと待ってるって約束した」

なつかしい記憶と想いに国村は微笑んだ。
微笑んだ純粋な黒い瞳から想いが温かな涙となってこぼれ落ちた。

「けれど、あの日に雪のなかで別れたまま、ずっと逢いに来てくれなかった。
それでも俺は『あのひと』の言葉を信じていた。信じて毎日ずっと約束の場所で待っていた。
ずっと待っていて朝になった日もある、夜なら来るのかなって思ったからさ。それでも、失うのかなって怖い時もあった。
このまま逢えないまんま、俺の恋愛は終わるのかなって、絶望しそうになった。でも俺、待つことを、どうしても止められなかった」

こくんと涙を呑んで国村は微笑んだ。
涙を込めたテノールの声は、また想いを紡ぎながら微笑んだ。

「ずっと『あのひと』だけ待っていた、他はいらなかった、だからお互い納得づくの遊びしかしなった。
ずっと『あのひと』しか見つめられなかった、また逢えるって信じていた。美代が傍にいても誰が来ても、待つことは止めれなかった」

微笑みと涙があふれて英二の肩をそめていく。
国村の想いをただ見つめながら英二はテノールの声に心傾けていた。

「俺、ずっと待っていたんだ…俺、『あのひと』の笑顔にずっと逢いたかったんだ、それだけなんだ。
そのまま14年が経って、吉村先生の診察室で再会した瞬間、俺には『あのひと』だって、すぐ解った。
でも男だったから、俺のこと覚えてないから、似ているけれど違うのかなって思った…でも、逢うたびに、声聴くたびに…」

しずかな屋根裏部屋に涙を呑むかすかな音が響く。
ゆるやかに涙に温められる肩ときれいな瞳をただ英二は見つめていた。

「やっぱり『あのひと』だって、逢うたびに俺は想った。逢うたびに、好きだって想った。
そして13年前の事情を聴いてさ、ショックで俺のこと忘れたんだって気がついた。それでも俺、満足だった。
また笑顔が見られる、友達の恋人なら近くで見ていられる…たまに電話を横取りしたのもさ、声、聴きたかったんだ。
なんでもよかったんだ、笑顔が見られて、声を聴けたら。それで俺はね、本当に幸せだった。たとえ友達の恋人だったとしても」

英二の瞳から涙ひとつこぼれた。
大切な友人の苦しみとその想いが心に響いて、涙が英二にも届いた。
英二の涙に泣きながら笑って国村は、抱きしめながら白い指で英二の目許を拭うと微笑んだ。

「そりゃね、悔しい気持ちもあったよ?でも、『あのひと』が愛しているのは宮田だ。
だから『あのひと』の宮田への想いを守りたかった、心からの幸せに笑わせてあげたかった。
そうして笑顔を見せてほしかった。ただ心から幸せな笑顔を見られたら、声聴ければ幸せだって想って。
だから俺たまにさ、おまえに聴きたかったんだ。ちゃんと幸せに抱きしめてくれてるか、笑顔にしてくれているのか。
ただ幸せな笑顔が見れたらいい、『あのひと』が俺を忘れているなら、それでいい。俺の恋愛は夢のままでも構わない、そう想ってさ」

涙の中から底抜けに明るいが英二を見つめてくれる。
そして大らかな温もりに笑ってくれた。

「そして俺はね、おまえが大好きで大切なんだ。だから一生、俺は黙っていようって想っていた。俺、おまえの笑顔が大好きなんだ」

またひとつ、英二の瞳から涙がこぼれた。国村の想いが幸せで切なくて温かかった。
14年間ずっと国村が想い続けた唯ひとり愛する存在、願い祈り続けた幸せな笑顔との「再会」の瞬間。
その願い続けた再会の現実は「アンザイレンパートナーの恋人」としてだった。
こんな残酷な現実にも国村は「それでも傍にいたい」と願い、英二のことも心から大切に想い一緒に笑ってくれていた。
そんな国村の想いを踏み躙るように自分は周太を体ごと傷つけてしまった、その罪の重さが軋んで痛い。
それでも「離れたくない」と英二を抱きしめてくれる国村の想いが申し訳なくて嬉しくて、涙になっていく。
ただ静かに流れる英二の涙を見つめ国村は、ひとつ息を呑んだ。

