子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

トクマルシューゴ Port Entropy Tour 2010 at 時計台ホール(6月3日19:00~20:20)

2010年06月05日 19時18分38秒 | Weblog
長く札幌に住んでいるが,俗に「日本3大ガッカリ」の一つと呼ばれる名所,札幌時計台でライブを観るのは初めての体験だった。特に2年前の安藤裕子のアコースティック・ライブを体験できなかったことは,今もって悔やまれるのだが,「時計台ありがとう,おかげで凄く調子が良いです!」と気持ち良さそうに語ったトクマルシューゴのライブは,その時の悔しさを補って余りある楽しい1時間余だった。

様々な楽器を使いながら,音の余韻が創り出す空間を聞かせるような作りが印象的な新作「Port Entropy」を引っさげてのツアーで,札幌は10箇所目とのこと(残りは1箇所,東京のみ)。
サポート・メンバーはパーカッション担当(♂)とアコーディオンや鉄琴などの担当(♀)の二人で,主役のトクマルシューゴはしっかりとした技術でギターとウクレレをホールの隅々に響かせた。
会場の大きさから考えてひょっとすると完全なアコースティック・ライブかとも思われたが,小雨の降る中,会場に着いてみると,小規模なPAが準備されており,高い天井のせいでデッドになりづらい残響を克服して,古い木造建築に寄り添うように組み上げられた増幅音は,実に心地良いものだった。

3人で演奏した曲は新しいアルバムからのものが殆どで,旧譜はトクマルシューゴ一人の弾き語りが多かった。
バンド編成といっても3人という少ない人数で,箱庭のように緻密に構成された曲をどんな風に展開するのか興味は募ったが,鍵はギターとパーカッションで作り出すシンプルかつ強いビートだった。
トクマルシューゴのギターは想像以上にハードな音色で,力強いピッキングは会場を埋めた「森ガール」や「草食系男子」の身体を,控えめかつしなやかに揺らせていた。

会場が「時計台」ということで,夜8時を報せるために鳴る鐘の音に合わせて,「あの鐘を鳴らすのはあなた」のサビ部分をパーカッション担当の「岸田さん」が歌い上げていた。会場の反応を見る限りは,和田アキ子の原曲を知らなかった人も多かったようだが,会場から上がった「フリッパーズ・ギターを!」というリクエストに対して「練習してきます」と答えたやりとりも含めて,プロとしてのショーマンシップと素朴さが入り交じった空気のそこかしこに,トクマルシューゴの音楽に向かう真摯な姿勢と人柄を感じ取った人は多かったはずだ。

終盤でバグルスの「ラジオスターの悲劇」をカバーしていたが,それを聴いていて,音楽のタイプは異なるが,ネオアコの旗手として80年代を席巻したアズテック・カメラ=ロディ・フレームがヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」を楽しそうにカバーしていたシルエットが何故か重なった。「Rum Hee」で鮮やかに刻まれたストロークこそ,「デジタル世代のブライアン・ウィルソン」というイメージを,軽やかに飛び越していく跳躍台なのかもしれない。期待大。


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