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書評「痴人の愛(谷崎潤一郎)」

2017-05-28 12:19:19 | 書評(文学)


谷崎潤一郎、巨匠だ。ノーベル文学賞候補だったほどの大作家だが、非道徳な作風のためか学校で習うこともなかったし、その流れでずっと読んだことがなかったが、一度おさえておきたいと思って52歳にもなって初めて読んだのがこの作品である。

読む前は直接的な性描写がたくさん出てくるのかと思っていたが、実際に読んでみるとそういったことは描かれていない。そこのところは想像にお任せします、といった感じである。若い娘を家にかくまって自分好みに育てる話だから、世間から隔絶された自分たちだけの甘美な世界に浸るのかと思いきや、それも違っていて、思い通りの世界には到底ならなくて、その女ナオミはこっそり外にたくさんの男を作って遊びまくるのである。主人公の河合譲治はそんなナオミの行動が気が気でならない。読んでいてもつらくなる。あるときナオミのあまりにひどすぎる男遊びが完全にばれたとき、譲治はナオミを家から追い出して、ひと時気持ちが晴れやかになるが、それもつかの間、すぐにナオミがいないことでいてもたってもいられなくなる。あたかも麻薬の禁断症状のようだ。そう、これは女という麻薬に対する依存症の物語だ。最後に、譲治はナオミと再会し、ナオミの男遊びを容認し完全にナオミにコントロールされた状態で二人の生活を再開するのである。ここまでくると、もう突き抜けてしまっている。

谷崎は29歳で結婚、30歳で長女をもうけ、37歳でこの小説を執筆した。谷崎と妻の妹との関係がこの小説の原型になっているという。文学のために人生をささげたのか、生き様が文学を生んだのか、どっちだろう。

LINDA RONSTADT - OOH BABY BABY



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