「冬富士から戻った次の日、ザイル狙撃の実験の日だよ。
実験場を移動する雪道で『あのひと』は俺に9歳の時に遊んだ雪の奥多摩を話してくれた。
俺と出逢った日のことだよ。まだ俺のことは想い出せていない、けれど奥多摩へ来たことは想い出せていた。
きっと記憶が戻り始めた。それが解って俺、うれしかった。俺のこと想い出してくれるかもしれない、そんな期待をした。でもその後、」

ふっと声が途切れて白いのどが涙を呑みこんだ。
それでも純粋無垢な瞳から流れた涙のなかで国村は哀しみを告げた。

「その後だった。威嚇発砲されて、銃を向けられて…哀しかった。
おまえの為には、俺のことも殺すんだって、哀しかった。どうしようもなく哀しかった。
だから俺、話したんだ。もう黙っていられなかった哀しくて、かなしくて俺、自分の想いを解ってほしくて、俺は話したんだよ」

涙の向こうから純粋な想いが英二を見つめてくれる。
その目がきれいで大好きだと英二は想った、その想いのまま「話してよ?」と微笑んだ。
そして透明なテノールの声は、心から泣いた。

「俺は、『あのひと』に告白したんだ、おまえの婚約者なのに、苦しめるって解っていたのに…!」

真っ直ぐ見つめる透明な瞳から涙があふれる。
あふれていく想いはそのままに透明なテノールの声になった。

「逢いたかったんだ、待っていたんだ。名前を呼んでほしかった、見つめてほしかったんだ。
想い出してほしかった、出逢ったあの雪の日のように、好きだって、逢いたいって、言ってほしかったんだ。
あの雪の日の続きを生きたい、あの笑顔を見つめて『好き』だって、『愛している』って、ほんとうは俺、言いたかったんだ…!」

あふれる温かい涙と想いが英二の肩へとしみいって温めていく。
ゆるやかに浸す温もりと想いを見つめる英二に、国村の想いが泣いた。

「ごめん、宮田…!苦しめているって解ってる。
おまえも、『あのひと』も、俺の告白のせいで苦しめている。でも俺、ずっと逢いたかったんだ…!
もう離されたくない、笑顔を見つめていたい。また会えなくなるのは嫌なんだ。また忘れられるのは絶対に嫌だ…!」

告げられていく純粋無垢な恋と愛。
こんな想いを誰が否定なんて出来るだろう?
そしていま話してくれている信頼と率直な想いが英二はよく解る、自分と国村はよく似ているから。
まわされた腕をポンと軽くたたいて、英二はきれいに微笑んだ。

「大丈夫だよ、周太はね、幸せだよ?おまえのこと想いだして、愛して、きれいになった。だから大丈夫だ、」

透明な瞳から涙がこぼれていく。
そっとテノールの声がまた想いを声にして英二に言った。

「おまえが言うならさ、本当にそうなんだね?でも、宮田を苦しめている…ごめん、宮田…でも、俺、おまえと離れたくない…!」

背中を抱きしめる力に「離れないでくれ」と想いこめられる。
苦しめてしまう、けれど離れたくない。大らかな優しい国村には、こんな想いは苦しい。
ずっと国村はこの想いを告げたかったろう、もし英二に嫌われたらと不安に思い、けれど正直に告白したかった。
そして信じて話してもらえたことが嬉しい、うれしくて英二は笑った。

「大丈夫だよ、国村。たぶんね、そうでもない。だってさ、俺、今日も笑顔を褒められたろ?」

大丈夫だと目でも言いながら英二はすぐ横の純粋無垢な瞳を見た。
見つめながら頷いて国村はすこし照れくさそうに微笑んだ。

「なんで俺がさ、今、この話をしたのか?それも宮田は解ってるんだろ?」

なぜいま国村はこの話が出来たのか?
きっと「離れたくない」が理由だろうな、笑って英二は答えた。

「今日、公式的にアンザイレンパートナーに決まって、もう俺と国村は離れられない。そう決まったから、かな?」
「正解。俺、ちょっと卑怯だよね?…でも俺、それくらい離したくないんだよ。大好きで大切なんだ、おまえが、」

