いろんな面で公開前から騒がれている作品だ。配信のみで公開されたアメリカにおいて,出てくる魔女の外見,すなわち手が3本指で,足が1本指という造形に対して,四肢欠損のある人への配慮を欠いている,という批判が殺到し,主演のアン・ハサウェイがインスタグラムで謝罪をした。更に原作のロアルド・ダール(1990年逝去)が生前の1983年にユダヤ人に対して行った差別的な発言を,遺族が謝罪していたことが判明。ユダヤ人の抗議団体はその謝罪に対して「遺族の謝罪に30年かかったのは残念だが,ダール氏の人種差別の発言を認めたことは良い兆候だ」という声明を出したが,遺族は主にダールの作品の映像化で今も年に18億円弱の利益を享受していることもあり,本作品への言及が様々見られる中での公開は,作品にとっては逆風だったはず。興行においては安定のゼメキス印も,今回ばかりは厳しいだろうと思ったのだが,日本の公開週のランキングは5位。黒沢清監督も絶賛の手腕は,やはり侮れない。
魔女(アン・ハサウェイ)によってネズミにされてしまった主人公が,育ててくれた祖母(オクタヴィア・スペンサー)や同様にネズミになってしまった仲間と共に,魔女に立ち向かう,といういかにもダールらしい児童文学の映画化だ。
ダールの自伝「少年」の中に,小学生の時,近所の駄菓子屋の主人であるいじわるな老婆を懲らしめようと,死んだネズミを使ったいたずらを仕掛けるのだが,逆に老婆に犯人と名指され,校長先生から鞭打たれてしまうエピソードが出てくる。駄菓子の瓶の中に腐ったネズミの死体を入れるという発想自体が,なかなかに突き抜けているのだが,その尖り方は脚本に加わっているギジェルモ・デル=トロの結構グロいテイストにも近いところがあり,本作も子供向けの作品でありながら,大人も楽しめることは請け合いだ。
今となっては出演を後悔している様子のハサウェイだが,口が裂けた魔女を演じる様子には,ハリウッドを代表する女優になった貫禄と余裕が感じられる。
本作の主人公はスピリチュアル方面の権威らしい祖母の奮闘にも拘わらず,人間に戻ることは叶わずにエンディングを迎える。ダールの生前の発言は到底許されるものではないが,ネズミの姿のままで成長し,人間の子供たちに魔女への対処法を教える先生となるという変種のハッピーエンドは,子供の方がより芯で捉えるかもしれない。ゼメキスとデル=トロ印の「児童映画」。うーん,なんとも贅沢。
★★★☆
(★★★★★が最高)
魔女(アン・ハサウェイ)によってネズミにされてしまった主人公が,育ててくれた祖母(オクタヴィア・スペンサー)や同様にネズミになってしまった仲間と共に,魔女に立ち向かう,といういかにもダールらしい児童文学の映画化だ。
ダールの自伝「少年」の中に,小学生の時,近所の駄菓子屋の主人であるいじわるな老婆を懲らしめようと,死んだネズミを使ったいたずらを仕掛けるのだが,逆に老婆に犯人と名指され,校長先生から鞭打たれてしまうエピソードが出てくる。駄菓子の瓶の中に腐ったネズミの死体を入れるという発想自体が,なかなかに突き抜けているのだが,その尖り方は脚本に加わっているギジェルモ・デル=トロの結構グロいテイストにも近いところがあり,本作も子供向けの作品でありながら,大人も楽しめることは請け合いだ。
今となっては出演を後悔している様子のハサウェイだが,口が裂けた魔女を演じる様子には,ハリウッドを代表する女優になった貫禄と余裕が感じられる。
本作の主人公はスピリチュアル方面の権威らしい祖母の奮闘にも拘わらず,人間に戻ることは叶わずにエンディングを迎える。ダールの生前の発言は到底許されるものではないが,ネズミの姿のままで成長し,人間の子供たちに魔女への対処法を教える先生となるという変種のハッピーエンドは,子供の方がより芯で捉えるかもしれない。ゼメキスとデル=トロ印の「児童映画」。うーん,なんとも贅沢。
★★★☆
(★★★★★が最高)