子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2010年TVドラマ春シーズンレビューNO.1:「Mother」「チーム・バチスタ2」

2010年04月16日 22時03分36秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
渡り鳥が専門だった子供嫌いの研究者が,虐待を受けている7歳の女児を「誘拐」して逃避行に出る。坂元祐二がお茶の間には随分と重いと思われるストーリーに挑んだ日本テレビの新作は,北海道ロケの効果もあり,見応え充分の滑り出しとなった。

母親とその恋人らしい男が子供に暴力を振るう場面を直接見せずに,「虐待」をこれだけ悲惨に描いて見せた演出力と脚本にまず敬意を表したい。台詞は勿論だが,しっかりと「絵」で見せる,という姿勢が随所に感じられるのが頼もしい。
暗く淀んだ室内シーンと,肌寒い海岸を中心にしたロケーションとの対比も鮮やかで,背景に流れる音楽も一般的なドラマで使われる量から見れば,信じられないほど少ない分,実に効果的だ。

松雪泰子の抑制的な演技も尾野真千子の異様な暗さも,共にTVのフレームを越えているが,ひときわ輝いているのは子役の芦田愛菜の「あどけなさ」が持つパワーだ。さすがに台詞回しはおぼつかないが,それを補って余りある「無垢な魂」を形にしたような表情は,子役ブームの真打ち登場,という感じだ。
この暗さを保持したまま走り続けられるのかどうか,予断は許さないが,パワーに溢れた「異型ドラマ」として,注目していきたい。

一方,「人気小説のドラマ化」で「医療もの」かつ「続編」という,何処から見ても定型的で安定感に溢れた新作が,フジの「チーム・バチスタ2 ゼネラル・ルージュの凱旋」だ。

原作は未読だが,第2回目まで観た限りでは,一つのテーマ(謎)がクール全体を引っ張っていくという前作のような構成ではなく,医師と医療関係企業との癒着を縦糸としながら,毎回個別のエピソ-ドを積み重ねていくという作りのように見える。
そういった作りは前シーズンの人気作「コード・ブルー2nd」と同様だが,同作に出てきたヘリコプターの模型を見せてあえて同作を意識させようとしているのかどうかは分からないが,ちょっと姑息な印象も受ける。

前作の主要キャストが続投しており,仲村トオルの軽さはキレを増しているようで,「お約束の(≒無難な)楽しさ」は味わえそうだ。映画版では堺雅人が演じた敵役は,西島秀俊が演じている。映画版も未見なので比較は出来ないが,チュッパ・チャプスの似合い具合は,堺に軍配が上がりそうだ。

だが新たに加わった加藤あいをはじめとするキャストのうち,TKOの木下隆行の演技は悲惨だ。「ディア・ドクター」の鶴瓶のそっくりさんという意味で笑いを取ろうとしてるのならば別だが,役者の素養が欠片もないタレントを無理矢理はめ込んでみても,ドラマを壊す方向にしか作用しないのは素人目にも明らかだ。
上戸彩の「絶対零度」に出ている宮迫博之と同様,演出家の判断力は一体どうなっているのかと疑うばかりだが,このトレンドはそう簡単には変わらないのだろうなとため息をつく遅い春。


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