泣いたままの顔で笑いながら率直に想いを告げてくれる。
こんな真直ぐな友人が自分は大好きだ、愉しい想いで英二も口を開いた。

「うん、俺もね、おまえと離れたくないよ。だから今日も即答したんだ。あとさ、別に卑怯じゃないよ?
それ言ったら俺の方が卑怯だ。なんとなくだけど、俺、ずっと感じていたからさ。おまえの周太への想い。
でも俺は美代さんを言い訳にして、気づかないフリしていた。周太は天然で鈍いから、言うまで絶対に気づかないしね」

素直に自分の想いを話せることは気持ちが良い。
やっぱり自分は本来が直情的で腹に収めるのは好きじゃない、話せる今が楽しくて英二は笑った。
そんな英二に呼応するように国村も笑って口を開いた。

「気づかれちゃってたんだ?どうりでさ、嫉妬深いなって想ってたよ。ふうん、じゃ、もう俺、遠慮しなくていいかな?」
「おう、遠慮せずに、周太と逢ったりしなよ。自由に好きにしてほしいよ?」
「自由に…それってさ、ほんとにいいのか?」

純粋無垢な目が英二を見つめてくれる。
この「自由」の意味がすこし自分には痛い、けれど認めなかったら意味が無いだろう。
ほんとうに自由をあげたいよ周太? おだやかに抱いている愛しい面影に英二は微笑んだ。

「このあいだも言っただろ、周太はね、自由だ。
自由に人と会って友達つくって、恋愛をしてほしい。そうしてね、周太には幸せになってほしいんだ。だから、
周太が望んで、おまえも望むんだったら。国村、周太のこと幸せに抱いてやってほしいよ?それでさ、幸せな笑顔を見せてほしい」

底抜けに明るい目が涙をこぼしていく。
そんなに泣かなくても良いのに?長い指で拭ってやりながら英二は笑った。

「周太と、おまえと。ふたりの幸せな笑顔が見られたら、俺は幸せだよ?」

背中ふれる鼓動も温もりも、想いが温かい。
肩まわされる腕にやさしい力がこめられていく。
そうして泣き出すテノールの声が想いを告げてくれた。

「うん、…宮田。俺、やっぱり、おまえが大好きだ、ずっと離れるなよ?ずっとアンザイレンパートナーでいろよ?」
「ずっと離れないよ、生涯のアンザイレンパートナーだ。安心しろよ?」

大切な友人に抱きしめられながら英二はきれいに笑った。
きれいな笑顔を見つめて底抜けに明るい目も笑ってくれる、そして国村は真直ぐ英二を見つめて言った。

「だから、俺からも言いたい。もし、『あのひと』が…『周太』が、宮田を選んだとしても。俺はおまえから離れない」

真直ぐな目は透明なほどに率直できれいだった。率直な想いのまま英二と同じように「周太」と呼んでみせた。
そんなふうに「俺たちは対等でいよう」と告げてくれる想いと、国村の周太への想いは真直ぐだった。
そんな真直ぐな想いが嬉しくて英二は頷いた。

「うん、俺もね、遠慮はしないよ?周太が望んだら俺は、また恋人に戻る。そして国村とも離れない、」
「そうだよ、俺から離れるんじゃないよ?」

底抜けに明るい目が笑ってくれる。
そして透明なテノールの声が想いのままに告げてくれた。

「もし周太が、どちらも選べないと言うなら。俺はそれでも構わない、選ばなくても良い。
周太が俺とも宮田とも一緒にいたいなら、それで構わない。俺はね、宮田と周太と、ふたりと一緒にいられたらそれで良い。
こういうのってさ、きっと変だって言われるだろうね?でも俺はね、大切なふたりと離れたくないんだ。だから我儘でもそうするよ」

