創元SF文庫読者投票で第1位を獲得し、とくに日本での評価が高いハードSFということで読んでみた。月面で発見された人間そっくりな生物の死体は5万年前に死んでいる。彼はいったい何者なのかというナゾ解きが、本書の骨子である。宇宙船、宇宙科学、物理学の知識などが出てくる本格的な宇宙もののサイエンス・フィクションであるが、読んでいくと、進化学、とくに進化人類学が重要なテーマであることがわかってくる。
主人公の原子物理学者ハントと、微妙な拮抗関係にあるプライドの高い進化生物学者ダンチェッカーは互いに反発したり協力したりしながらナゾを解きを進めていく。ダンチェッカーは正統的な進化生物学の理論ー収斂進化や隔離による形質の分化ーを援用しながら解答を導き出そうとする。さて、どちらが正解を導き出せるのか?
本書が執筆されたのは1977年のことである。現在(2023年)の進化人類学の知見に照らし合わせると、矛盾点が気にはなってしまうが、宇宙を舞台に人類の由来について斬りこんだ意欲的な作品だと思う。
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