純粋無垢な怒りのままに国村は今日、警視庁拳銃射撃競技大会に真直ぐ立ち、場を意志と能力で支配し誇らかな自由に笑った。
こんな愉快な男と自分は今日、警視庁山岳会の会長と副会長に乞われ正式にアンザイレンパートナーになった。
あのとき突然迫られた意志表明の選択だった、けれど答えはもうとっくに決まっていた。
そしていま国村が迫ってくれる意思表明の選択も答えは決まっているだろう。きれいに笑って英二は頷いた。

「うん、俺も同じだよ?国村。だから俺はね、分籍もする、周太も周太の家も守っていく。最高峰も行くよ。なにも変わらない」

周太と国村の想いの行方がどうなるのか?この先に何が起きるのか。
どうあろうとも自分は揺るがないでいたい、ただ周太も国村も大切にして守っていきたい。
それが自分の想いも大切にすることだろうから。そんな想いに微笑んだ英二に底抜けに明るい目が笑ってくれた。

「変わらないでくれ、宮田。俺はね、ほんとうに大切なんだ。そしてさ…ありがとうな、」
「こっちこそ、ありがとうだよ?よく話してくれたな、国村」

話してくれて嬉しいよ?まわしてくれる腕をポンと叩いて英二は笑った。
そんな英二を見て安心したように大らかな笑顔が底抜けに明るい目から咲いた。

「うん、俺さ、ずっと話したかったんだ。でもね『山の秘密』は話せないよ?これだけは無理だ、俺は山っ子だからね」
「わかってるよ?そういう『秘密』はさ、俺も好きだよ。大切に秘密にしておくといい、そう想うよ」

こういう「秘密」はきっと自分もこの先いくつか持つだろう。
いま既に「ブナの木」の秘密は持っている、そしてまた山で秘密に出逢い自分も山ヤへとなっていく。
そんな想いを楽しみに微笑んで、けれど、ひとつの気懸りに英二は口を開いた。

「国村、周太はね?美代さんを大好きな友達だって想ってる。それは、知っているよな?」

すっと細い目が哀しい苦しい想いにそまっていく。
きっと苦しんでいただろうな?そう見つめる先で透明なテノールの声が言った。

「告白したときにね、『初恋の幼馴染、大切な恋人でしょ?』そう周太から、美代のことを訊かれたよ。
だから俺、こう答えた『美代は一緒にいるのが自然で特別だ、人間の恋愛として。だから君とは別次元』そう言った。
いまは美代、俺のこと、まだ恋愛対象だって見ているよ?それが解るから『姉さん』だって言えなかった。
きっと美代は周太に俺の話もする、そのときに俺がほんとうは美代を『姉さん』って想ってるって周太が知っていたら?
きっと周太は美代と俺の想いがまったく重ならないことを哀しむだろう、余計に辛い想いさせる。そう想うと俺、言えなかったんだ」

大胆不敵で豪胆な国村、けれど繊細な優しさも抱いている。
こんな配慮は、本来が想った通りしか言えない国村にとって苦しかっただろう。
この苦しみをすこしでも楽にしてやれるだろうか?そんな願いと一緒に英二は口を開いた。

「国村は、美代さんが泣いたところを見たことってある?」

肩越しに微笑んだ問いかけに、純粋無垢な目はすこし考え込んだ。
そして記憶の扉を開け終えた国村は素直に答えた。

「警察学校に俺が入るとき。あのとき少しだけ泣いた、それだけだね、」
「だろ?」

やっぱり想った通りだろう。
自分の考えと周太の話をまとめながら英二は、気づいたところを話し始めた。

「周太から聴いたんだ。カラオケ屋で美代さん、周太の前で泣いたんだ。
そのときに美代さんはね『泣いたなんて光ちゃんには絶対に見せたくない』って周太に話したらしいよ。
それってさ?おまえが美代さんに涙を見せないのとさ、きっと同じ理由じゃないのかな。俺の姉ちゃんもね、俺の前で泣かないんだ」

「きょうだい」は最も身近で親しい反面、ライバルでもある。
だから「絶対に涙を見られたくない」とも考えるし、近すぎて心配かけたくない想いもある。
そのことを英二は姉がいるから解る。けれど美代はまだ気づけていないのだろう、そう考える英二に国村が訊いた。

「俺と、同じに…でも、美代の態度はさ、『彼女』になるときがある…」
「うん、美代さんはさ、歳の離れた姉さんと兄さんがいるんだろ?だからね、逆に気づけないのかもしれない」

すこし途惑った秀麗な顔に笑いかけて、英二は思ったままを話した。

「歳が離れているからね、姉兄といっても親と同じように甘えて泣いてきたんじゃないかな。
そんな美代さんだからね、自分がなぜ国村の前で泣きたくないのか?自分でもよく解らないんだと思う。
俺もさ、最初はちょっと意地っ張りなのかと思ったよ?でも、周太の話を聴いているとね、そんなことでも無いみたいだし」

きれいな黒い目がゆっくり1つ瞬いた。
すこし不思議そうに首傾げながら呟くようにテノールの声が言った。

「俺も想ってたよ?意地っ張りで、気が強いからだって…でも、違うんだ?」
「うん、だって美代さんね?周太の前では素直に泣いたんだよ、それから笑って楽しんで、笑顔で帰ったらしい」

新宿に戻った周太が電話で話してくれた、美代と周太の「エスケープ」は楽しかった。
周太は美代と一緒に泣いて、それから笑って。ケーキを食べながら国村の相談も聴いたと言っていた。
きっと2人とも楽しかったんだろうな?周太から聴いた話を想いだしながら英二は微笑んだ。

「美代さんね、おまえには本当に恋する相手がいる、そう言っていたらしいよ。
周太ね、相談されて困ったらしい。もちろん周太は、おまえに想われているなんて言えない。
でも相談に乗ってあげられたらしいよ?そんな話もしながらさ、あのとき周太と美代さん、ふたりでデートしてたんだよ」

きっとあれこそ「デート」だろうな。
周太から聴いた可愛い「エスケープ」を想いだして英二は微笑んだ。
そんな英二を肩越しから国村が覗きこんで、ちょっと驚いたように訊いてくる。

「あのふたりで、デート?」
「うん。カラオケで女の子の曲を3つ歌ってさ。カフェでお茶して本買って、帰り際には周太、花を買ってプレゼントしたんだ」
「へえ、花まで?…うん、周太らしいよね?やさしいな…やっぱり可愛いな。萌えた、俺、」

きれいな泣顔を英二の肩に乗せたまま国村は、感心して頷いている。
すこし元気になり始めた顔に微笑んで、おだやかに英二は言葉を続けた。

「女の子同士みたいなコースだけどね。でも、立派なデートだろ?
こんどは新宿の公園に一緒に行くって約束らしいよ、いつも俺と周太が行くとこだけどね、めずらしい植物があるから」
「ふうん、今度は公園デートなんだ?そっか…美代ってさ、そういうこともするんだ」

ふっと国村は笑った。
すこし寂しげで、けれど靄が晴れたような清々しい笑顔で国村は口を開いた。

「俺と美代だとさ、畑か卓袱台か、あの河原ばっかりなんだ。
店に行っても定食屋とかくらいで、どっか一緒に行きたいって言われたことないんだよね。
だから俺、美代がそういうデートするって知らない。宮田が言う通り美代にとっても、本当はずっと俺は弟とかだったかな?」

恋人同士ならカフェや映画にも行って、ふたりだけの時間も楽しみたいだろう。
けれど幼馴染で「家族」のまま国村と美代は接してきた、そんな雰囲気が国村の話にも解る。
自分が想った通りかもしれないな、ふと疑問に思っていた考えを眺めるように英二は話した。

「そうだな。いま思うとさ、クリスマスイヴの時も俺は不思議だったんだ。
あのとき美代さん『いつもふたりきりで寂しかった』って俺に言ったんだよ。恋人同士なら、ふたりきりになりたいだろ?
美代さんも家族の感覚かなって思う、そういう姉弟感覚の夫婦もたくさんいるけどね。だからさ、国村?そんなに自分を責めなくていい」

まわされた腕をまたポンと軽くたたいて英二はきれいに笑った。
大らかな笑顔に国村も、底抜けに明るい目で笑ってくれる。
きれいな純粋無垢な目を見ながら英二はすこし冗談めかして教えてやった。

「美代さんも純粋だろ?だから余所見しないんだよ、だから気づけなかったかもしれない。
でもね、周太と出会った。きっと美代さん、周太と話していく中でね、いろいろ気づくと思うよ。
それから美代さんね、俺にも結構いろいろ話してくれるんだよね?でさ、国村?俺もカミングアウトだよ、」

言いながら英二は携帯電話と出して開いた。
片手でかるく操作すると、さっき届いた1通のメールを開いて肩越しに画面を見せた。

from :小嶌美代
subject:急なのだけど
本 文:こんばんは。あのね、急なのだけど、明日はご予定ありますか?
    明日までの映画のチケットを今日、職場でもらったのね。よかったら一緒にいかがでしょう?
    ほんとは湯原くん誘ったのだけど講習会あるからって、ふられちゃったの。
    それで宮田くんは休みだし誘ったら、って言ってくれて。お返事、明日の朝でもOKです。急でごめんね?

「へえ…いつ、アドレス交換した?」
「カラオケ屋の時だよ、美代さんと河辺駅のカフェで待合わせした時。あのときにアドレス交換したんだ」
「ふうん、…ね、宮田?これこそさ、デートの誘いだよな?」

携帯の画面を眺めて国村は不思議そうに首傾げている。
珍しいことに驚いているらしい、そんな様子が可愛らしく可笑しくて英二は笑った。

「うん、デートのお誘いだ?まあ、周太に言われたからだけど。きっと美代さん、おまえのこと俺に聴きたいんだと思うよ」
「俺のこと?」

なんで?そう目で言いながら肩に乗せた秀麗な顔が訊いてくる。
こういう機微も国村は他人だとよく解る、けれど自分と美代の間だとよく解らないのだろう。
そんな所からも国村と美代の関係が解るな?ちいさく納得しながら英二は微笑んだ。

「うん、たぶんね?周太と仲良くなって、周太と俺の話を聴いていてさ。
美代さんも気がつき始めたんじゃないかな。美代さんの国村に対する気持ちが恋人と違うのかな、って。
それでさ、俺に訊いてみたくなったんだと思うよ。恋愛の感覚とか、そういうの。それで考えてみたいんじゃないかな」

美代は周太に国村の相談をして以来、電話でも周太と「恋愛」の話をしているらしい。
なんだか本当に女の子同士のような付きあい方だな、と英二は聴くたびに微笑ましい。
そんな美代が周太から聴く英二の「男」視点を直接聴いてみたくなっても不思議はないだろう。
これに国村はどう反応するのかな?ちょっと可笑しくて笑いながら見た英二に底抜けに明るい目が笑った。

「そっか、ま、宮田だったらいいよ?美代のこと、よろしくな」
「お許しくれるんだ?じゃ、ちょっと明日はね、デートしてくるな。で、国村?こんどは俺から、おまえにお誘いだよ」
「うん、酒か?それとも山?」

うれしそうに肩に乗った顔が笑っている。
俺からの誘いは酒か山しかないのかな?そんな解釈が愉しくて笑いながら英二は言った。

「周太の家に行こう、国村。周太のお母さんがな、おまえに会いたがってる、」

細い目がすこし大きくなって英二を見た。
透明な目が真直ぐ見つめてくれる、そしてテノールの声が微笑んだ。

「うん、俺も会ってみたい。それでさ、川崎の奥多摩の森を見てみたいよ」

英二の肩に乗ったまま、きれいな笑顔を国村は咲かせた。
周太の家の庭は奥多摩の森を映して作ってある、それを国村も聴いているのだろう。
大らかに綺麗に笑って英二は頷いた。

「静かでね、おだやかな、きれいな庭だよ。周太らしい雰囲気でさ。周太の誕生花がある、俺、あの庭が好きだよ」
「山茶花の『雪山』だよね。山桜もあるって聴いたよ、それから雪の花と、水仙と…みやた、」

きれいなテノールの声が名前を呼んでくれる。
どうした?目で訊きながら微笑んだ英二に透明なテノールの声が言った。

「受けとめてくれたね、宮田。美代のことも、俺の恋愛も、『山』への想いもさ。
全部なんでも、俺のことをね、宮田は受けとめてくれるんだな、俺、こんなに誰かに全部なんでも話したの、初めてだ」

すこし照れたように底抜けに明るい目が笑ってくれる。
こういうのは素直に嬉しい、英二も正直な想いのまま笑った。

「うん、俺もね、おまえが初めてだよ?富士でも話したよな。で、話してもらったのも、初めてだ」
「そっか、初めて同士か?それで俺ね、こんなに泣いて、ずっと抱きついてるのもね、初めてだよ」

言いながら抱きつく腕がやわらかく力をいれてくる。
さっき国村が言っていた「このほうが温いだろ?」の通りに背中が温かい、おだやかな温もりに微笑んだ。

「抱きつくの、たのしい?」
「うん、こういうのってさ、いいな?」

素直に頷いて細い目が温かく笑んだ。
そしてすこし気恥ずかしげに率直な想いをテノールの声に乗せてくれた。

「俺さ、体のふれあいって遊びしかしてないだろ?
心を繋いだ相手とね、体でふれ合ったことって、俺は無いんだ。
だから俺はね、おまえ見るといつも、じゃれつくんだよ。宮田はさ、恋愛じゃないけど、俺にいちばん近いよ。
宮田とくっつくと安心するよ、温かいなって想える。無条件に許してもらえる、そういう安心があってさ、信じられるんだ、温かいよ?」

心を繋いだ相手。それは「周太」しかいなかった、
けれど14年間ずっと離ればなれになって、その間ずっと国村は誰とも心を繋げられなかった。
しずかな哀しみと孤独が背中にそっと伝わってくる、まわされた腕をポンと叩いて英二は笑いかけた。

「俺で良かったらさ、抱きついていいよ。いつもね、おまえのこと、俺は受けとめたいからさ。遠慮するなよ、」
「うん、…ありがとう、俺のこと、受けとめてくれて…ほんとにさ、ありがとう、」

自分をこんなふうに必要としてもらえる。そして自分もこの友人が大切でずっと一緒にいれたらいい。
おだやかな祈りと想いに微笑んで英二は言った。

「俺こそだよ?いつも俺のこと、受けとめてさ、山のこと教えてくれる。
山ヤになりたい俺の想いを理解して信じて、アンザイレンパートナーに選んでくれたのは国村だ。
そして周太のことも一緒に守れるのはね、おまえだけだよ。俺、おまえと会えて良かった、おまえと友達になれて幸せなんだ、」

山の経験すら浅い自分の素質と可能性を信じてくれる、そして対等な「山ヤ」だと認めてくれる。
そうやって国村が認めて一緒に訓練をしてくれるから、自分は認められて正式にクライマーとして任官することが出来る。
そうして掴んだ立場が周太を守ることに繋がる、そして自分の「山」にかける夢まで繋いでくれた。
なによりも、この「友人」の存在にどれだけ自分は励まされ笑わされて、楽しい時間を沢山もらってきただろう?
ほんとうにこの友人に会えて幸せだ、きれいに微笑んだ英二にテノールの声が真直ぐ告げてくれた。

「うん、…みやた、俺こそ、おまえに逢えてよかった…!」

肩にふれる涙が温かかった。
背中にふれる鼓動と体温が温かで、信じられることが嬉しかった。
こんなふうにずっと、自分と国村は寄りそって、援けあって最高峰にも登っていく。
そしてきっと、このふたりでなら「周太」の人生も救うことだって出来るだろう。

肩に背中にふれる涙と想いの温もり。
やさしい頼もしい熱を背負いながら、おだやかな夜に英二はきれいに微笑んで佇んだ。
曙光を見るまでずっと、ねむりのなかでも背負ったままで。



(to be continued)

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ

にほんブログ村 小説ブログへにほんブログ村

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第35話 予警act.5―side stor... | トップ | 第35話 曙光act.2―side stor... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

陽はまた昇るside story」カテゴリの最新記事